21-2 暇を持て余した牛と猫は迷宮を下る - 悪意の断片 -
・嫌われ者
結局ニュクスは諦めたらしい。あのクソネコを殺すのを。
それと妙なことを言っていた。
「ミゴー、君に良いことを教えて上げよう。ネコヒトは古い種族。その中には、かつて頂点に君臨した個体もいたそうだ」
「だがもうヤツはいねぇ、消息も結局つかめなかった。死んだんだろうよ」
俺はニュクスに偽った、あのクソネコは見つからなかった。やっぱりあの時死んだんだろうと。
言っておくがかばったんじゃねぇ、死んでいることにしてくれねぇと迷惑だった。
じゃねぇと、またあのクソネコを殺せと命じられるに決まってる……。
「君に探してもらいたい物がある。それは君の願いにも一致するだろう」
「わかった。どうせ冬の間はドンパチできねぇ、何をすりゃいい?」
「それはね、先代魔王と共に、世界から跡形もなく消えてしまったものだ」
こうしてヤツの願いに従って、俺は魔界深部、さらにその西の果てを探すことになった。
魔族ですら近寄れない、強い瘴気や毒を放つ領域を特別な装備をまとい俺は抜けた。
もし本当にソレがまだ世界に残っているならば、今日までのクソみてぇに停滞した戦況を打開するだろう。
再び先代魔王のようにギガスラインを越え、世界の果てまで人間を追いつめ、今度こそ根絶やしにするというニュクスの願いも叶うかもしれねぇ……。
「邪神の断片を探せ」
それがあれば今より遙かにでけぇ戦が起こせる。
だから俺はニュクスの願いに応じた。
人間の滅びた理想の世界なんてどうでもいい。
ただもう一度、世界を業火に包み込む人魔大戦を引き起こしたい。
そうなりゃ穏健派も殺戮派もねぇ、戦うしかねぇ状況に全ての者を追い込める。
そして大戦の果てに、最後まで立ってたヤツが最強の勝者だ。
●◎(ΦωΦ)◎●
・(ΦωΦ)
迷宮に下りてきた以上は気が抜ける前に行動したいところです。
わたしは最初の扉の前に立ち、後ろの皆さんに振り返りました。
「では参りましょう。マドリ、後ろは任せましたよ」
「ねこたん、パティアはー?! ねぇ、パティアには、なにかないのかー?!」
「はい、前衛が増えましたので慎重にお願いしますね」
「わかった! バニーたんならいいけど、うしおねーたんに、まほーぶつけるのは、こころがいたむしなー」
そういうことです。
わたしは娘が喜ぶよう小さく拍手をしておきました。
「おい待てパティ公、俺ならいいのかよっ!?」
「んーー、まー、ひかくてき……?」
「よくねーよっ、ていうか比較的の意味わかってねーだろっ!!」
「そ、そんなことないぞ……。えと、あのね、んー……あ、ねこたんいくって!」
最初の扉を押し開いて、パティアに助け船を出しておきました。
するとそこにいつも通りの出迎えが待っておりました。
大部屋にゴブリンタイプが7、キラーアント3、トロルが2です。
「リック、露払いを」
「承知した、任せてくれ教官っ!」
戦いたくてウズウズしていたんでしょう。
彼女は即応して大部屋に突入しました。
あの質実剛健な十字槍を振り回して、一斉に群がってくる敵をまたたく間に返り討ちにしてゆく。
キラーアントはわたしの胸くらいの高さまである怪物だったのですが、彼女の敵にはまるでならずあっという間にトロル2体が残されました。
「パティア、あなたはアレを。いつものやつをお願いします」
「うん、がってんしょーちん! いくぞぉぉ、とろろめぇぇーっ、めぎどぉぉぉふれいむぅぅー!!」
「とろろじゃなくてトロルです」
パティアの持つナコトの書が開かれ、全てを焼き尽くす不滅の白焔がトロルを焼き払いました。
残る1匹はリックに圧倒されて、完全に足止めされています。
「クイック!」
そこでマドリが加速魔法クイックをパティアにかけました。
「お、おわああああーっ、な、なんだじゃこりゃぁぁーーっ?! めぎどふれいむっ!!」
術により加速されたパティアがメギドフレイムをもう1発放つと、戦闘がそこで終了していました。
わたしの出番ですか? 今は温存中ですし花は彼らに持たせれば良いかと。
「あ、あの……エレクトラムさん……この子、この子やっぱりおかしいです! 何なんですかこの攻撃力っ、いったい何者なんですかッ!?」
わたしの娘です。ついでにわずか8歳にして人類最強の火力を持っておられます。
「パティアは、パティアだぞー。それよりまどりん、すごーい! パティアのからだ、すっごくね、すっごくはやくなってね、おもしろかったー!」
「まあ今さらだろ、マドリちゃんもじきに慣れるぜ」
「殲滅力はオレも保証する。パティアがいる限り、長期戦はまずない」
おだてると調子に乗るのでほどほどでお願いします。
そのままわたしたちは上へ上へと、敵モンスターを片付けて進みました。
順調に売り物になる魔物素材や、プリズンベリルを手に入れて、地上目指して迷宮を上って行ったのです。
半分以上をリックが片付けてくれましたし、タフな相手にはパティアがいます。完璧です。完璧なわたしたちに敵などいません。
●◎(ΦωΦ)◎●
トントン拍子というヤツでした。
わたしたちはほんの1時間足らずで最後の部屋、ボス部屋とおぼしき特徴的な大きな門を見つけました。
「さて、なかなか良い運動となりましたが、この向こうのやつで最後のようです。バーニィ、解説を」
「あのねー、さいごのおへやにはね、ボスいるかも……」
「こらパティ公! 人の出番取るんじゃねぇって、いつも言ってるだろ……っ」
「念のためご注意を、ということです。では行きますよ」
皆がうなずくのを待ってから、わたしは大きさの割に軽い扉を押し開きました。
しかしその向こう側に現れたものというのがまずい。
「おわーー!? なんか、なんかすごいのっきたよーっ、ねこたーん!?」
「ひっ、ひぇっ?!」
「ど、ドラゴンだぁぁっっ?!!」
最後の最後でレアな強敵を引いてしまいました。
見たところ知能を失った下級の竜族で、背丈だけでもバーニィの3倍近くありました。とにかくでかくて狂ってるってことです。
それがボス部屋の一番奥に陣取って大きなアゴを開く。
「ブレスが来ます、すぐに後退を」
「ま、マジかよっ! おいパティ公っマドリちゃんもこっちこい!」
わたしの言葉に慌ててバーニィがパティアとマドリを連れて部屋の入り口から待避しました。
ところがネコヒトとリックは同じ方法を取りません。あえて部屋の内部に入り込んでから、それぞれ左右へと散りました。
「教官! まさかドラゴンがいるなんて、この迷宮は最高だ! 秘密を打ち明けてくれて、ありがとう!」
「それはちょっと同意しかねますよ。ドラゴンが相手だなんて、さすがにハードモードが過ぎます」
パティアのメギドフレイムと比べればぬるいものです。ちゃんと消える炎なのですから。
今日短編を投稿しました。
とてもしょうもないお話ですが、もしご興味がわかれましたら、ユーザーメニューより
拾った『SSRヒロイン確定ガチャチケット』使ったら、全く関係ないおっさんが出てきたからやむなく二人で無双してみる
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