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5-3 娘がまた致死レベルの魔法を覚えました……

 無我夢中で記憶も定かではありません、気づけばそこは湖畔でした。

 どうにか逃げおおせたわたしは、そこで息を戻すことにつとめていました。

 ただ運ばれていただけのパティアまで、ぐったりとしているのはどういうわけでしょうか……。


「あぅぅ……なんじゃこりゃぁ……なんか、なんかー、ちからが、ぬけるぅぅ……」


 息と同時に思考能力も戻ってきました。

 まさか先ほどのアレは、対象の生命活動を増幅させる術なのだろうか……。

 しかしなぜ下級の魔法ではなく、派手なものにばかりこの子は適正を見せてくれるのか……。


「今さっきのやつは、絶対に、人に撃たないようにして下さい……いえ、使うのも禁止です……」

「えー、なんでー? すごかったぞー?」


「アレを見てわからなかったのでしたら、魔法じゃない方のお勉強のやり直しですね。コレ、冗談ではなく本気なのであしからず」


 また1つ、娘が危険な術を覚えてしまいました。

 メギドフレイムといい、8歳児が持つにはヤバいなんてもんじゃない超高位魔法を。


「まてねこたんーっ、かんがえなおせー! お、おべんきょうは、もうじゅうぶんだ! パティアの、あたまが、ぐるぐるぱーになってしまう!」

「ならば質問に答えていただきましょう。なぜあれを、人に撃ってはいけないのでしょうか?」


 パティアは問いかけに頭を抱えました。

 お勉強だけはこれ以上増やして欲しくない、その一心で幼い頭脳をフル回転させる。


「えっと、うーんと、ぅぅ……ま、まて、ちゃんとかんがえるからなーっ、お、おべんきょうは、なしだぞー、ねこたん?!」


 どうもまともな回答が期待できなそうな焦りようです。

 わたし、そんなに厳しい先生ですかね……?


「あっ、わかった! ふっふっふっー、あのなー、きっとなー、げんきになりすぎてー、ねないこになるからだっ!」


 良い線はいってる、しかし想像力が足りていない。

 魔法が恐ろしい力であるという現実も、彼女はまだ十分に知らない。


「もっと酷いことになります」

「ぅぅ、こわいのか……。なら、どうなるんだ、ねこたんせんせー……?」


「はい、たとえば今のやつをバーニィにかけたら……」

「バニーたんに、かけたら……?」


 わたしはけして笑わず、言葉の響きも淡々と冷たいものを選んだ。

 パティアもわたしの態度から察して、不安げにこちらを見上げる。……じきに成長して、この子にも身長を追い越されてしまうのだろう。


「ヒゲボーボーの毛むくじゃらになった上に爪がネコより長く伸びて、全身脂ぎった垢まみれのギットギト、さらに今より数年分老けることになるでしょう」

「あはははははっ、なんだそれーっ、ボーボーになるのかー?! おもしろいっ、やってみたい!」


「子供とは恐ろしいものですね、止めなさい、歳を取るってことは、それだけ早く死ぬはめになるってことです」


 死ぬ。たったそれだけでパティアの顔がひきつった。

 エドワードさんを亡くしたばかりです、罪悪感に胸が痛む。


「ぇ……バニーたんしぬ……やだっ、そんなのやだぞーっ、こ、こわい、こわいな……まほう……」

「ですがメギドフレイムをぶち込んでも死にますし、どちらも使いようです。くれぐれも人には撃たないように。逆に上手く使いこなせれば、これほど有用な力もありません」


 わたしはパティアの肩をそっと抱き寄せて、彼女が好きなもふもふで包んでやりました。

 すると緩やかに、ショック状態から彼女が元のやんちゃ娘に戻ってゆく。


「でも、おっかないなー……そんなこわいこと、パティア、できちゃうのかー……。まちがって、あたったら、たいへんだ……」


 結局予定とはだいぶ異なる結果となってしまいました。

 しかしパティアが力の危険性をこうして学習してくれただけでも良しとしよう。


「だけどさっきのは、良いことをしたかもしれませんね」

「ほぇ……えー、なんでー? あっちのもり、ぜんぶ、くさくさだぞー?」


「さっきの花粉の爆裂で、森中のクリの花に花粉がついたでしょう、秋はきっとクリが豊作になりますよ」

「おおーっ、そうなのかっ、よくわかんないけど、わかった! いっぱい、たべれるってことだなー、うわ~~いっ♪」


 食い意地は偉大なり、パティアが元気を取り戻してくれました。

 アレの直撃を受けたモンスターたちからすれば、たまったものではないでしょうがね。


「クリばかりでは飽きると思いますが。もしここに料理が出来る人がいれば、お菓子なんかにもなるんでしょうけどね」


 そうなると欲が出る、村人を増やそうというバーニィの案が魅力的に感じられてくる。


「りょうり! りょうりなら、パティアにまかせろー!」

「おや、クリを使ってどんな料理を食べさせてくれるんですか?」


「えっと、それはなー、えーっと……クリ、クリ、クリ……あっ、クリステーキだ! クリとおにくを、いっしょにやく!」

「すみません、それあまり美味しくなさそうです。そもそも食べたことあるんですか、クリを」


 かく言うわたしもあまり料理が得意とは言えません。

 下手な自炊するより飯屋を頼った方が楽だし、ずっと美味しいですから。


「ない!! だからたのしみだ、あきが、パティアはたのしみだ!! あき、はやくこないかなぁ……やまの、たべものもー、あきがいいって、バニーたんいってたし! はぁ……はらへった……」

「秋が来たら寒い冬が来てしまいますよ。ここの冬は短いですがね、その間、干してないお肉はあまり食べれなくなるかと」


 ですけど今のわたしは子持ちです。料理の1つくらい作れるにこしたことはない。

 ……今度街で、シスター・クークルスに人間の料理でも教わろうか。

 この地で得られる食材は、どれも独特なものが多いので、なかなか食材を組み合わせた料理らしい料理にならないのが困ったところです。


「ふゆは、おにくとれないのか……それはつらい、やぱり、あき、こなくていいかもしれないなー……」


 バーニィのまねではないですが、料理の出来る村人が欲しくなってきました。

 そんな都合のいい人材、そうそうお話のように転がり込んでくるわけがありませんけどね。


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