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39-7 真夏日だ。ガキどもを連れて水浴びに行くぞ、うへへ…… - 熱い…… -

・うさぎさん


 その日は真夏日になった。

 暑さに弱いネコヒト族が畑から逃げ出し、涼しい森や城1階に逃げ込むほどにクソ暑い日になった。


 そこで昼食を終えた後、俺はガキどもに仕事をサボって湖に行こうと誘った。

 こういう日は、朝夕しかネコヒトの民が動けないからな。普通は畑仕事をしなきゃならない。


 だがな、暑い。こんな日は人間様だって働いてらんねぇ。

 だから夕方まで遊ぼうぜと、一人一人誘って回ったんだ。


「ネコヒトもくるか?」

「ご冗談を。わたしは森で涼んできます。パティアを任せましたよ」


「おう、無茶苦茶やらかさんよう見張っとくわ」


 元気な最長老様もいたもんだ。

 ネコヒトは涼むとそう言いながらも、いつもの狩り道具一式を持って出ていった。


ねこたん(・・・・)に振られちまったからよ、二人も付き合ってくれ」

「なぜ、オレに声をかける……?」

「そ、そうですよ……。なんで私たちなんですか……?」


 それからリックちゃんとマドリに声をかけた。

 というかネコヒトはブラフよ。へへへ……もちろん本命はこっちだ。


「リックちゃん水浴び好きだろ? だったら適任じゃねーか。マドリちゃんはガキどもの世話が上手いからな。二人ともたまにはゆっくりしようぜ」

「でもそれだったら、ジョグさんの方が向いているのでは……」


「あーダメだダメだ。ジョグとリセリには採集の仕事が入ってる。ということでよ、昼はこっちに付き合ってもらうぜ」

「つくづく強引なやつだ……。わかった、その気まぐれに付き合おう。確かに湖水が、気持ちよさそうな、いい陽気だからな……」

「リックさんが行くなら、私も行きます」


 うしっ。そういうことになったんで、俺たちははしゃぎまくるガキどもを引率して、東の湖に出かけていった。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



 森の湖は昨日よりも輝いて見えた。

 真夏日の強い日差しが水面へと降り注いで、それが白く反射して、俺たちのいる西側の岸に集まっていた。


 森の中だというのに辺りは妙に明るい。

 それになんつーか、詩的な表現は俺には似合わないかもしれねぇけどよ。岸辺の木々が強い日光を浴びて、すげぇ喜んでるように見えた。


 やっぱりガキどもを水浴びに誘ってよかったと、心の底で俺は小さな感動に浸った。


「て、てめぇっ、卑怯だぞっ、うぶぁっ!? ゴボボボボボ……!?」


 で、俺は小さな釣り小屋に陣取って、板張りの釣り場からガキどもの様子を監視する役を受け持った。

 ジアは泳ぎが上手いな。潜水したガールフレンドに、水中から足を引っ張られるカールがいる。


 ……あれは、まあ、放置でもいいだろう。

 ワンコがじゃれて甘噛みし合ってるようなもんだ。


「ぷはっ♪ ほらほらカールッ、悔しかったらやり返してみなよっ!」

「ゲホッゲホッ……てめぇジアッ、殺す気かよっ!」


 しかし元気なもんだな……。

 俺も体力に自信こそあるが、おっさん身体じゃアレには付き合えん。


 そんな二人をどうやら新顔のヌルが遠巻きに見守っていたが、すぐに歳の近い遊び相手が見つかったようだ。

 よかった。笑っている。しかし、今日はあの大山猫を連れていないんだな……。


 いたらいたで、パティ公がやかましいからいいんだがな。

 いやもしかしたら、あの大山猫はネコヒトの野郎がやたら気に入っているみたいだからな、あっちの後を追ったのかもしれん。


「よーしっ、あそこまで、たんけんにいくぞー!」

「待てパティアッ! 奥に行くのは、ダメだ。こらっ!」


「ぐぇぇ……。うしおねーたんに、つかまった……でへへぇ♪」

「頼むから、バニーみたいな笑い方を、するな……」


 そんな妄想を広げながらパティ公の姿を探すと、こりゃちょうどリックに捕まったところだ。

 リックちゃんは湖に入って、ガキどもの面倒を直接見てくれていた。


 布で胸と腰を縛っただけの、なかなか刺激的な格好だ。ぐへへ……。


「マドリちゃんは入らないのか?」


 マドリちゃんは服を着たまま、泳ごうとはしていない。

 俺と一緒に釣り小屋からの監視に付き合うだけで、どこか羨ましそうに遠いみんなを見やっていた。


「む、無理に決まってるじゃないですかっ……」

「大丈夫だって。誰も気づかないって」


「そんなはず、あるわけないないですよっ……。バレちゃいます……っ」

「マドリちゃんも難儀だなぁ……。なら今度二人だけで泳ぐか? どうせ男同士だしよ」


 なんかそれはそれで問題があるような気もするが、ないような気もする。いや気にしたら負けだ。

 けどよ、こんなにいい天気だってのに、陽気を楽しまないのは大損じゃねぇか。


 やっぱ、どうにかしてやりてぇな……。


「も、もっと無理です……。心臓が、止まっちゃいますよ……っ」

「そういうもんか? だけどこの暑さだぜ、もう少し脱いだらいいじゃねぇか」


 性別を偽っている以上、脱げない事情はわかる。

 だがどっからどう見ても、厚着をした貴族のご令嬢でこの夏を通すのは無理がある。

 着替えのワンピースとか、クークルスちゃんに作るように言ってみるか。


「でも、薄着になったら、それだけバレてしまいやすく……」

「まあそうだろうな。じゃあこっちこい、靴でも脱いで、足だけでも浸しとけ」


「ぁ……それ、気持ちよさそう……。へ、変じゃないですよね……?」

「おう、むしろ色気とか、趣があるかもわからんな」


「……い、色気、ですか? そ、そう言われると、なんか抵抗が――でも、涼しそう……」


 ネコヒトの話によると、パナギウム側の問題は一応小康状態になったが、魔界側はそうとも言い切れねぇ。

 正統派の魔将アガレスが結界の外でドンパチやってる今、マドリちゃんがここにいると、向こうにバレてしまうのはかなりまずい。この里の存亡にすら関わる。


 ただ、暑いものは暑い。

 マドリちゃんはついに暑さに負けて、足首から下を湖水に漬ける。すると、おっさんに嬉しい、ちょっと色っぽいため息を吐いてくれた。


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