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88 学園へのすすめ

 一通り学園への入学の根回しが整ったのでお昼過ぎに彼らを呼び寄せた。

 ダンジョンの一角を改修して作った講堂みたいな部屋だ。

 中に入るとすでに全員揃っている。

 彼らのほとんどは俺への罪悪感と恐怖を合わさったような何とも言えない顔をしている。

 操られていたとはいえ、俺を攻撃した訳だし、俺はこいつらを一瞬で無効化したしな。


「さて、諸君、改めて、俺はスズ・ロゼリアだ。お前らのクラスメイトだった茨木鈴が死んで転生した存在だ。お前達にはあれから数日、この屋敷で待機してもらった。その間に少しは整理出来ただろう。そこで、あの時の様に三つ選択肢をお前らに用意した。一つはここから出て自由に過ごす事」


 つまり、どっか行けって事だな。

 ここから出てどう生きようが俺は関与する気はないよ。

 俺の害になる場合ば別だけどな。


「二つ目は地球に帰る事。ただ、コレはオススメしない。俺が送る事が出来るのはお前達のいた時代から16年ほど経っている。失踪したはずのお前らが突如現れて、しかも歳をとっていない。……ここまでいえばわかるな?」


 まず、平和に過ごす事は出来ないだろう。

 それでも帰りたいなら送ってやってもいいが、どうなっても俺は知らない。

 殺されようがモルモットになろうが。


「そして、最後にこの国の学園に通う事だ。俺はこれをオススメするよ」


 何しろこの世界についていろいろ学ぶ事が出来るしな。

 卒業すれば就職だって出来る。

 まず間違いなくプラスになるはずだ。


「すぐに決められないだろうし、何より情報が足りていないと思う。そこで質問があるなら受け付けるから手を挙げろ」


 そこまで言ってまず最初に手を挙げたのはサヤだ。


「学園ってどんな所なの?」

「そうだな。普通の学校みたいに学問を学ぶのはもちろん、専門的な事だったり、武術や魔術について学んだりする。詳しい事は後日、学園長と面接してもらうつもりなのでその時に聞いてくれ」

「えっと、その学費とかは? 生活費もだけど私たちお金持ってないわよ?」

「学園に入学する者に限っては国から奨学金的なものを出される予定だ。それで生活費も賄えるだろう。もし、足りないと思ったら何処かでバイトするなりすればいい」

「そっか。わかったわ、ありがとう」


 サヤは学園に入学するつもりなのだろう。

 おそらくゼンジローも。

 朱理もだろうな。


「ちなみに、すでにお前達の住む場所、寮は用意されている。近いうちにそちらに引っ越してもらうぞ」


 何時までもここに居座られちゃはっきり言って迷惑だからな。


 次に手を挙げたのは先生だ。


「茨木、その学園とやらに入れば生徒達の安全は保障されるのか?」


 生徒達の安否を心配する先生らしい質問だ。

 やっぱりいい先生だよな。

 教師になるべくしてなったと思う。


「大半の安全は保障するぞ。ただ、この世界は日本に比べて危険だからな。例えば夜に出歩いたり、スラム街に入ったり、冒険者活動なんかをしていて魔物に殺されたりといった安全は保障しない。まあ、そこら辺は自分の責任だな。基本的な安全は保障するよ」


 そう言うと先生は安心したような顔になった。

 まあ、余計な事をしなければ安全だよ。

 むしろ、学園長あたりはこいつらが危険な存在にならない事を懸念している。

 チカラだけは他の人よりも大きいからな。


 次に手を挙げたのは男子生徒だ。


「ここって、イルレオーネ国じゃないんだよな? イルレオーネ国ってどうなったんだ?」


 その言葉によって彼らの反応は二つに分けられる。

「まさか、滅んだのでは!?」って顔と、青い顔だ。

 前者は気絶していた者達、後者は俺が杭を打ち込む瞬間を見ていた者達。


「聞きたいのなら答える。聞きたくない奴は耳でも塞いでおけ」


 そして、俺は答える。

 イルレオーネ国の末路を。

 ゼンジローとサヤに話したほど詳しくはないけどな。


「という訳で王都は壊滅した」


 その言葉を聞いて彼らは絶句する。

 まあ、仕方ないな。


「き、君は……どうしてそんな酷いことを……」


 そして、そんな言葉を口にするのは安定の宮本。


「説明しただろう。見せしめだって」


 アレを見れば異世界召喚なんてしようと思わないだろうからな。

 すればアレと同じ事になる。


「見せしめなんかのために君は人を!!」

「アレによって俺たちの存在が異世界召喚に対する抑止力になった。説明した通り、異世界召喚によって世界がダメージを受ける。何としても阻止しなければならないんだ。それに、俺たちにとって大事なのはそこだが、召喚される人の身にもなってみろ。お前達は集団で召喚されたから心的な安心感があっただろうが、普通には一人、多くても二人だ。いきなり知らない世界に連れてこられて家には帰れない。それどころか戦いの戦力にされるんだ。コレはそんな人たちを無くそうという行為でもあるのだぞ」


 もちろん後半は御託だ。

 実際、知らない人が召喚されようが戦って死のうがどうでもいい。

 今回、彼らを連れてきたのは知り合いだったからだ。

 彼らじゃなければ召喚された者ごと滅ぼしていたかもしれない。


「それでもっ! 人を殺すのは間違っている!!」

「宮本! 止めろ!!」

「そうよ、勇輝、それ以上は止めなさい」


 俺を非難し始めた宮本をゼンジローとサヤが止めに入る。


「ゼンジロー、サヤ、大丈夫だ。そもそも、それをお前が言うのか?」

「え?」


 こいつは本当にどうしようもないな。

 何も理解していない。

 自分に都合がいいように考えている。


「お前、魔王を討伐するつもりだったんだろ? 配下も含めて」

「あ、ああ」

「彼女らは殺してもいいのか?」

「……」

「人じゃなければ殺してもいいのか? 前にも言ったが魔王は魔人の王だ。物語に出てくるような邪悪な存在じゃない」


 まあ、そんな存在といるだろうけど。

 それは人と同じだ。

 人の国と敵対しているだけ。

 国と国とが戦争するのとなんら変わりはない。

 人が勝てば土地を奪い、魔人を隷属させる。

 魔王が勝てばその逆。

 どうしてそれがわからないかな。

 敵対国家の王は最悪の罪人なのだ。

 だから、魔王メーシュはイルレオーネ国にとって最悪の敵。

 殺すべき罪人。

 憎むべき悪。

 イルレオーネ国にとってはそうなのだ。

 それがイルレオーネ国にとっての当たり前で常識なのだ。

 イルレオーネ国という一つの視点から見ればの話だが。

 こいつらはイルレオーネ国によって召喚されたイルレオーネ国にとって都合のいい戦力だった。

 そうではあるが、同時に日本にいた者達なのだ。

 日本の教育のおかげで殺す事、戦争の愚かさは分かっているだろう。

 同時に一視点で考える愚かさも分かるはずだ。

 だからこそ正義感なんて曖昧なものを振りかざして、魔王は悪、自分は正義なんて考えるこいつに腹が立つ。

 自分は選ばれた存在、だから敵対者は悪。

 殺せばいい事をした。

 正義を執行した。

 そう心のどこかで思っているから簡単に惑わさせる。

 それに腹が立つ。

 天使に通じる所があるその考えに腹が立つ。


「それにお前、俺の事殺そうとしたよな?」

「あ、あれは、」

「操られていたから? だから自分のせいじゃない? そんな訳ないだろう。例え操られていたとしても結果的にはお前は俺を殺そうとしていたんだよ」


 宮本は何か言い返そうと口を開くがすぐに閉じられる。

 言葉が見つからないのだろう。

 しかし、それは俺の言葉に納得していない証。


「まあ、お前なら何かと理由をつけて俺を悪者して自分は悪くないって思っているのだろう。いちいち突っかかれるのも面倒だ」


 パチンと鳴らして魔術で空間を広げる。


「決闘で決めよう。俺が勝てばお前は二度と俺に突っかかってくるな。お前が勝てばそうだな……非を認めてイルレオーネ国で死んだ者達生き返られてやろう」

「な、そ、そんな事が出来るのか!?」

「ああできる」


 魂はあるからな。

 そこから情報を取り出して肉体を再生させて生き返られる事くらいなら出来る。


「わかった。やる!」


 そう言って宮本が空間内に入る。

 ……実際に出来るとはいえ死者蘇生なんてまのを間に受けるとは。

 本当に都合のいい事しか信じないのな。


「先生、立会人をお願い」

「あ、ああ」

「ほら、武器だ」


 宮本に武器を投げ渡す。

 こいつらが気絶していた時に回収したものだ。

 後で全員に返却しないとな。


「ルールはそうだな。2分間、俺はお前に攻撃を一切加えない。そして、俺に擦り傷一つでも負わせる事が出来ればお前の勝ちだ」

「なっ!? ふ、ふざけるな!!」

「ふざけてないよ。さあ、始めようか。先生、合図を頼む」

「わ、わかった。それでは……はじめ!!」





次回、スズvs宮本!!

宮本がどのレベルで負けるのかみんなで予想しよう!!

参考までに、宮本は剣道でインターハイ出場。魔力量は進化前のシアンよりも少ない。スキルは……考えていない。発動中、光を纏って能力の底上げとかにしようかな。


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