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24-1 ネコは真実と蜂蜜を求めて東に征く - しっと -

時はさかのぼってネコヒトが旅立つ前の昼過ぎ、里では――


 これも後から聞いた話です。

 種まきや除雪作業が落ち着いたこともあって、先日からリセリとジョグの新居作りが始まっていました。


 土台が完成したと昨晩にバーニィから直接聞きました。

 今日からは冬の間に用意した材木を組み合わせて、それを鉄クギで繋いでゆく力仕事だったそうでした。


「よーっし、こりゃなかなかいい感じだぞ! どうも俺はよ、騎士より大工の方が向いてたくせぇなっ!」


 ラブレー少年のものが小屋だとしたら、こちらは家です。

 ずっと広い空間に、リビングと2人のための寝室、それと物見やぐらを併設するそうでした。


 バーニィが言うには、ジョグとリセリを慕う子供たちがその家に集まれようにしてやりたいそうです。

 もしかしたらこの男、真っ当に騎士をやっていた時期もあったのかもしれませんね……。


「もう一息ですね、バーニィさん! やっぱりバーニィさんは凄いです、僕尊敬してます!」

「ははは、悪い気はしねぇぜ。よ~しラブ公、そっちはもういい、こっち手伝ってくれ」


 バーニィおじさんの指示でそれが組み上げられ、今は片面の外壁が完成したところです。


「はい! あ……ところで、あの、パティアのやつは……?」

「パティ公か? ああ、それがよくわかんねぇんが……こっちすっぽかして、空飛ぶお花畑、ってやつ造るんだとよ」


 アルスではなくパティアから聞いたらそうなるでしょうね。


「そうですか……。なんだ、こっち来ないんだ……」


 バーニィは不思議そうで、イヌヒトのラブレーは少し残念そうにしていました。

 バーニィ第二の子分カール少年の談です。


「違うってバーニィさん、空中庭園だって。でもなんかすげーよなっ、パティアとエレクトラムさんなら、マジで空飛ぶやつ作れるかもなーっ!」


 カール、あなたももの凄い想像をしてそうですね……。さすがに無理ですよそんなの。

 ちなみに後日バーニィはこう言っていました。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



「俺も一応騎士だしな、王宮に上がったことがある。パティ公どもの盛大な勘違いに、つい笑っちまったよ。っていうかよぉ、同じ勘違いしたことあるんだけどな! 空中庭園、マジかよ、飛ぶのかよっ、王都ってスゲェなぁっ! ってよ、同僚によーっ、ははは、爆笑されたっての!」


 知らない者からすれば、言葉通りに受け止めるしかないのでしょう。

 さすがに空を飛ぶという時点で、なにかおかしいと疑って欲しい気もしますが。


「昔のあなたですか。今よりたちが悪そうですね」

「おいネコヒトっ、そりゃどういう意味だよっ!?」


 いえ今のスケベオヤジっぷりに若さを足すと、さすがにそれは許容外かなと、思わないでもないだけですよ。


「ああそうでした、昔なじみの(・・・・)、タルトに何か言づてがあるならお聞きしますが?」

「おい……別にあの女にそういうのはよ、いらねぇっての……。ていうかお前さんはどうなんだよ、お前さんだって若い頃は結構、やんちゃだったって口だろ?」


「はい、そこは否定できませんね」

「おおっ、そこは詳しく聞きたいね! 何やったんだよネコヒトよ?」


 わたしはこれで見栄っ張り。

 愚かだったあの頃を人に語るはずがありませんでした。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



 カールとジョグは城に保管しておいた材木をこちらに運んできました。


「だけどよぉ、人手をあっちに持ってかれたのはつらいべ。バーニィ、材木はここでいいべか?」


 ワイルドオークのジョグに、カールの手伝いはあまり必要なかったでしょう。

 リックほどではありませんが、ネコヒトが羨んで止まない恵まれた筋力を持っていました。


「おうっ、2人ともお疲れさん。あ~そういやカールよ、お前さん……ちょいと背ぇ伸びたか?」

「えっ、マジでっ、やっぱ伸びたかな俺っ?!」

「あ、言われてみれば少し大きくなったような……」

「ああ、カールだけじゃなくて子供らみんな大きくなってるべ……。エレクトラムの狩ってくる肉のおかげだべな」


 ところがカールとしてはそこが問題でした。

 ライバルのジアまで一緒に、背丈が同じくらい成長していたのです。


 さて息抜きはそこまでです、バーニィは話を大工仕事に戻しました。


「おいカール、こうなりゃ負けてらんねぇ、もう4,5人男の子を連れてきてくれ。帰ってきたネコヒトを驚かせてやらねぇと……」

「ならよー、後で剣教えてくれよな!」


「ああ今度な、お前さんの意気込みに付き合うのは、俺みたいなおっさんには重労働だ。……おっ、なんだ、パティ公じゃねぇか」

「ひっ、で、出たぁぁーっっ?! バニーさんっ助けて……!」


 バーニィは仕事に戻ろうとしたものの、そこにパティアとマドリが現れました。

 特にマドリはバーニィのお気に入りです、仕事を放棄してほいほいとスケベ男がまずはパティアを迎える。


 一方のラブレー少年には申し訳ない気持ちが先立ちます。パティアがいつもいつもご迷惑をかけていますから……。

 しかしパティアの今の興味は、バーニィとマドリだったようでした。


「あのね、まどりんねー、バニーたんのなかまに、いれてほしいってー。おはなよりね、こっちがいいんだってー」


 マドリは元よりひかえめな性格です。

 どうやら冬の間にバーニィから教わっていたこともあり、大工仕事の方に興味を持ったようでした。


 木陰に隠れたマドリがひかえめに、遠くからバーニィにお辞儀をしたそうです。

 赤くなっちまってよ、もうかわいくてたまんなかったぜ! とか、後で聞きたくもない話を聞かされましたよ。


「よ、余計なことするなよっ!! バニーさんは僕のっ……くっ、くぅぅぅん……」


 人が集まれば人間関係が発生します。

 子分その1のラブレーからすれば、マドリは気に入らない存在でした。


「バーニィさん、あの、よければ私にも、手伝わせて下さい……。不慣れなのはわかってます、無理がなければでいいので……。ぁ……っ?!」


 バーニィが木陰に歩み寄り、マドリの手を引いたのは聞かなくてもわかります。

 気に入った女性には馴れ馴れしく態度を変える人ですから。


「いいぜ、俺ぁそういう趣味の女の子は嫌いじゃねぇ、むしろ光栄だぜマドリちゃん。手取り足取り俺が何だって教えてやるよ、他のやつならともかく、かわいいマドリちゃんは特別だ……」


 いえそれ男です。ついてるやつです。

 この話を聞いたわたしは、ラブレー少年の心の平穏のために、マドリの秘密をこっそり教えてあげたくもなりました。


 事実を知ればただの笑い話ですからこんなの。


「こういうところさえなければなー……マジ尊敬すんのになー……。俺、こんな大人にだけはなりたくね~……」

「グルルルルル……」


 しかし事実を知らない者からすれば、ただあきれる他にありませんでした。

 パティアの話によると、ラブレーの喉から低く小さなうなり声が聞こえたそうです。


「らぶちゃん? ねぇなんで、ぐるぐるーって、いってるのー? おーい、らぶちゃーん……?」

「うるさいっ……別に何でもないよっ! っっ~~、あのっ、なら僕にも教えて下さいっ、バーニィさん!」


「おおそうかそうか、よしよしっ、何だかよくわかんねぇけど、わかったぜラブ公! まとめて面倒見てやるからこっち来な!」

「……ワンッ♪ あ……ぁぁぁぁぁ……!? こ、これは、ち、違うんですぅぅー!」


 今日もバーニィはわたしの知らないところで、ワンコと男の子にモテモテでした。

 彼はダメな女ったらしですけどね、きっと本人の性質は、女性よりも男性を惹き付けるのでしょうね。


「うらやましい……。パティアも、ラブちゃんにワンって、いわれたい……。そか……これが、しっと、か……」


 パティアはラブレーが好き。ラブレーはバーニィが好き。バーニィはマドリがお気に入りでリックとクークルスにも言い寄る見境無しのエロオヤジ。

 何だかうちの里、規模の割に早くも人間関係が複雑に入り乱れてますね……。


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