第7話 ガチャだけの日常とは?
訪れた俺に彼女は駆け足で俺に近づく。大慌ての様子だ。しかし、俺自体は慌てていない。
「雷徒、心配したよ~!」
俺は昨日の雲隠れしたあと、自宅に帰る。しばらく落ち着かせたあとに時間をみたらバイトの時間になっていたのでいつものラーメン屋反骨に向かう。しかし、客は全くいない。多分、ガチャの騒ぎが問題で皆怖くて外出できないんだろうなと俺は予想した。
しかし、その内に外へと出なければならない。食料の買出しにいかなければならないからな。その前に手を打たなければならい。当然、誰もが考えることだろう。
「雷徒、本当に心配したんだからね!」
大げさだな。こいつは。
いつものツンツンも全くなくラーメン屋の娘奈智は俺に抱きつく。まあ、本気で心配していたようだが俺に触れないで欲しいのが本音だ。
「お前に心配されるほど、俺もダメな人間じゃないからな」
「なによ! あんたは私がいないと路頭に迷うでしょ!」
プリプリと怒られる。仕草が可愛いといえば可愛いが三次元女にあまり感情を抱かないのが俺だ。動じない。
「路頭に迷うだ? その表現はなんだ? 俺はまだ十代だぞ。それより、学校の状況はどうだ?」
俺にとって心配事は情報がないことだ。こうやって無事に会えれば、それでいいじゃないか。それより先のことが重要だ。俺は学校に一日行ってない。欠席したことはどうでもいいがガチャ騒ぎの最中だ。こうやって生きていく為にも学校が必要か不必要か考えなくてはならない。社会のあり方が変わったのだから。
「校長代わった。ガチャで」
奈智が即答する。端的だな。もっと情報をくれ。
「おーし! 予想通り」
まあ、それだけの情報でも貴重だ。
校長とて給料をもらっているはず。つまり、金イコールガチャだ。別段、校長に不満があるわけじゃない。ガチャがこの世の中でどこまで左右されているか? だ。
つまり、学校としてはガチャを通じて社会の生き方を教えたり、ガチャを通じて社会にコネクションがなければまるで無用の場所となる。学校嫌い。
「俺、明日から学校やめる。おっちゃん、しばらくここで俺を一日中雇ってくれよ」
知識とは決断力である。俺は人生で最も早急に事を決める。しかし、俺を馬鹿にした目でみる那智がいる。
「はー? あんた、高校くらいちゃんと卒業しないと社会に通用しないじゃない」
奈智が再度馬鹿ねと言いそうなばかりに俺をみる。馬鹿はお前だ。俺という人間の思考読め。だが、こいも利用してやらなければな。
「奈智はそうだな。それでも学校が無用か有用か見極めてこい! そうだな、退学せず、俺はしばらく学校を休んだ方が利口だな」
「なに、言っているのよ! 学校は休まず行かなきゃダメじゃない」
那智は真剣に怒るが事の重大がわかっていないな。自分の常識と知識で限界とみえる。
「いいか? 今までの俺たちの常識は捨てろ。ガチャだけで人事が変わる異常事態なんだぞ。バカ正直に行動していたら、お前の言う路頭に迷うことになる」
「さすが、雷徒君。考えているね。いかに楽して生き延びるか考えている。雇ったのは正解だよ」
さすがは、おっちゃん。俺の思考が読めている。おっちゃんは無駄にダメ人間はしていない。流石だ。それ褒め言葉? 褒めているんだよ。
で、ガチャのシステムを理解し有効利用すればどんなボンクラであろうと運と知恵さえあれば楽に生きていけるのだ。世紀末なのか、極楽なのかは本人次第で過去の世界と変わらない。あとは行動だけだ。
そんなことは学校で教わる事ではないのだ。いや、単に学校がかったるいだけだがな。
「ところで、おっちゃん仕入れの状況は?」
これも、重要。職場があること自体が実にありがたい。そして、把握することが何より率先するべきこと。俺、この職場が今以上に好きになりそう。
「おう! 備蓄もあるが製麺がなぜかガチャのせいでうどんの麺になってな」
今のところ十分と言える。堕落して生きている人間は人間なりの運と知恵がある。見込み通りだよ。おっちゃんは。
「おっちゃんもわりと引きがいいじゃないか。それでも、飲食店としていけるぞ」
「そうか? なんだかラーメン屋としてどうするか? と思っていたが勇気がでたな」
「はあ? ラーメン屋がうどんだしてどうするのお父さん」
奈智はいつだって狂犬。食ってかかる。肉より穀物を食せよ。
「その、うどんすらガチャから出できてこない飲食店も続出するだろうよ。例えば、無機物が発注されたらどうにもならない。そんなことだってありえるんだよ。おっちゃん、試しに俺にガチャで発注させてよ」
「おう、実験か? いいぜ。雷徒君の方が引きがよいかもな」
わかりがいいな。流石はおっちゃん。人を利用することを心得ている。
「よし!」
こんなものがいつの間に現れたのか分からないが発注用のガチャに俺は手をだす。その前に。
「ガチャガール参上なのです!」
やっぱりな。何を触ろうとしても担当が現れるわけだな。どうでもいいけど。
「よう、ちょっと久しぶりか? メッサリーナ」
そこにはエナメル質のセクシーな格好をした娘が空虚から出現した。仕組みはわからない。
「ああ、マスター。なるべく会いたくなかったですが。だって無理矢理……」
「なによ! この女は。無理矢理ってなによ!」
黙れ! 狂犬。噛み付くな!
「うるさいな。ガッツドリンクとかいう飲料を飲ませただけだよ」
那智はキョトンとする。そりゃ知らないよな。
「ガッツドリンクって何?」
「残りがあるからお前も飲むか?」
「お嬢さん、よしてください。何が起きるかわかりませんよ!」
こ、こいつは。マスター以外に真面目に仕事するなよ。
「メッサリーナ、そういう忠告は俺にもしろよな?」
俺はこめかみに筋をたててメッサリーナを睨む。
「ひえー! お許しをマスター」
「ちょっと、やめなさいよ。雷徒」
奈智の奴は庇ってはやるんだな。俺は武闘派ではないので殴ったり蹴ったりしないけどな。
とりあえず、俺はガチャをまわす。派手な音が鳴り警戒音がやたらと響く。もしかして危険なものがでるのか?
「ああ、これはレア演出の一つですね」
また、レアかよ。普通の引きでいいのにな。俺の不器用な能力を憎む。
そして、コトンとカプセルがでてくる。こんな小さなものに食料がはいっているのか? まあいい、カプセルをあける。すると……。
「黒いツブツブだな。これ」
「そうね。何かしら」
「ああ、これはキャビアですよ」
なんで、カプセルから皿が出てくのかは摩訶不思議だが、皿の上にはキャビアがのっていた。しかし、俺はキャビアを映像でしか見たことも無論食ったこともない。それに、こういうのって缶詰だか瓶詰めに入ってないか? まあいい。
「ラーメンの出汁にうどんの麺にキャビアか……。これ、美味いのか? 雷徒君」
*作者はキャビアを食べたことはありません*
ん? 天からの声か? さておき。
「おっちゃん、わからない。だが、こういう時の為にガチャガールがいるんだよ。な? メッサリーナ。食え」
「ひえー! ご無体な」
だが、俺は無理矢理メッサリーナの顔ごとラーメンの器に埋め込む。そして、食しただろう。
「げほげほ。酷いです。マスター」
「そんなことより、味は?」
「味? しょっぱいですが美味しいんじゃないですか?」
「よし、売ろう」
「そうだな、雷徒君」
「この二人はいつもいい加減なんだから……」
嘆息する奈智を無視して俺たちは意思を結託させるのだった。
多分、売れるが。問題は今度客がこれをガチャで引けるか? にかかるな。考えは既にできあがっている。簡単なことだ。
「フフフ」
ほくそ笑む俺をよそに呆れて見ている奈智とメッサリーナがいた。
ここからストックなしなので一話ずつ頑張ります。
短めに完結を目指します。
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