85 スズの所業
先週投稿するの忘れていたぜ☆
なんと、今回、恋愛要素が!?
「そうだな。俺があの杭を打ち込んだのは見たな?」
コクリと頷く。
杭というには巨大極まりない物だが、遠目に見れば確かに杭だった。
「あれを打ち込んだ事によって王都は壊滅した」
確かに、あんな物を打ち込めば町の一つや二つ簡単に壊滅できるだろう。
「でも、それだけで国は滅びるのか?」
いくら壊滅したのは王都とはいえ所詮は町の一つに過ぎない。
仮に東京が滅んだと考えて、それだけで日本が消えた事になるとは思わないが。
「あの国、というよりこの世界の大体の国は中央集権国家だからな。王都が滅びれば政治が滞るし経済は混乱する。国という定義にもよるが王国は言わば王家の血の歴史でもあるからな。その王家が滅びれば国が滅んだと言えなくもない。直系の王家は滅ぼしたし」
……。
「それに、場合によればすぐにイルレオーネなんていう名前は消える」
「どういうこと?」
「生き残っている領地貴族がそれぞれ自らがイルレオーネの正当な王、あるいは独立して他の領地を併合せんと各地で戦争が起こる。そうなればイルレオーネの名前なんてすぐに消えるよ」
なるほど、当初は国を滅ぼす=国民皆殺しだと思ったがそういうことか。
「ねえ、遠目過ぎで見えなかったんだけど、王都の人たちってどうなったの?」
沙耶が恐る恐ると聞く。
あんな巨大な杭が王都に刺さったのだ。
そこに住んでいた人たちは……。
「かなりの人数が死んだよ」
「そう」
そうか。
そうなのか。
「いろいろ思うところもあるだろうけど、少なくとも王都民はお前達の召喚を願っていたし、生贄になった亜人達も蔑んでいた。あの王達のお膝元なだけあってほとんどの者はロクデモナイ奴らだぞ。王都から逃げようとする際も我先にという奴が大半だったしな」
……。
「ああ、本当にロクデモナイ奴らばかりだ。魂まで腐っている。不味くて不味くて仕方ない。もうちょっとマシな奴らがいれば美味しく感じられるのに」
ん?
なんか、スズの言い方に違和感が。
「え、スズくん魂を食べてるの? その、悪魔的な感じで」
そう、スズが実際に魂を食べているように聞こえるのだ。
「ああ。俺の能力でな。あの時、王都で死んだ奴らの魂を捕食、回収している。それで解析もしてるからな。その魂の味までわかるんだ。ああ、魂って何だっていうのは今度な。それで、その魂の味何だがやっぱり性根が腐ってる奴の魂はマズイな。悪魔の中にそういうのが好きな偏食家もいるけどな。まあ、あれは魂って言うより感情か」
「よくわからないが、何でそんなものを食べる?」
「あんな奴らの中でもマシな奴らはいるからな。逃げ惑う人々の中でも誰かを助けようとしたり、守ろうとしたりするな。そういう奴ほどあの騒ぎで人に殺されているけどこういう奴らがただ死ぬのは忍びない。だから、そういう奴と幼い魂を解析して区別して保護してるんだ。そのうちどこかで転生でもさせようと思ってな」
何だか凄すぎてよく分からん。
ただ、スズは魂を回収したり、転生させようとしたりと超常的な事ができる存在なのだろう。
それと、もう一つ。
「やっぱりスズは優しいな」
俺がそう言うと沙耶もコクリと頷く。
「そうか? 転生させるとはいえ俺の手で殺したようなものだぞ。男も女も子供も老人も。アレだよ。宮本の嫌いな殺人犯。しかも大量殺戮した」
スズが苦笑しながらそう言う。
スズの事情に詳しいとは言えないが、こいつにはあの杭を打ち込むべき理由があったのだろう。
まだよく分かっていないが俺たちのような召喚を防ぐという。
それこそあんな杭を打ち込み、大量殺戮するような結果になろうと。
でも、普通ならそこで終わる。
わざわざ、魂の回収とやらをして転生させようとするのは間違いなくスズの優しさだと俺は思う。
おそらく沙耶もそう思っているだろう。
「スズはやるべき事をやっただけだ。もし宮本が文句を言ってきたら俺が殴ってやるよ」
「あははは、そうか。それはいいな。やっぱりお前はいい親友だな。」
親友か。
その……転生してなおも俺の事を親友と呼んでくれるのか。
「何そんなに嬉しそうにしているのよ」
沙耶はそう言うが嬉しくもなる。
だってスズは俺を孤独から救い出してくれた恩人で親友だ。
こうして再び俺の事を親友と呼んでくれるのが嬉しくてたまらない。
ふと見ると沙耶はふくれっ面をしてスズを見ている。
「いや、俺を睨むなよサヤ」
「別に睨んでませんけど」
「いや、完全に睨んでいるだろ。……はぁ。はいはい、邪魔者は退散しますよ」
スズはそう言って立ち上がる。
……なんでスズが邪魔者になるんだ?
「まあ、俺はもう行くけど二人でごゆっくり。ここはもうイルレオーネ国じゃないからな。魔王討伐に駆り出される事はない。この屋敷にいる限りお前らの安全は俺が保証してやる。だから、安心して過ごすといいよ」
スズはそう言い残して部屋から出て行った。
「ああ、ここは完全防音だから」
そう言い残して今度こそ部屋から出て行った。
「〜〜〜〜〜〜〜!!」
沙耶はそれを聞いて顔を赤くして口をパクパクさせている。
「沙耶どうしたんだ?」
「っっっ!!??」
普段と違う様子だったので肩に手をかけると弾かれた。
「あ、ごめん!!」
「いや、大丈夫だ」
どうやらビックリさせてしまったみたいだ。
まあ、ついこの間まで周囲全てを警戒していたからな。
そうもなる。
沙耶を見ると未だに顔が紅い。
「沙耶、酔ったのか? 顔が真っ赤だぞ」
「え? え、あ、う、うん。そ、その……」
沙耶は俺の顔を見たり、逸らしたり繰り返して、最後に何かを決意したような顔になった。
「ぜ、善治郎、あ、あのね」
「おう」
沙耶はスーハーと息を整えて、
「わ、私ね、善治郎のことが……」
この作者にこの先が書けるとでも思ったか!!