第2話 始まりの時←大げさ
俺がプレイしているアプリゲームについて話そう。え? 聞きたくない? すまん、聞いてくれ。
『アラディアの継承』
特に大したゲーム性でもないが個性的で美麗だけが売りの長年続いたゲームだ。ガラケー時代からある。8~9年は続いていたはず。ご長寿だな。
このゲームで学生として俺は重課金プレイヤーと豪語してもいい。
俺はマイノリティ信者で重課金の一人で存続させている一端といってもいい。他プレイヤーも融資だか有志なのかわからないが金を積まなきゃ終わっている。内容的にはただタッチパネル叩いているだけのただの駄作だけどやめられない。このゲームのコミュの仲間も認めていることだ。
ストーリー聖女(といっても題材は神話や時代の有名人なので聖女なのか悪女かわからないところ)を堕落させて魔女にして微エロ画像を堪能するだけのゲーム。ただのオタクゲームにしてもたいしたことない。オタクってどこからなのかわからないが。まあ、オタクにしておく。自分でも気持ち悪いからな。決してディスっているわけではない。
駄作ゲームなのにやめられない。多分、病気。まずは、聖女カードを手にいれて堕落アイテムを使って魔女化するシチュエーションだけなんだけど。絵がストライクゾーンなんだよな……。
特に(ナチっす☆)って絵師がね。なんだか、ドイツのナチスでも意識しているのか知らんけどね。どこかで聞いたような名前だけどね。偶然だろう。ラーメン屋の若堀奈智ではないだろう。それにあいつは二次元的な創作物が好きではなさそうだしな。
で、不得意なパソコン(スマホもアラディアの継承する為につかっているだけ)いじって本人のコメントを検索するとね、ナチはで話が始まって語尾は〇〇っすで終わるんだよね。(例、ナチは今日も元気にお絵かき中っス✩)まぁ、キャラを演じてはいるんだろうけど嫌いではない。
「うーむ、(ナチっす☆)に親しく話ができるのなら死んでも構わないかもな」
「兄ちゃん、気持ち悪いわ……」
「兄の独り言を盗み聞くお前のほうこそどうかと思うぞ」
こういう、日常世界を舞台にしても物語は異性の兄妹が出てくるのが基本だというのに。出来の悪いこの社会では五歳下の弟が兄弟だ。まぁ、身内に興奮する性癖はないからどうでもいいんだけど。
加えて、弟の方が気持ち悪い。普段は少年の格好をしているがプライベートは女装……。
なんの雑誌か忘れたがモデル(女装)を弟はやっている。まあ、男の娘というやつだ。人気者で稼ぎがいいらしい。だが、金持ちなのに部屋は同部屋だ。
家自体は貧乏だ。しかし、子供部屋を別々にしてくれよ! 男同士でもプライベートあるだろうが! 親め! アホか!
弟の奴は同部屋でも女装服に変える時に気にせず俺の前でも着替える。下着も女物だ……。趣味だか性癖なのか性に悩みを抱いているのかわからんが、女性下着を兄の前で平気で着替えているのを見てしまった兄の複雑な気分をどうにか救ってほしい。
「兄ちゃん、今、ニュースでとんでもない騒ぎになっているけど見なくていいの?」
「はぁ? 歴史上、どんなに非常事態になろうが、人類は全滅していないんだぜ? 日和見で行くが吉。騒ぐな! 凡人」
「ガチャウィルスがどうとか、国際テロだとかクーデターとか超常現象だとか」
「なんだかよくわからん。今日はガチャするから、世の中の同行など興味がない」
ということで、俺は『アラディアの継承』にログインをする。すると、信じられない光景を目にすることになる。
「何、これ……」
「だから、兄ちゃんニュース見なよっていったじゃん」
俺は、突然のアプリの終了とお詫びを目にとるが、こんなマイノリティ達しかやらないゲームと世の中になんの関係性があるのだ? ニュースに出ているの? 俺は、ただ長年遊びなれたソシャゲーの終了に愕然とした。
「二度目、何、これ?」
もちろん、弟に問いかけたところで答などわかるはずもないが、考えに反して弟はかえしてくる。
「厄災の隠蔽でググってみて」
「Google便利だね。ウィキだろうがなんだろうが鵜呑みにしたことないけど」
「おおまかにわかるよ」
「なになに、アプリゲームを装う洗脳アプリサイトの実験が10年前に開始し、その危険性を訴える者もいたが揉み消される。理由は不明。信憑性がうすいからだろうからか? 洗脳というよりかは感染型ウィルスでガチャウィルスあるいはサイコウィルスと名づけている。感染経緯は不明だが、人体と、信じられないことだが社会の仕組みと事象に影響する。その影響とはガチャシステム」
え?
「なに、バカなこと載せているの? わからないわりには詳しいのが変だし」
「兄ちゃん、続き、続き」
弟よ、誘導するな。つうか、再度思うが、我が家は狭いから仕方ないといえ、なんで兄弟同じ部屋なんだ? 不満だ! さておき…。
「で、何々……地殻から天空まで、果ては次元の壁を突き破りガチャガチャがあらゆる商業に関わる企業からはじまり個人商店までにガチャを自動設置する。公共も例外ではない」
何で?
「首謀者、組織団体は不明」
これは、お馬鹿映画の宣伝か?
「つうかな、さっきまでラーメン反骨に働いていたけど、なにもおきてないぞ。飲食店は別なのか?」
豚骨と反骨とかけたネーミングだろうけど、娘以外は反骨精神なし。むしろ、ポンコツ。自堕落な店。質問主の俺が脱線思考しそうなので、弟の話を聞くことにする。
「関係しているよ。動画みる?」
弟はスマホでニュース映像を見せる。つうか、俺も小学生で携帯買ってもらったけどね、なんかさ、小学生でスマホは上等すぎないかな? 生意気。
で、動画からニュースの中継がでてくる。凄いな、俺はアプリゲームやるためしか基本的に携帯を使わないから。こんなことできるのか~! 負けたわ。どうでもいいんだけどね。さておき、内容を視聴するかね。
「おぉ、騒いでいるな。音声がごっちゃでよくわからんけど」
などと、観ているとインタビューにはいる。
『チクショー! バカにしやがって! 俺はな、夜食買いに行ったのに五万かけても欲しいものがでねぇ。挙げ句に風船(コンド〇ム)だと、食えるかよ』
なんだ、コイツは……。
「笑える、確かにコンビニで売っているよな。無機物は食えないな」
「兄ちゃんは大概な性格だよね」
「まぁ、いい加減だな」
「みてよ、泣きながら店員さんとお客さんが喧嘩しているよ」
『どうして、トイレットペーパー売ってくれないんだよ! 切らしているんだよ』
『申し訳ございません。当店は本日午後八時からガチャシステムを導入されまして』
『誰がやったんだよ!』
『申し訳ございません。お答えすることができません』
『なんでだ! おかしいだろ? 責任者呼べ!』
『申し訳ございません。現在原因の対応をしていまして……しばらくは不自由かとおもいますが、設置されたガチャからトイレットペーパーを引き当てるしかございません』
『バカにしているだろ?』
状況が今ひとつわからないが、たしかに馬鹿にしているよな。なんつうか……。
「行ってみようぜ!」
「兄ちゃんなら言うと思った」
「なら、行こうぜ」
この時間で開いているお店はコンビニだけかな。そうとは限らないがコンビニが無難だろう。善は急げ。パニックを善とみなすのは俺の性格。
「ごめんね、兄ちゃん」
「は?」
「僕、ガチャガールに選ばれたんだ」
「ガールってお前は男だろうが」
「僕の美貌わかるでしょ?」
「脳みそに蛆でも湧いたか?」
「ヒドイな~。仕事でガチャの立会人にならないといけないから、身内のガチャは不正疑惑を思わせないためにも居合わせちゃいけないの」
「なに、それ? 何処で雇われたんだ?」
「国際機密」
つうか、お前は何もかもしっている側なんだな。早く教えろよ、こんな楽しいイベント。
まあ、仲が悪いわけではないとはいえ、女装した痛い弟を連れて行くのも、考えてみれば嫌なので単独で行こう。
近くのコンビニの場所はだ。またゴーストタウンの商店街に行くのだ。
また、戻る時間を考えると面倒だから、気晴らしに弟も誘った理由もある。なんの風情もないつまらない街だからな。
「まあ、面白いネタでも拾ってきてやる。待っていろよな」
寝るなという意味。親に相手にもされずに家を飛び出す俺。ゴーストタウンにもあるのだろうか? ガチャシステム。楽しみだな。