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36-4 パティアのための勉強会 - ひきにく -

「だってね、まどりんね、かわいいからね、ほわぁ……まどりん、かわいい……。ってね、おもってたらね、おはなしおわる」

「あらあら、パティアちゃんったら、本能で生きてますね~♪」

「あ、あのね……こっちの小さい石がね、10個になったら――」


「あ! それおぼえてるぞー! 10こになったら、おっきいいし、1こ!」

「正解♪ だからー、こうしたらー、わかるんじゃないかしらー?」


 パティアの興味をマドリではなく、石ころ向けることに成功すると、シスター・クークルスが石を並べてゆきました。

 13+28の形に石を整えると、それを一つにしたのです。


「わかった! あのねクー、こたえはー、30とね、11!」

「そうだよっ! じゃあ、それを会わせたら?」


「41だ! おぉぉぉーっ、クーと、リセリ、あたまいいなー! パティアにもいまの、わかったぞー」


 こうしてパティアは二桁の足し引きを覚えてくれました。

 明日には忘れていそうな不安は残りますがね……。


「おわったか? じゃ、パティアはもりにいく! リセリいっしょにいこー、おいしい、べりーあるぞ。ねこたんには、ひみつで、あまいみつ、なめにいこー?」


 いいえ、わたしが頼んだ授業は算数だけではありません。

 あなたのための、特別授業を用意してもらいました。


「待って、もう一つあるの。言葉の勉強もしてからね?」

「ことばかー? そんなの、よゆーだー」


 嘘おっしゃいなさい。これはあなたの弱点を克服するための勉強です。

 五文字以上の言葉を、正確に覚える授業を彼女たちに依頼しました。


 こんな特別授業が必要なのは、うちのパティアだけです。

 よってこうでもしなければ、特訓する機会がありませんでした。


「ではー、私が言った通りにー、言って下さいねー?」

「うん、いいよー。でも、もりがよんでるからな、はやくしてね?」


 即クリアして森に行くつもりのようです。ですが甘いですよパティア。


「バイオリン♪」

「バオリン!」


「パナギウム♪」

「パ、パナ……ム!」


「カスケード・ヒル♪」

「かすけど、ひる?」


「アルストロメリアさん♪」

「あるたん!」

「略したら意味ないよ!? アルストロメリア、だよっ」


「あ、あるすと……ひる?」

「あら~、混ざっちゃいましたね~♪ じゃあ最後ですよー、ハンバーグ♪」


「ハンバーグ!! やったーっ、いえたー!」


 ハンバーグは綺麗に、元気に、ハッキリと言えたそうです。

 リックの手料理を想像して、よだれをすすっていたとクークルスがニコニコと、後でわたしに教えて下さいました。


「じゃあ、追加問題です。ミネストローネ♪」

「み……みねすとろ、ね! みねすと、ろーね!」


「はい、コーンポタージュ♪」

「コーンポタージュ!」


「最後はー、パティアちゃんが大好きなー、メープルシロップ♪」

「めぷーるしろっぷ!!」


 例外はありましたが、好きな食べ物の物覚えがやたらとよかったそうですよ。

 メープルシロップだけは、何度教えても、めぷーるしろっぷと言い張っていたそうですが……。


「ハンバーグ……ハンバーグたべたいな……。ね、おべんきょ、おわり? あのねリセリー、ちょっと、うしおねーたんところ、いっしょにいこ?」


 まあがんばった方だと思いましょう。

 あまり根詰めても、勉強に苦手意識を持ってしまうだけだと、シスター・クークルスが言っておりました。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



「……はい?」

「パティアちゃんに、ハンバーグを食べさせてあげて下さい♪」


 その日の夕方、狩りから城に戻ってくると、シスター・クークルスがわたしの前にやってきました。

 てっきりパティアの特訓の成果を聞かせてもらえると思ったのですが、一言目がハンバーグでした。


「何の話ですか……? 勉強を教えて欲しいとわたしは頼んだはずなのですが」

「はい、だからご褒美にハンバーグです♪ 大きなイノシシさんお願いしますね♪ パティアちゃん、ハンバーグは、間違えないでちゃんと言えたんですよー?」


「だからハンバーグを食べさせろと……?」

「はい~♪ そしたらー、あの子のことだから嬉しくなって、他のことも忘れないんじゃないでしょうか~♪」


 なんと食い意地に素直な教育方針でしょうか。

 ハンバーグと言えたからハンバーグを食べさせてもらえる9歳児など、世界広しと言えどもパティアだけです。


「それはまあ、一理ありますかね……。わかりました、明日はハンバーグにしましょう」


 そういったわけでして、明日の晩はハンバーグに決まったのでした。

 当然調理に手間こそかかりましたが、里の皆が笑顔になったのは、もはやわざわざ言うまでもありません。


「教官。ハンバーグ、また作りたい。狩り、がんばってくれ」

「あなたまでパティアを甘やかすのですね。わかりました、どうかこの老人にお任せください」


 ハンバーグ、全員分作るにはなかなか大変な料理ですが、里の鉄板メニューになりそうです。


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