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戦闘狂で何が悪い? 作者:shiare
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 ――5歳のとき、両親を失った。

 ミノタウロス、っていう魔物が村に入ってきたんだ。

 後から聞いた話だけど、ミノタウロスはSランクの魔物で、普通は人里になんか現れないそうだ。

 そんな魔物がやってきた。ただひたすらに、運が悪かったとしか言いようがない。

 ゴブリンみたいな、Eランクの魔物だったらまだ何とかなったかもしれない……でも、Sランクの魔物なんてただの村人たちにはどうしようもない。

 僕のお父さんは村を守るために戦って、帰ってこなかった。

 僕のお母さんは、僕を守るためにお取りになって帰ってこなかった。

 僕は家の戸棚の中で、息を殺して隠れていた――二人が帰ってくるまでずっと待っていようと思って。

 でも、一日過ぎても、2日経っても、二人どころか誰の声もしなかった。

 だから、3日目の朝に、外に出てみると、村を襲ったミノタウロスの姿は見えなくなっていた。

 僕の視界には……




――【村人だったもの】しか映らなかった。


 最初、5歳だった自分は現実を受け入れられなかった。

 村人だったものは、頭が潰されていて誰が誰だか分からなかった――だから、近くにあった二つの亡骸をお父さん、お母さんだと思って過ごしていた。

 その時の僕は、普通に暮らしていた。

 朝起きて、野菜を取り、食事を作り、両親に挨拶をする。いたって普通の――しかし、周りから見れば明らかに異様な暮らしを。

 1ヶ月程その生活を続けて、僕はようやく気付いた。

――自分は死体に話しかけていたんだ、と

 それに気付くと同時に、ある一つの感情が僕の心に生まれたんだ。

 「魔物を殺したい……」

 底の見えない魔物への憎悪、そこからしばらくはそれが僕の生きる理由だった。

 とにかく魔物を殺したい――けど、5歳の僕にそんな力は無い。ましてやミノタウロスなんか倒せる訳がない。

 だから、まずはゴブリンから殺そうとした。

 ゴブリンのランクはE、この世界で最弱の魔物だ。とは言え、それは成人した冒険者から見たランクであって、けして5歳の子供から見たランクではない。

 大人なら多少の怪我で済むゴブリンの攻撃も、僕にとっては一撃が生命を奪う致命傷になる。

 正面から立ち向かって勝てる訳もない。

 悩んだ僕は、とりあえずゴブリンを観察することから始めた。ゴブリンの活動する時間、群れる場所、攻撃方法、癖、あらゆるものを観察し、弱点を探した。

 ゴブリンを観察し始めて二週間とちょっと経った頃、僕は初めて魔物との戦いに挑んだ。

 標的は一体、周りに他のゴブリンはなし。今は夜、ゴブリンであっても活動が鈍くなる時間だ。

 ゴブリンは音にあまり頼らずに、人と同じで視界から多くの情報を得る。なら、視界を塞いでしまえばいい。

 持っている武器はナイフ一本。

 まず、近場にある石を掴み、ゴブリンの向こう側の木へと投げつけた。

 石は鈍い音を立てて木にぶつかり、一瞬、ゴブリンの注意を引く。

 そのすきに、全力でゴブリンへ駆け寄る、狙うのは目だ。

 走ってきた僕に気付いたゴブリンも、流石にこの近距離では反応できない――はずだった。

 何故か僕の攻撃に反応されたせいで、ナイフはゴブリンの胸を傷付けるだけで終わった。

 (なんで……)

 そう思う間にも、不利を悟ったゴブリンは森へと身を隠す。

 (ゴブリンをあれだけ見たのに……なんで、倒せない?)

 その答えは実に単純だった――まだ僕の知らないことがあるから。

 一度目は無理でも、次に倒せばいい。次が無理でも、その次がある。

 一度目よりももっと詳しい情報を、もっと確実な戦略を、もっと正確な動きをすれば、きっといつかは倒せるはずだ。

 そうして僕は、ゴブリンに挑み続けた。

 結果、都合6回目の挑戦でゴブリンの討伐に成功した。後から分かったことは、一度目のときにゴブリンが僕の攻撃に反応した理由が、【スキル】のせいだと言うことだった。

 【スキル】――魔物、人、関係なく、全ての生き物が持っている力。もしくは目覚める力。

 それがあれば、超人的な怪力や、技量や、知力を発揮できる。ただの子供が怪物へと成りたる力だ。

 その時の僕にはまだスキルがなかった。

 でも、それでも構わなかったんだ。

 初めてゴブリンを倒した時、僕が感じたことは安堵でも、復讐をした満足感でも、何でもなかった。

――強敵を倒す喜び、ただそれだけだ。

 知力を巡らせ、技量を磨き、情報を集め、普通では手の届かない強敵を打ち倒すのは、何よりも楽しいことだと知った。

 両親や、村人の復讐なんてどうでも良くなるぐらいに衝撃的な発見だった。

 それから、僕は魔物へと挑み続けた。

 何度も傷付いたし、死にそうな思いをしたこともあった。けど、何より強敵へ挑むのは楽しかった。

 今、僕は12歳になったばかりだ。

 それでも、自分の村の周りの魔物は全て倒し尽くした。

 もちろん、ミノタウロスも倒した。あいつは、どうやらこの森の主だったみたいだ。

 そのせいか、本当に強敵がいなくなってしまった。

 なら、もうこの村にいる理由もない。ここにいるよりも、外の世界へ行くほうが面白そうだ。

 昔聞いた話では、外の世界には王国があって、そこでは12歳から学院へと通えるらしい。

 全てを失った日から七年、村に残された書物なども使って一応勉強はしてきたつもりだ。

 だから、せっかくだし外の世界へ――学院へ行ってみようと思う。










――まだ知らない景色、まだ知らない知識、まだ知らない人達、何よりまだ知らない強敵を求めて、僕は外へ旅立った。






 

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