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36-2 錬金術師ゾエの奇跡のマジックショゥ!


 朝の狩りを終えて、昼寝から目覚めるとわたしはゾエの仕事部屋を訪れました。

 奇跡の錬金術を見せてもらえると聞いて、主に子供たちを中心にたくさんの人々がそこに集まっていました。


「グフッフフフフッ……次はっ、怖いくらい効くとご近所で評判の! 鎮痛剤の調合をお見せしよう! 我が輩の天才っぷりを、もっと見届けて尊敬するがよいぞ!?」


 こういう性格ですから、本人も邪魔がるどころか歓喜しておりましたよ。

 その後も、解熱剤、鎮痛剤、胃薬、整腸剤、それに特別な傷薬[ポーション]の調合までゾエは披露してくれました。


 ゾエの魔法のような手並みが次々と薬を生み出してゆき、あれだけあった素材を消してゆきます。

 この様子では、数日中にかき集めた薬草が消えてしまいそうです。


「おや怪我をしているなっそこなシスタァ!」

「は、はいっ、わ、私のことですか……?」


「うむうむ、ちょうど良い実験台よ、ちょっと見せたまえ」

「は、はい……。そのぉ、採集中に草で切ってしまいまして……うふふ、私ドジなんですよ~♪」


 見ればクークルスの手が言葉を証明しておりました。

 右手だけでも浅い切り傷が6つもあります。


「さあ諸君! お立ち会い! ここにありましたるノホホンとした平和ボケしたシスターのお手手を、魔法の薬、ポゥシィヨォンッで! 瞬く間に治癒させてみせましょう! さあ、さあ、あさあさあさあさあ、はい、チョロッとなっ!」


 さしもの私も驚きました。

 その魔法の薬がクークルスの手にたらされて、ゾエが患部のそれぞれに塗りたくると、本当に傷が消えてしまったのです。


「あら、すごい」

「クーのきず、きえたー! ぞえりん、すっごぉーーいっ!!」

「は、はうわぁぁっっ?! な、ななな、なんだねっこの効果はぁぁぁっっ!?」


 ところがゾエ本人が一番驚いておりました。

 元から大げさな人ですから、本気で驚いたときはもうやかましくて殴りたくなるほどです。


「薬の作成者であるあなたが、なぜそこまで驚くのです……」

「なぜも何もない! 見たまえっ、この我が輩のお手手を!」


 ゾエの手を見ると綺麗なものでした。

 しかし妙ですね。異端尋問官にボロボロにされたとは思えません。


「わからぬかねっ、こういうことだよ諸君!!」


 ゾエは腕を針で串刺しにされました。

 その無数に残る患部へと、彼女が薬をたらす。すると、軽傷とは言い難い深く突き刺された傷まで、またたく間に治癒するのでした。


「ふ、ふはっ、フハハハッ……我が輩はやはり、天才かっ!! 因果関係はよくわからんが、すさまじい効果のポゥショーンッではないか!!」

「ぞえりんすごーい! てんさいだぁー、そのおくすり、ねこたんにー、もっとつくってー?」

「あら良い考え♪」

「とーちゃんにも欲しいな! そしたら心配しなくて済むしなー」

「やっぱカールも心配だったんだ。でもホントこれ凄い……」


「任せたまえ諸君ッ!」


 大絶賛にゾエは有頂天です。里にとけ込めるか心配しておりましたが、これならばもう大丈夫でしょう。

 後はウザいマシンガントークさえ、自重して下されば……。


「しかしなぜか、あるべき効果の、3倍以上の回復量になっているのだ……。原因かね? わかったら苦労などせぬわっ!」

「あなたが作った薬でしょう」


 想定以上の薬効に、彼女はニヤニヤと上機嫌です。

 何か別の、とんでもない物を作ろうとはしていないでしょうね、この方……。


「きっとー、それはですねー♪ しろぴよちゃんの杖とー、しろぴよちゃん釜のー、力ですよー♪」

「そうなのか! やっぱりなーっ、パティアもちょっとだけ、そうおもった。しろぴよ、しゅごいなぁー!」


 ゾエの方はそんな理屈になっていない理屈に納得いきません。

 魔界の森の特殊な環境で自生した材料を使ったから、というのも多少はありそうです。


「まあいいではないですか。よくわからないですが、薬効3倍だそうですし、結果を喜びましょう」

「何を言っているのだね、原因と結果を結びつけておかなければ、再現できなくなるということであるぞエレクトラムくん!」


「ならあなたががんばって検証されて下さい」

「もちろんである! 研究者としてビンビンジンジンうずいてしまう案件だよ!?」


 ところがそこに白い影が横切りました。

 何かと思えば、騒ぎの中心的人物、いえ中心的鳥類しろぴよです。

 パティアの頭に陣取って、空気も読まず楽しそうにさえずり始めました。


「ピヨヨッピヨヨッ♪」

「ふむぅ……。パティアくん、友人である君に頼みがある」


「なーにー、ぞえりん?」

「はーいゾエリンである♪ ではなくてだね、その畜生を解剖させてくれたまえ。なに、命はムダにしない、貴重な研究材料として人類の――」


「うーうん、だめ。ぞえりん、しろぴよになー、ひどいことしたらなー、パティア……どうするか、わかんない……」


 それは愛か、成長か、とてつもないその潜在能力のたまものか。

 ゾエの良心の欠如した言葉に、パティアの魔力が反応しました。


 恐るべきことに、ナコトの書抜きで、パティアは手のひらにメギドフレイムの炎をともらせたのです。

 食らえば確実な死をもたらす破滅の炎を、無詠唱で、書を頼らずに発動させてしまいました。


 それはわたしにとって、大きな懸念です。

 わたしの手ではもう、いずれ、パティアを止められなくなるという脅威でした。


「じょじょじょ、冗談だよパティアくぅぅんっ!? わ、我が輩としろぴよくんは仲良しだよっ!? こんなに愛らしい鳥畜生をっ、解剖したり焼き鳥にするわけがなかろぅっ!? ソレはヤバいっ、ヤバいから、は、早くそれを引っ込めてくれたまぇぇーっっ!!」

「しろぴよ。このおねーちゃんに、ちかづいたら、だめだぞー? やきとり、おいしいけどなー」

「ピ、ピヨォッ……!?」


 こうして、錬金術師ゾエは、その異能の術をわたしたちに貸してくれるようになりました。

 夜型のゾエは昼食に合わせて起きて、風呂に入って、昼過ぎに仕事を始めて、晩餐になると、食堂で深夜までバカ騒ぎしたり、風呂に入り浸る、極めて自堕落な生活を披露して下さいました。


 ですが――困ったことか、喜ぶべきことか、その才能は確かに本物、彼女は天才だったのでした。


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