29-5 おーだめーど - ワンピース -
これは最近の彼女の働きをまとめた小話です。
シスター・クークルスの春着作りは何ともうしますか、独特でした。
「はーい、よくきてくれましたね~。さてジアちゃんはー、どんな服が欲しいですか~?」
「どんなって、そんないきなり言われても……」
まず彼女が城1階の仕立て部屋に人を呼びます。
「ワンピース? それとも大胆にキャミソール? 動きやすいパンツとブラウスもいいかしら~?」
「私、服にはそんなに詳しくないから……。パンツって、下着とは違うの?」
それからだいぶ大ざっぱに相手の要望を聞くようです。
春着はコートより工程が少ないですからその分、子供たちが着たい服を作ってあげたいと思ったのでしょう。
少し贅沢にも一人一人がオーダーメイドでした。
「まあ、ズボンみたいなものかしらね~」
「ふーん……」
ジアは要望を迷って考え込みました。
こういうとき男の子たちはあまり悩まないそうです。
それに対してジアの思慮はこれまでの中で最も長かったとか。
「ねぇシスター……」
「はいはーい♪」
「カール……。カールは……どんなの、好きだと思う……?」
「うふ……うふふふふ♪」
好きな男の子の気を引ける服が欲しい。詳しくはありませんが、それは女の子としては自然な感情なのでしょう。
シスター・クークルスはジアのかいがいしさを、これでもかと具体的にわたしに語って下さいました。
「ちょ、笑い方怪しいんですけど……」
「それなら~、肩の出るキャミソールがおすすめね♪ 大丈夫よジアちゃん、神様もそうおっしゃってるわ♪」
「その神様、アル様なみにチャラいね……。じゃあ、それでいいよ……あ、エロいのはダメだからねっ! 着る勇気とか出ない……」
「はーい、クーちゃんに任せて下さいね~♪ つまり~、ほどよくエッチで良いのよねー?」
もうおわかりでしょう、春着の供給は隔離病棟の子供たちが最優先です。
なにせ彼らは冬着を脱げば、その下はこれまで着ていたボロボロの服を繕っただけの服装でした。
「良くないってばっ、今さっき私エロいのダメって言ったじゃんっ!」
「……あら、言われてみればそうだったわね~、ふふふー♪」
「しっかりしてよ~シスターっ! 危うく私、秋までエロい服で過ごすはめになるとこだったじゃん!」
「……てへ」
猫耳の生えたシスター・クークルスがあざといしぐさを取っただろうと、私は勝手な想像で補完しました。
人間の頭に猫の耳が生えているというのに、すっかり彼女の姿に順応してゆく自分に、わたしはもっと危機感を覚えるべきなのでしょうか……。
「もーっ、てへ、で済まさないでよシスター!」
「でもー、カールくんはバニーさんに似て、少しエッチなところがあると思うの。効果は抜群よっ!?」
「……! あ、ううーん……やっぱいい、バーニィさんとか釣れたら困るもん……」
「そうなの~? だけどバニーさんなら大丈夫よ、とっても良い人だから心配ないわ~」
「ううん、シスターは自分の心配して。バニーさんはドスケベだからちゃんと気を付けてよねっ」
「あらー? あら、そうなの~?」
ムダですよジア……シスター・クークルスは何をされようとも、セクハラされてる自覚が生まれない特異体質なのです……。
こうして数日後、ジアが白のワンピースを着て笑っている姿を、わたしも目にすることになるのでした。
次回挿し絵回。絵描きのしーさん一押しです。お楽しみに!
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