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37-2 ダブルスパイの優雅なる一日

・( ΦωΦ )


 自分で言うのもニャンですがニャ、ミャーの優雅なる一日は昼前に始まるニャ。

 ミャーは大先輩ほど睡眠を極めてニャイですから、伐採と建築の騒がしい物音にどうしても目が覚めるニャ。


 繊細なミャーはもちろん一人部屋ニャ。

 そこを抜け出して、まずは一風呂浴びるニャ。外では朝からみんな働いてるけどニャ、そこは適材適所ニャ。ミャーはミャーのやり方でがんばってるニャ。


「ミャー、ゾエさんではないですかニャ。奇遇……ってほどでもないですニャ」

「やあ……君であるか……。ふぅ……」


 寝起きのゾエはいつもほうけてるニャ。

 最近、みんなが寝静まった後に仕事部屋で何かやってるらしいニャ。


「ところでゾエさん、例の葉っぱ……少しだけ分けてくれませんかニャー? ……あの、聞いてますかニャ? 幸せになる葉っぱ下さいニャー?」

「はぁ……。ふぅ……無理だ。誰かに……横流ししたら……ふぁぁぁ……。あのスケベな仕切り屋がな、うるさいのだよ……」


「確かにウサギさんはドスケベですニャ。普通にしてたら、ミャーも大先輩の次に尊敬したはずなのに、アレはとんだドスケベオヤジですニャ」

「ぁぁ……そこがしゃくなのだよ……。なぜ、この我が輩を誘惑しない……」


 ゾエは最近美人になったニャ。

 というよりもニャ、皮脂臭い女が風呂にはまって汚れが取れていったニャ。

 里に来たときはミャーには酷い臭いで、てっきり野生動物が来たかと思ったニャ。


「それは簡単ですニャ。ああいうセクハラ男は相手をよく見てるニャ。めんどくさい女には近付かない、これは鉄則ですニャ。それより葉っぱ……」

「ダメだと言っておろう、無理だ。教会に目を付けられた以上、我が輩の安住の地はここ以外にないのであるよ」


「タダとは言っていませんニャ。タダで通ったらいいなと、下心はあったけどニャ。近々酒が入るニャ、みんなには秘密にして、一緒に一杯どうかニャー?」

「魔界の酒か!? よし乗った!」


 裸の女が湯船から飛び出して、ミャーと握手してたニャ……。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



 今日は取引もまとまって良い日ニャ。

 まったり入浴をすませたミャーは昼食を早食いしたニャ。


「おい、クレイの野郎はどこだ? は、もう出て行っただと!? クソあの野郎、仕事頼もうとするとすぐこれだ……。すまんハンス、クレイは弓が上手いから、アンタにぴったりかと思ったんだがなぁ……」


 仕事にかり出される前に食堂から姿を消してやったニャ。

 働くのは嫌いニャ。けど狩りは嫌いじゃないニャ。


「俺は一人でも大丈夫だ。むしろそれが日常だったからな……」

「そうは言うがよ、半年前くらいにはオウルベアも出たんだぜ。そんなの単独で相手したくねぇだろ、お互い」


 かったるいけどニャ、あのボウガン使いは強いからコネを作っておいて損はないと思うニャ。


「ならカールを貸してくれ」

「おう、それならジアもセットだな。なんたって未来の嫁さんだ」


「助かる。……ガキの頃の俺にも、あんなガールフレンドが欲しかったよ」

「はははっ、そりゃみんな思ってることだぜ。カールは恵まれてるよな、まったくよぉ~」


 面白いので食堂の外から盗み聞きしてたけど、気づかれたくはないニャ。

 今日は誰にも気づかれずに、行かなきゃいけないところがあったからニャ。


 古城の元崩落部から抜けて、ミャーは大地の傷痕を目指したニャ。

 ちなみに元というのは、あの鈍い男ダンが石を積んで補修したからニャ、今は両開きの大きな扉がくっついてるニャ。


 ミャーはそこから古城南西部の洞窟を下って、断崖絶壁の底にある小さな花園にやってきたニャ。

 そこでミャーは静かに昼寝して待ったニャ。


 広がる紫雲の向こう側で雷鳴が轟こうと、まぶしく光ろうと、平然と眠ってやったニャ。


「クレイ。おい、クレイ、起きろ」

「ちゃんと、起きてますニャ……」


「目を閉じながら言うな! 手紙だ、受け取れ!」


 しばらく眠ると、やがてそこに翼を持ったカラスに似た鳥魔族がやってきたニャ。

 ミャーはそのカラス野郎に酒と手紙を受け取り、代わりに紙片を渡したニャ。


 いつもならやり取りはそこで終わりなんだけどニャ、カラス野郎は帰らなかったニャ。


「まだなんかありますかニャ?」

「サレ様がそちらの判断に難色を示していた」


「そりゃそうだニャ。ハルシオン姫を旗印にすれば、従う者ももっと多かっただろうニャ」

「なら」


「無理だニャ。この里の最長老様が、姫を渡さないと言ったからには、渡せないニャ」

「そうは言うがクレイ、今はそれどころじゃない。説得してくれ」


 ミャーは手紙に目を落として速読したニャ。

 こういう商売だから、さっと頭に入れて暗記できないと始まらないニャ。


「どこもかしこも大変なことになってるニャァ……」

「状況が変わったのだ、クレイ」


 やかましいニャ。手紙にはこうあったニャ。


 混沌を極める世界情勢の中、正統派のアガレスが動いた。

 穏健派との協定を破って、防備の薄くなったパナギウム国境への進軍を始めた。

 魔界の森と、南部ギガスラインによる広大な戦場で300年ぶりの大衝突が始まる。


「少しこれが早かったら、タルトさん帰れなくなってたかもニャー。その方が、ウサギさんには嬉しい結果だったかもしれないニャ~……」

「クレイ、サレ様からの伝言を伝えるぞ」


「手紙と一緒に伝言ですかニャ? なんか怪しいニャ~」

「ハルシオン姫を差し出せないというならば、代わりに別の者を差し出してもらおう。……だそうだ」


 まさか――2000万ガルド泥棒のウサギさんを、かくまっているのがバレたのかにゃ……?

 からかうの楽しいから渡したくないニャー……。


「パナギウム騎士団とサレ様が会見した。そこで決まったのだ。そこまでしてハルシオン姫を守りたいならば、エレクトラム・ベルは、その類い希な潜伏能力を用いて――悪王サラサールを暗殺(・・)せよ」

「ニャ。なら成功報酬が欲しいニャ。もし大先輩が任務に成功したら、ネコヒトの民をこちらにいただくニャ。この条件なら、きっと大先輩を動かせるニャ」


 ネコヒトは仲間を大切にする種族ニャ。

 ミャーも大先輩もひねくれてるけど、そこは変わらないニャ。


 大きな戦争が起きるたびに、弱い種族ネコヒトは数を減らしてきたニャ。

 それとネコタンランドをさらにネコヒトで埋め尽くせば、パティアが喜ぶに違いなかったニャ。


 あの子の喜ぶ姿を見ると、ミャーはなんだか……。

 これが祖先たちが慕った魔王のカリスマに近いのかニャと、もう……妹ともどもあの子にメロメロになるニャ……♪


 暗殺がんばってニャ、大先輩。


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