2.ミリィ・モチヅキ10歳です!
久しぶりに書くと書き方忘れてます。精進せねば
「ほらっ! 後もう少しで家だよライム!!」
自身の家があるファーブルの門が見え、年相応に見える笑顔を振りまくミリィ。
その方に止まっているスライム--ライムはまるで同調するようにプルプルと全身を震わせる
「朱音お義母さん褒めてくれるかな? ちゃんと言いつけ通り武闘大会で優勝したもんね?」
ニコニコと笑い、プルプルと震えるライムを指でつつきながらながら道沿いを歩いていく。
そしてやっと見えてきた巨大な城壁に囲まれたミリィが住む巨大都市--ファーブルの門に辿り着く。
かつてこのファーブルは廃村だったのだが一人の男が買い上げ、たった15年間でここまで巨大な都市に成長させた。
普通なら近隣諸国や王家が黙っている筈はないのだが、何故か誰も攻めようとはしない。
いや、過去に一度だけその巨万の富を得ようと馬鹿な領主が5000人を率いて攻めたのだがたった一人の男に滅ぼされた。
そう、滅ぼされたのだ。 一発の魔法で全てを薙ぎ払い、そしてその男は何かを取り出して領主の城にめがけて投げつけ、城を爆破した。
その男の恐ろしい未知の魔法に王家や近隣諸国は不可侵を決め込んだ。
寧ろ交流を深めようと積極的に動き、そしてもはや村とは言えない巨大都市にまで成長したのである。
やっと辿り着いた門にはかなりの行列が出来ており、一般人や行商人、依頼を受けて帰ってきた冒険者もチラホラ見える
「相変わらず凄い行列だね~」
ミリィはそんな並んでいる人達を見つめながらスタスタと先頭まで歩いていき、行商人をチェックしている門番に声をかける
「ただいま帰りました! お仕事ご苦労様です♪」
「おう! ミリィちゃんお帰り! 今回の仕事はどうだった?」
門番はそれまで厳しい目で受付チェックをしていたのを緩めてミリィを見つめる
「はい! 無事に完了しました! これから報告に行ってきます!」
「お疲れさん。 そしてお帰りなさい!」
Vサインを決めて中に入っていくミリィに同じくVサインを返しながら改めて行商人に向き直る門番
「なんだねあの少女は! 何でこの大富豪であるトミー商会のワシが厳しいチェックを受けているのにあの少女は簡単に入れ……ヒッ!」
行商人が怒りながら門番に詰め掛けようとすると門番から溢れ出す殺気に口を閉ざす
「あの娘は特別だ。 いいか、このファーブルに来たからには覚えといたほうが良い。 世の中には決して手を出したら行けない家族がいることをな」
門番の有無を言わせない殺気を込めた口調にコクコクと頷く商人
「……チェックは終わったぜ。 ようこそファーブルへ!」
殺気から開放された商人は恐る恐る街に入ろうとするが一つだけ門番に質問をすることにした
「な、なぁ…その手を出したら行けない家族の名前を聞いても良いかな? 今後の為に是非聞いておきたいんだが」
その質問に門番は素直に答える
「モチヅキ家だ。 この家には何があっても逆らうな。 最悪はこの世界が滅びるぞ」
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「♪~♪~♪~」
かなり上機嫌の私は足を速めて家路を急ぐ。 これでやっと条件の一つをクリア出来たのだ。
これなら朱音お義母さんも情報を教えてくれるだろう。
朱音お義母さんから今回出された試練は武闘大会で相手と同じ戦法で闘って勝つこと。
魔法なら魔法、武闘家なら相手と同じ技、中々苦労はしたけど朱音お義母さんに比べたら皆レベルが違いすぎた。
私の動きでも倒せる人達だったから何とかなったけど…… それとも皆手加減してくれたのかな?
そんな事を考えながら手から黄色い果物--バナナと朱音お義母さんは呼ぶ果物を出して皮を剥いてはむっとかじる。
いつの間にかこんな事が出来るようになり、初めてそのバナナを取り出して見せた時は朱音お義母さんは何故か気絶してしまった。
それからと言うもの、朱音お義母さんは私を鍛えるようになった。
朝目覚めると極寒の山にいたり、灼熱の砂漠にいたりといつの間に移動したのか分からないまま魔物と戦わされ、そしてつい先日
「そろそろミリィもパパに会いに行きなさい」
と、今まで一切出てこなかった単語が朱音お義母さんから飛び出した。
私はパパの顔を知らない…… 他の人からも話を聞いたことがない。 どうやらパパの話はこの街ではタブーになっているみたい。
別に悪い人ではないらしいんだけど、何故か皆この話をするとよそよそしくなる。
朱音お義母さんも実の母親ではないそうなんだけど……私にとって朱音お義母さんはお母さんです
「ミリィはパパに会いたい?」
朱音お義母さんが真剣な表情で私に問いかける。 私は… 私は…
「……うん。 会ってみたい。 会ってなんで家にいないのか聞いてみたい」
寂しかった。 他の家族みたいにパパに甘えてみたかった。 でも私にはパパはいない。
だから知りたい。 パパに会って色んな話を聞いてみたい!
私の答えにうんうんと頷き、朱音お義母さんは私の肩に手を乗せる
「なら、探しに行きなさい! あ、そうそう。実はミリィには13人のお義母さんがいるから♪」
「……へ?」
「お兄ちゃんを知ってそうな人……アリスあたりかな? んじゃ、先ずはルナールに…… 嫌、先ずは試練を受けて貰うわ!」
「お、お義母さん?」
「ん~。 そろそろ武闘大会の季節ね。 ミリィ! 先ずは武闘大会で優勝してきなさい! 相手と全く同じ技法でね!」
「話を聞いてーーーーーー!!」
そんな笑いながら複雑だった家庭環境の新たな新事実を聞いて娘はビックリでしたよ?
あの時の事を思い出しながら急に足が重くなってきたのを感じつつ家の前に辿りついた私は
「ただいま!」
と大声で家のドアを空けて中に入りました