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25-6 古城グラングラムの花園 元姫君ハルシオンの花舞台 - 古城と花園 -

 男衆と男の子、バーニィたちによる二軒目の家作りが進んでゆく中、空中庭園の計画もようやく本格始動しました。


 二軒目の家はリセリとジョグの家から城側に少し離れた場所に決めて、新人のパウル夫妻に住んでもらう予定です。

 彼らは駆け落ちをした夫婦、古城でいつまでも共同生活させるのは少しばかしかわいそうでした。


 それともし子供たちが城の外で暮らすことになるなら、共同住宅のような物を作った方が都合が良いかもしれません。

 蒼化病の里でも、元々はそうしていたみたいですから。


 まあ前置きはさておき、これは空中庭園造りのお話です。

 その日、わたしが狩りに出払っている中、城のバルコニーに女の子たちが集まっていました。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



「なんかー、おもってたのと、ちがうねー」

「うん、ちがう。でもたのしそうだよ、ここに、お花畑、できるんだね」


 年少組に位置する年下の女の子と、パティアが言葉を交わしていたそうです。

 そんな中、騎士アルストロメリアこと、ハルシオン姫が庭園工事の指揮を執るのでした。


「みんな集まってくれてありがとう。まあ見ての通りさ、男どもに土を運ばせておいた」


 庭園を造るには大量の土が必要です。

 そのためこの前から男手を借りてコツコツと、アルスはここに豊かな広場の土壌を運んでいました。


「まずはこのバルコニーの左翼と右翼、それぞれに花壇を作ろう。それからゆっくりと、あのレンガで作った道にそって花壇を広げれば、空中庭園の出来上がりさ」


 場所が場所なので、水まきはパティアのスコールの魔法が頼りになります。

 今ではここと城外との行き来が可能になっていましたから、レンガによる道の舗装も重要でした。


「じゃあ始めよう、悪いけど最初は力仕事だ。花が好きでもない連中に任せたら、どんなセンスのない庭園にされるかわかったもんじゃないからね」


 うずたかく集められた広場の土を、彼女らはバルコニーの両翼に運び盛ってゆきました。

 そこにはリセリとタルトの姿もありました。


「ありがとうタルトお姉ちゃん。暖かくなったら、ここに花がいっぱいになるんだよね……。お姉ちゃんが選んだ花が……私、楽しみ」

「そうさ、苦労したんだからね。あのヘザーのところに行ってさ、もう大変だったよ」


「ヘザー……あ、花屋のお姉ちゃん?」

「そうだよ。家を継いだのか店を任されてたよ、アンタのことを話したら、無事で良かったって、安心してたよ」


 タルトは救われた気持ちになったそうです。

 ずっと一緒に居てやれない分、花園という形で自分の影をそこに残せる。彼女が庭園造りを張り切ったのは言うまでもありません。


「ねーねー、あるたん、これってー、なんのおはながさくのー?」

「これはこれは小さなレディ、今日もキミは天使のようにかわいいね」


「でへへ……あるたん、ねこたんがきいたら、むすめはやらん……って、いわれるぞー?」


 あまりに生き生きと騎士を演じるものですから、ときどきアルスを男扱いしかけるときがあります。

 娘はやりませんよ、アルス。


「それでー、なんのおはな、さくのー?」

「ああそうだったね、それはね、色々だよ。カスミソウに、パンジー、アサガオにツユクサ、ポピー、ダリア、フリージアに、その他もろもろと、ヒマワリだね」


「ふりーじあ……? どっかで、きいたような……んーー……わすれた」

「ひどっ、パティアったら私の名前忘れてたの!?」


 その会話をジアが盗み聞きしていたそうです。

 パティアの前にその長身を駆けさせて、忘れないで欲しいと抗議しました。


「ジア?」

「それ略称! 私フリージアだってば! 似合ってないとか、バカールには言われるけど……一応フリージア!」


 カールはわかっていないよネコヒトくん。

 あれだけ発育の良いかわいい女の子が隣にいるのに、なんでケンカなんてするんだろうね。


 カールは自分が幸せ者なのを理解できていない、そう思わないかいネコヒトくん!

 などと後で言っていましたよ、麗しの騎士様が。


「ジアはー、かわいいのになー。ジアみたいな、はなか。パティア。はやくみてみたいなー!」

「パティアーっ、そう言ってくれるって信じてたよ私ー!」

「それにヒマワリの種、収穫できたらしろぴよちゃんが喜びそうだね」


 リセリも会話を聞きつけてそれに加わりました。

 いえリセリだけではありませんでした。


「ピヨッ、ピヨヨヨッ♪」


 まあ余談なのですが、しろぴよさんも手伝ってくれたそうです。

 将来の収穫目当てでしょうね。


 腹を下したとは聞いていませんので、毒のあるアサガオの種を食べたりはしなかったようです。


「いいかー、しろぴよー?」

「ピヨーッ?」


「ひまわりのたね、おいしそうだけど、たべちゃだめだぞー? パティアも、おとーたんと、いっしょに、たべたもんだ……。ぅ、おとーたん……」


 何度も何度も繰り返しますが、どんな食生活してたんですかあなたたち……。

 まさかヒマワリの種が主食だったとか、言い出しませんよね……?


「あっ、木の根っこ掘ってさ、煮て食べたりしたよねっ」

「やわらかそうな若草、手当たり次第抜いて煮たりしたね……」

「わかるー、それ、わかるー!」


 悲惨な隔離病棟患者とパティアの貧困生活トークがいきなり盛り上がって、アルスは戸惑いと同時に加護欲を覚えました。

 贅沢な暮らしをしてきた王族として、耳が痛いとグチも言っていました。


「その、根とか、若草というのは、食べられるものなのかい……?」

「えーー、あるたん、たべたことないのー?」


「ごめん、ないよ……」


 こうしてこの一日で城のバルコニーの左翼と右翼に土が盛られ、崩れないようにとその周囲がレンガで囲まれました。

 盛り土の上には花々の種がまかれ、パティアのスコールを放てば後は発芽を待つばかりです。


「お疲れさま、今日のところはここまでだ。みんな持ち場に戻って、男どもが土を運んでくるのを待とう」


 既に事前準備してあったこともあって、土は全て両翼に移し替えられ、そこに空中庭園と呼ぶにはこじんまりとした、大きな花壇が生まれたのでした。


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