少女の異世界転移24時
24時間だけ異世界へ旅立った少女の話し
もうすぐ日が暮れる。
私は怖くてたまらなかった。
私のいた世界そっくりのこの町は、間違いなく異世界だ。
ここの住人たちは感情らしいものも会話もなく、終始無言で無表情。
無機質なマネキンが動いているようで、
とても同じ人間に見えなかった。
私はこの世界に着てからまだ会話がまともに成立していない。
恐怖はジワジワと染みが広がるように大きくなっていく。
何をしても誰もが無反応の世界の、言いようのない孤独感が僕を震えさせている。
住人たちが歩く方向へ着いていくと、駅前のような場所に出た。
バスの止まるロータリーや大きな交差点がある。
しかし、人の歩く音と車のはしる音以外、鳥や虫の鳴き声さえ聞こえない。
ふいにガシャーンという大きな音が聞こえると、
私の目の前を『女子高生のようなもの』が横切った。
音のした方を見ると1台のバスが止まっていて、車体がへこんでいる。
『あぁ…この女の子は車にはねられてしまったのか』
しかしバスは気にするでもなく、
何事もなかったかのように再発進して行ってしまった。
道を歩く通行人も、地べたに倒れて動かない女子高生を気にする気配がない。
私は慌てて駆け寄ると、女の子の口に手を当てる。
よかった…わずかだが呼吸をしている。つまりまだ生きている。
『この世界に救急車はないのかしら?早く病院に連れて行かないと…』
しかし私はこの町のどこに病院があるのか知らないし、
もっている携帯電話は圏外だった。
私は悔しかった。
少女の呼吸がだんだん浅くなってきた。だが誰も助けようとしない。
私は叫んだ。
「このままじゃ、この子が死んでしまいます!」
「だれか早く救急車を呼んでください!」
「治療できる場所だけでも教えて下さい!」
通行人は多いが返事はない。
それどころか、誰一人としてこちらに顔を向けることもない。
みんながみんな、ただただ通り過ぎていく。
私は悲しくなってきた。ほほを涙が伝う。
なんで誰も助けてくれないのだろう。
いま、私の目の前で同い年くらいの1人の少女の命が、
消えようとしている。
私は無我夢中で心臓マッサージをして声をかけた。
「諦めないで!生きてください!」
必死だったから気づくのが遅れたんだと思う。
耳元にガーッという大きな音が聞こえて私が振り返ると、
私の思考はフリーズした。
私と少女のいる場所めがけて、
さっきとは別のバスが凄いスピードで突っ込んでくる。
少女は倒れているし、私もしゃがんでいるからよけるのは無理だ。
「わぁーーーーーーーっ」
私は何も出来ず目をぎゅっと瞑った。
***
視界が暗い。
目を瞑っているから当たり前だ。
あれから何秒、何分たっただろう。特に痛みや衝撃はなかった。
「・・・・・・・」
恐る恐る目を開けると、夕日が見えた。
あたりを見るに、ここは私が通っている女子高の屋上だ。
心臓のドキドキを沈める為に深呼吸を繰り返すと、
あいまいだった記憶が徐々に戻ってきた。
私は確か、いちいち人の顔をうかがってばかりだった、
高校の人間関係がイヤになったのだ。
好きな読書で知ったまだ見ぬ異世界や来世にばかり憧れて、
現実がいやになって飛び降りようとここまで来たのだ。
飛び降りる前にいけた異世界に、
胸おどる冒険が待っていない現実も覚えている。
屋上のフェンスを越えて安全な場所へ戻ると、
私は見慣れた町並みとその向こうの夕日を見た。
いまなら私は私の意思ではっきり断言できる。
私は『この元の世界で生きていきたんだ』と・・・。
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