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34-1 桜咲く、酒封開かれ、犬猫駆け回る - 史上最低の裏切り者 -


前章のあらすじ


 バーニィとタルトの過去。遠い昔に二人はレゥムで再会した。

 まだ成人していなかったタルトは年齢を偽り、帰ってきてくれたバーニィに恋をした。


 だが二人は立場が余りに違いすぎる。

 バーニィのレゥムでの任務が終わると彼らの関係は遠ざかり、再び任務で再会する頃にはお互いに年齢を重ねていた。


 現在。ネコヒトは夜逃げ屋タルトに接触する。

 このチャンスを逃すと、レゥムとの行き来が困難になるかもしれない点から、子供たちの親を里に招きたいと協力を仰ぐ。


 それからタルトの協力もあって子供たちの親元に使者を出し、タルトとネコヒトもカールとジアの両親に接触して移民の説得を成功させた。特にカールの父は元軍人、ボウガン使いの優秀な狩人だ。


 それからしばらく待ち、移民に応じた親9名と共にギガスラインを越えた。

 そんな中、里で月光石による夜の道標がダンの手で作り出された。


 3日間の魔界の森横断を果たし、ネコヒトは子供たちの親を連れて里に到着する。

 カールとジアは親公認の仲となり、パティアはネコヒト人形をベレトに自慢した。なんとその人形には、どうやら彼の毛玉が使われているようだった……。


 ・


――――――――――――――――

 隠れ里のなんでもない春の日々

――――――――――――――――


34-1 桜咲く、酒封開かれ、犬猫駆け回る - 史上最低の裏切り者 -


・嫌われ者のミゴー


 意外だった。てっきり俺たち魔軍殺戮派は、そのまま勢いに乗ってベルン王国に流れ込み、やつらの王都を陥として、群がる援軍を返り討ちにしてやるものかと思っていた。

 けどよ、ギガスラインから動くなってよ、ニュクスからの命令が下っていた。


 殺戮派と狂気の軍団長ニュクスらしくもねぇ、つまんねぇ戦法だ。

 つまらん。マジでつまらんが、判断はまあ間違っちゃいねぇ。そこがまた、つまんねぇよニュクス……。


 ベルンに送られた各国からの援軍は、共闘して北部ギガスラインを人間の手に取り戻そうとした。

 俺たちがニュクスの命令を無視してベルンの王城を落とそうとすれば、今頃やつらに分断されてたかもしれねぇ。


 だがそうはなっちゃいねぇ。

 やつらの築いた城を盾に俺たちが防戦を決め込むと、人間どもは苦戦にあえいだ。派手さに欠けるがな、着実にやつらを殺せてはいる。


 ギガスラインの奪還が遅れれば遅れるほど、兵糧の面でベルン王国は苦しむことになる。

 それも全部わかってる、だがよ、こんなのつまらねぇだろが……! もう我慢の限界だ、俺はニュクスに抗議しにいったよ。

 命より大切な物がある。そいつは刺激だ、刺激がねぇのに、生きてても意味がねぇだろ!


「ニュクスッ、俺はもう飽きた! こんなの殺戮派のやり方じゃねぇ!」

「ミゴー、ボクは待てと言ったはずだ」


「わかってるっ、だがもう我慢できねぇ! 俺単騎で行かせてくれっ、防戦はもう飽きちまった!」

「ダメだよ、行くならこの場でキミを……そうだな、拷問でもして従わせよう」


 ニュクスは俺の武勇だけは買っていた。

 その貴重な駒を失うくらいなら、苦しめるて従わせると平然と言い放つ。


「どうしてもダメなのかよ……? 何でここまで乗り込んでおいて、コソコソしなきゃならねぇ! ぶっ殺そうぜッ、テメェだって憎いんだろ、やつらがよぉっ!」

「ミゴー、キミはボクの理解者にして対局だね」


「何言ってやがるニュクスッ!」

「キミは人間を憎んでいない、キミには人間も魔族も関係ない。殺し合いが大好きな、キミの遊びに付き合ってくれる相手を、いつだって探して求めている」


 だからなんだよ、そりゃそうだろ人間も魔族も何も変わらねぇ。

 俺を楽しませてくれる相手なら、誰だっていいに決まってる。絶対に勝てねぇテメェ意外なら、誰だってな。


「わかってるなら理解してくれよッ! もっとスリルのある殺し合いがしてぇんだよ俺は!」

「キミほど殺戮派の思想とはほど遠いやつも、この世にいないだろうね……だが」


「――ッッ!? ゥッ、ゥグッ?!」


 ニュクスの細い手が俺の喉元に触れた。

 そいつはただ一人、俺がこの世で畏れる怪物だ。コイツがまゆをひそめるだけで心臓が縮み上がる。


 その気になればヤツは触れた部分から、相手を膨大な魔力で破壊することもできる。生まれ持ったその異常な魔力で。


「だが黙れ。もう少し静かに時期を待て。もうじき、動き出すはずだよ」

「動き、出す……? 何がだ、ニュクスッ!」


「あの最低のクズだよ。それまでボクたちは、人間の軍勢をここに引きつけるんだ」

「まさか……」


 嫌われ者のミゴー。そう呼ばれてる悪党ですらあきれたわ……。

 心当たりがあるとすりゃ、あの野郎以外にいるわけがねぇ……。


「気でも狂ってんのかよあの野郎……!?」

「同感だよ。手を組むのも汚らわしいけど、彼のおかげで、少なくともキミの望む世界が生まれるだろうね」


 その話一つで気が変わった。ここで遊びながら待つとしよう。

 パーティの第2弾は、反吐がでるくれぇ最低だ。だがもしそれが本当なら、俺の望む混沌の時代が訪れる。


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