1.プロローグです!
帰ってきた……ようやく帰ってきたよ!
ガキンッ! ガキンッ!
剣と剣がぶつかりあう音が会場を響かせる。
一人は騎士姿の男、相対するのは年端もいかない無表情な少女--
会場にいる観客は声を発する事もせず、ただただその闘いを見つめている。
それもその筈、どうみてもひ弱そうに見える少女が騎士姿の男を圧倒しているのだ。その少女は名誉ある武闘大会に初めて参加し、あれよあれよと剣豪、格闘家、魔法使いを全く同じスタイルで打ち負かしてきた
そう、まるで何かの試験のように相手と同じ技法、同じ魔法を使って倒したのだ。相手からすれば侮辱にも値するその行為に最初は気づかなかった観客も徐々に気づきはじめ、初めはその少女にヤジを飛ばしていた輩も徐々にその技量に畏怖、尊敬の念を抱き、いつのまにやらファンクラブまで出てくる始末であった
その愛らしい顔をした少女は決勝戦の相手ーー疲れが見え始めている騎士の男に恐る恐る声をかける
「あの……疲れてる見たいなので……そろそろ終わらせていいですか?」
その言葉に流石の男も頭に血が登る。 まさかこんな年端も行かない少女に気を使われたのだ
「チッ! 舐めんなよガキのくせに…大人の威厳ってもんを教えてやるよ!!」
男は怒りに任せて自身の持てる力を振り絞り剣を目の前の少女に叩き込む!
……が、少女はヒラリと交わし、その開いた横腹めがけて剣を叩き込む!
ドゴン!!
「がはっ!」
そのまま男は闘技場の壁に叩きつけられ、がくりと倒れこんだのを見て審判が声を上げる
「し、勝者! ミリィ・モチヅキ選手!!」
「「「ワァァァァーーーーーーーーーっ!!!」」」
会場を揺るがす大歓声の中、少女は無表情のままペコリ、ペコリと会場中に挨拶をしてその声援を背中に浴びながら控え室に戻り、備え付けの椅子に座ると自分のバッグの中からとある生物--黄金のスライムを取り出す
「……これで一つ目の試練は完了! 後は報告しなきゃねライム♪」
少女は黄金のスライム--ライムにこの大会前から一切見せなかった笑顔を見せる。 その笑顔はまるで少女と言うよりは女神の様に美しかった