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29-7 だい よく じょー!

・魔軍正統派の斬り込み隊長だった者


 天から幸運が降ってきた。

 温泉のある地域か、金を払って大都市の公共風呂に行かなければ手に入らない物が、地面から生えてきた。


 詳しく聞くと、教官が手に入れてきたあの女神像の力だという。

 昼から1番風呂を楽しんだオレたちは、夜になるともう1度あのぬるま湯に身を沈めた。


「はぁぁ……気持ちいい……オレたちは、なんて、ついているんだ、信じられない、ぁぁ……」

「私、お風呂って初めてです。はぁ、温かい……」


 リセリとジア、それにパティアは風呂に入ったことがないそうだ。

 中途半端な温かさのぬるま湯に彼女たちは不満なんてなく、人肌並みの少し物足りない温かさに満足していた。


「これ癖になるかも……うわっ?! ちょっとパティアっ、泳がないでよ波がこっちにくるよっ!」

「ジアごめん。でもなーっ、あったかたのしいぞー、えっほっえっほっ……みてみて、パティアういてるー!」

「うふふ~、クーちゃんも泳いじゃおうかしらー♪」


 髪をアップに縛ったパティアが、まるで川を泳ぐ犬のように浴槽を笑いながら泳いでいる。

 その後ろ姿を成人のクークルスが泳ぎをまねして追いかけていた。


「パティア、順番が狂ったが、身体を洗おう。教官が買ってきてくれた、石鹸を用意した」

「おお……せっけん、これなー、これ、いいにおいだよなー。じゃあパティアが、うしおねーたん、あらったげるね~」


「え、い、いや、オレは自分一人で、できるから……」

「あら、私たちの仲なんですから遠慮は止めて下さいな~♪」


「いや、どんな仲だ……」


 オレはパティアと一緒に湯船を上がって、バーニィが急ぎ用意してくれたたった1つの桶にぬるま湯をくむ。

 それで石鹸を少しやわらかくして、泡立つ布切れでパティアの肌を擦った。


「ねーねー、うしおねーたん」

「ふふっ、どうした?」


「おっぱいだけ、パティアがあらうか?」

「パティアそれセクハラだからっ!」

「うん、リックさん、大きいね……」

「そうね~、大きいですね~♪」


 パティアの身体は誰よりも綺麗だ。スベスベしていて繊細で、肉眼では産毛1つ確認できない。

 胸のことはもう諦めた……。見たいなら見ればいい、それでもオレは久々の入浴を楽しみたい……。


「いい、自分で、洗うから……」

「そうかー……うしおねーたん、きがかわったら、いつでもいえ? パティアがなー、せきにんもって、でへ……」


 パティアの身体に湯をかけて洗い流した。

 石鹸のいい匂いが小さな身体に染み着いて何だか達成感がある。その次は自分を石鹸と布で擦っていった。


 この調子では貴重な石鹸をあっという間に使い切ってしまうかもしれない。

 節約できる自信がない。肌に張り付いた垢と脂をとりのぞくと、ただそれだけでたまらない快感だ。


「リセリ、洗ってあげるよ」

「あっ、パティアも!」

「えっええぇ……?! い、いいよぉ、自分でできるよ……」


 足下が濡れているのもあって不安定だ。

 湯船の外にやや強引にリセリが運ばれると、ほどなくしてくすぐったそうな彼女の笑い声が浴室にこだました。


「ずっとこのまま、このぬるま湯に、浸かっていたい……」

「はぁ、はぁ……笑い死ぬかと、思いました……。リックさんってお風呂好きなんですね」


 流れるように時間が過ぎていった。

 あまり長湯をすると、男たちが急かしてくるかもしれない。お前たちにやる湯はないと、力ずくでここを朝まで独占したい……。


「ああ、大好きだ。だが本当の風呂は、もっと温かい。この湯温、やはりどうにかならないものか……」

「つぎはー、クーのばんだぞー、やるぞージア~!」

「おっけーっ、ほらシスターさん上がった上がった!」

「やーん、洗われちゃいますぅー♪ うふふー、皆さんとのお風呂楽しいですっ♪」


 天国のように幸せなひとときが流れていった。

 教官、繰り返すがこの件に感謝している。これから毎日これに入れるなんて、オレたちは地上で1番の幸せ者だ……。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



・野郎代表俺


 だいぶ待つことになったが女どもが湯を上がると、ようやく俺たち男も風呂に入ることを許された。

 信じられるかよ、残り湯だぜ残り湯、リックちゃんとクークルスちゃんとその他かわいい子いっぱいの残り湯だ!


 ま、俺が浴室に入った頃にはもうカールどもに汚されてたけどな……。


「だぁぁぁーーっ、てめぇら貴重な残り湯――じゃなくてよっ、ちゃんと身体洗ってから入れよなっ、おらこっち来いっ、一列に並べ! この機会にみんな身体綺麗にして今夜は寝るぞ!」

「バーニィのおっさんなにカッカしてんだよっ、ちょっと泳いでみただけだろー!」

「すみません、みんなにつられて僕まで……わふっ、でも気持ちいいです」


 もうヤケクソだ、ガキどもをしきって身体を洗わせた。

 ネコヒトとジョグはもう昼過ぎに一度これに入っている。ゆうゆうと浴槽の奥からこっちを見物してたよ。


 ダンか? 誰よりも早く身体を綺麗にしたら、奥で岩のようになってるな……。

 ほんのちょっと前までここは楽園だったってのに、うわむっさい光景だわ。イノシシと、猫と、大男が並んでこっち見てるんだからよ……。


「おっ、なんだラブ公、お前さんなんか……洗うの面白ぇな……?」

「け、毛深くてすみません……はぁっ、でもバーニィさん上手です、すごくこれ、気持ちいい……キュゥゥンッ……」


「はははっ、パティ公に聞かれたら嫉妬されそうないい声だぜ」

「おっしゃ綺麗になった! みんな泳ぐぞー!」


 しかしラブ公洗うのに夢中になってたらよ、ガキどもが次々と風呂にダイブしていった。

 そっから先は運動会だ……。


「おいおめぇらやめるべっ、ダンとエレクトラムに迷惑だべよぉ!」

「フフ、まあ初日はこんなものでしょう」

「この里は凄いな……」

「…………」


 ダンが湯に浸り込むばかりで何も文句はないらしい。

 それと北方ベルンから来た旦那さんのパウルも、ダンと同じく黙り込んでやさしい目で子供たちを見ていた。


「うっし、終わりだラブ公。流すから耳押さえとけ」

「は、はい! どうぞ……」


 でよ、泡だらけのラブ公を流していると、そこに乱入者が現れた。

 なるほどな、そう来たかオテンバ娘よ。


「ねーこーたーんっ♪ パティアももっかいっ、いっしょにはいるぞー!」

「おいこらっパティ公っ、なに当たり前みてぇに入って来てやがる!」


 裸んぼうのパティアが浴室のど真ん中で、肌も隠さずに仁王立ちになってたよ……。

 男の子の視線がこう、なんか……なんかこれガキどもが羨ましいな? ガキども目線だと飛びっきりのサービスシーンだろなこれ?


「あなたね、男湯って言葉知っていますか?」

「うーうん、しらなーい。それよりねこたーん、いっしょにはいろー♪」


 まあ反応は年齢、成熟度合いによってまちまちだった。

 一番わかりやすかったのはカールだな。


「おいカール」

「え……?」


「鼻血出てんぞ……」


 おっさんはカールたちの若さが羨ましくなったよ。

 ああ……明日こそ、リックちゃんたちの残り湯にありつけるといいな……。


 感謝してるぜネコヒトよ、ホーリックスちゃんの入った風呂に入れるなんて、俺は世界一の幸せ者だぜ。


大浴場で、大欲情!

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