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6-8 どこからどう見ても、それはイケメンでした(おまけ絵あり

「おめぇ、つぇぇ……何者だよ……?」

「エレクトラム・ベルと申します。お仕事でたまたまここに居合わせましてね、胸くそ悪いものを見せられた結果、こうなってしまったようです」


 レイピアから血を払い鞘に戻した。

 しょせんは悪党です、心など痛むはずもない。

 そこに黒髪のリセリが飛び込んできました。盲目の少女はジョグのとても大きな胸に飛びついていました。


「ありがとうっ、ありがとうジョグさん……私っ、助けに来てくれるって信じてたよ!」

「フフフ……好かれているようですね、ジョグ」


 何だか絵本で見たことがあるような光景です。

 美女と野獣。若い人間の蒼化病患者と、容姿に恵まれないワイルドオーク。悪気はないものの、つい笑ってしまいます。


「う……ま、まあな。何でか、おいらなんかを、気に入ってくれてるみてぇでよ……」

「エレクトラムさんっ、ほらっ、ジョグさんはカッコイイ人でしょ! みんなが憧れる、イケメンの魔族なの!」


 視力を失った者にとって、容姿はこだわるべき要素ではない。

 心のやさしさや、行動の結果、憧れることが出来るかどうかがイケメンを決めるのでしょうか。

 

「ええ、確かにいい男です。こんなイケメン、他にどこにもいませんよ」

「お、おい、エレクトラム……そうやっておめぇまで、ぅぅ……」


 でかい図体して照れ屋さんですか。

 しかも蒼化病の彼らに同情して肩入れするような困ったお人、ああ、これはイケメンですね。


「ジョグさんはカッコイイ!」

「ジョグさんは男らしくて、やさしいんだ!」

「ご飯も持ってきてくれるんだよ!」


 しかし困りました。同情するまい、肩入れするまいと思っていたのにこれは……。

 もしかしたらこの子らにわたしを接触させることに、夜逃げ屋タルト狙いも含まれていたのでしょうか……。


 こんなもの見せられたら、彼らの無事を願いたくなってしまう。

 ジョグもこうやって人間に肩入れすれば、殺戮派からの反感を買う。

 このタイプの魔族は、最後は殺されて死ぬのをわたしは知っているのです。


 ならば仕方ない……。


「リセリ、すみませんがこちらに来て下さい。ジョグはその間、子供の相手をお願いします」

「お、おう……いいけどよぉ、なんだぁ~?」


 リセリを連れてその場を離れた。

 わたしの気が変わる前にすぐ伝えたかったからです。


「あの、エレクトラムさん、急に何ですか……お金なら、ないよ……?」

「そんなもの要りません。それより提案があります、ここよりもっと安全な場所に移り住みたくはありませんか?」


「えっ……」


 蒼化病は肌の色が変わるだけ、何の問題もない。

 うちの里に招いて住民になってもらっても何も問題ないのです。


「ただしそこで暮らすということは、面会に来てくれる者たちと別れるということことです。手紙のやり取りも今までより、少しだけ難しくなります」

「そんな場所が、あるの……? そこに行ったら、私たち、ジョグさんとずっと一緒に、居られる……?」


 あのイケメンは身体がでかい割におとなしいので、なかなか使いやすそうです。

 わたしはうなずき、しかし問題があると厳しい目を向けた。


「しかし、下手に全員にこの話をしてしまうと、このやすらぎの里を真っ二つにしてしまうことになる。面会に来てくれる家族を捨てられない者を、ここに取り残すことになってしまうでしょう」

「面会はまれだけど、それはあるかもしれない。残るって言われたら、困るね……」


「わたしはまたここに来ますので、その時に返事を聞かせて下さい。出来れば満場一致で、この危険な里から、わたしの里に、あなたたちをご招待したい。娘と同世代の子供が増えれば、わたしも安心できますから」


 話すべきことはそれだけです。

 わたしはリセリの背中を押してジョグの元に返しました。

 わたしが引き離してしまったので、少し乱暴にリセリの背中を押して、愛しのイケメンにまた抱きつかせてやったんですよ。


「ジョグ、あなたはここで子供らを守りなさい。詳しい話はその子から聞くといいでしょう。ジョグ……あなたのような者をわたしは何度も見ました。そのほぼ全てが殺されました、同族にね」

「う、恨み、やっぱ買ってるかな、おいら……。だけど、だって、こんな小さな子供、ほっておけねぇよ……」


 わたしらしくもないお節介です。

 けれどこれでタルトがわたしたちに全面的な協力をしてくれる可能外も高い。そう思うことにして己をごまかそう。


「では皆さん、わたしは帰ります、また何か持ってきてあげますので、ネコヒト・エレクトラムの来訪をどうかまたお楽しみに。……ジョグさんは一緒に暮らす覚悟を、ようやく付けてくれたそうですよ」

「お、おいっ、まだおらぁ、うんとは言っちゃいねぇよぉっ?!」


 往生際が悪いワイルドオークを、蒼化病の子供たちが取り囲み、大喜びの歓声を上げた。

 大したモテようです。容姿がイノシシに近しくとも、彼はやすらぎの里の英雄で、イケメンでした。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



 一方その頃パティアは――


「ねこたん、あしたは、かえってくるよなー?」

「あ……? ああ、多分な……」


「あれー、ねるなー、バニーたん。パティアがー、ねれないのにー、ねちゃ、だめだぞー?」


 全く寝ない子でバーニィは困り果てていたそうです。

 あの晩はもう眠くて、いっぱいいっぱいだったと弁明していました。


「よしよし、教官ならきっと、明日戻ってきてくれる……。教官は、パティアのことを本当に、可愛がっているからな……。昔は無気力系鬼教官だったのに……」


 後から聞いた情報を要約すると、ホーリックスの方はまだ起きていられるようでした。

 だがパティアは、バーニィに先に寝て欲しくなかったのでしょう。


「ありゃ意外とお人好しだからな、面倒な仕事押し付けられてたりしてな」

「そうか、ねこたん、いいやつだからなー……。あ、また、おはなししてくれ、バニーたん」


「眠いっつってんだろ……」

「頼む、してやってくれバニー……。オレがすると、血なまぐさい話ばかりになる……」


 彼は言った、ホーリックスちゃんの頼みじゃなかったらそこで寝てたわ。

 騎士にとってホーリックスは生ける死神、それがかえって魅力として映ってしまうのでしょうか。


「わかった……、限界だからよ、途中で寝るかもしれねぇから、先に謝っとくぜ。そうだな、むかーしむかし、俺がまだアホで愚かな10代の若造だった頃……タルトってクソガキがいてなぁ~……」


 バーニィとあの姉御肌のタルトは子供時代からの腐れ縁、色々と納得の人間関係でした。


 その頃からきっと、エッチなお兄さんだったんでしょうね。


本日12月24日

皆様応援ありがとうごじざいます。絵描きのしーさんがクリスマス絵を描いてくれました。


メリークリスマス! これからも応援お願いします!

挿絵(By みてみん)


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