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84 スズとの会話

ふおおおおおお!!日間にランクインしてる。すげぇぇぇ!!ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです。

「なるほどな」

「だから、私達はこれからの事を考えましょう」


 その時、ドアが勢いよく開かれた。


「いよう! 来てやったぞ!」


 ノックもせずに入って来たのはスズくんだった。

 スズくんは善治郎を見て、その後私の姿を見た。


「あ、ごめん。おじゃましました」


 そして、気まずそうにしながら部屋を出てドアを閉めようとした。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


 私は慌ててスズくんの後を追いかける。


「何勘違いしてるのよ!」

「いや、でもゼンジローと音無って」

「違うわよ!」


 私はスズくんの腕を掴んで部屋に引き込む。

 うーー、恥ずかしい!

 別に善治郎とはそんな仲じゃ無いわよ。

 だって、善治郎って鈍いし、いくら私が……はぁ。

 ともかくそんな仲じゃないのよね。


「お前らがいいと言うんだったらいいけどよ。それじゃ改めて、久しぶり、そして初めましてだなゼンジロー、音無。一応再開を祝して酒を持って来たぞ」


 スズくんはソファに座り込み、テーブルの上にボトルとグラスを置く。


「俺達未成年なんだが」

「この国じゃ立派な青年だ」


 スズくんはワインをグラスに注ぎ込む。


「ほら、乾杯しよう」


 そう言って私達にグラスを渡してくる。

 まあいいか。


「善治郎、いただきましょう」

「ああ」


 私達はグラスを受け取った。


「それじゃ、再会を祝して乾杯」

「「乾杯」」


 乾杯して、私は初めてのお酒を飲む。


「何これ美味しすぎ!?」

「なんだこれは!?」


 あまりの美味しさに思わず叫んでしまった。

 人生で今まで口にした中で一番美味しかった。

 実家は結構裕福なので高級食材を口にした事は何度もあるけど、このワインはそれより遥かに上回っている。


「俺特性のワインだ。美味いだろう」

「美味しいすぎるわよ。こんなの初めて」

「まあ、材料も厳選している俺自ら作ったワインだからな。美味くないはずがない」


 スズくんは何でもないかの様にクイッと飲むと、再びグラスにワインを注ぎ込んだ。


「ちなみに、これ一杯で小国くらいなら買える価値があるぞ」

「小国っ!?」


 え、何?

 このワインそんなに高いの!?

 グラスを持っている手が震えてきた。

 善治郎なんて硬直してるし。


「正確には国を差し出してもってくらい欲する物だけどな。それに、俺からしたら数あるワインの一つだ。何時でも作れるし大量に作れる。ほら」


 そう言ってスズくんは何処からともなく何本ものボトルをテーブルに置いた。


「だから遠慮しないで飲め」

「わかったわ」


 私もグラスを空にして追加でワインを注いでもらう。

 このワインの価値にはビックリしたけど、飲まないのはもったいないしね。

 それにいっぱいある様だから、貰えるなら貰った方がいいわね。


「あはは、音無見ろよ。ゼンジローなんてまだ固まっているぞ」

「ふふっ、そうね。善治郎いい加減飲みなさいよ」

「そうだ飲め!」

「ぶっ!?」


 スズくんはボトルを掴んで善治郎の口に突っ込んだ。


「ぶはっ! スズ! 飲むからやめてくれ!」

「はいはい。あ、そうだ、聞きたかったんだけど、そっちで茨木鈴が死んでからどれくらい経ったんだ?」

「そうね、こっちに来る直前で4〜5ヶ月くらいね」

「あー、そうなんだ。俺視点じゃお前らと会ったの16年ぶりくらいだからな。かなり懐かしく感じるよ」


 そうよね、スズくんは転生したんだからそれくらい年齢が経ってるよね。


「そういやさ、俺の叔父、どうなったか知ってる?」

「ああ」

「聞かせて聞かせて」


 そう言えば、スズくん、茨木鈴は叔父家族と仲が悪かったわね。

 私もどうなったか知っているわ。


 茨木鈴の叔父家族は茨木鈴が死んで大層喜んだ。

 茨木鈴によって金も無く、惨めな生活を送っていた。

 まあ、自業自得とは思うけど。

 そんな時、茨木鈴が事故で亡くなった。

 茨木鈴の遺産は膨大で叔父家族は親戚としてその遺産が手に入ると大層喜んでいた。

 でも、叔父家族以外に親戚を名乗る人がたくさんいて、遺産相続の争いが勃発。

 叔父家族は遺産が手に入ればチャラだと思い、色々と多額の借金をした。

 しかし、結局叔父家族は遺産を継げずに多額の借金が残っただけになった。

 その後は知らない。

 家族揃って消えたらしい。


「あはははは、そうなんだ。まあ、そうなる様に仕掛けたからね。ざまぁみろ! 死後の嫌がらせとしていろいろと工作しておいたけど、まさか結果を知ることができるとはね」


 スズくんは笑いながら満足そうにしている。

 そんなに叔父家族が嫌いなのか。

 まあ、そりゃそうよね。

 幼い頃、いろいろとやられてたみたいだし。


「ていうか、実際は現金資産なんて大したこと無いんだよね。精々数十億。もっと価値のある物もたくさんあるんだよね。まあ、それは国に寄贈する事になったのだろうけど」

「数十億って。十分過ぎるわよ」

「そうかな? 今俺はそれ以上の金持っているぞ」

「そうなの?」

「これでも冒険者だからな。魔物の素材を売ったりして稼いでいる」

「へぇー、ランクは?」

「Aランク。Sランクになる事が目的だったけど、もういいや」


 Sランクって最高ランクよね。

 それで、今はAランク。

 あんなとてつもないチカラを持ったスズくんでさえAランクなの……。

 Sランクの人たちって……。


「音無……こっちじゃファーストネームで呼ぶ事多いしサヤでいいな」

「え、ええ」

「サヤは勘違いしている様だけど俺の登録ランクがAランクなだけで、実力じゃSランク相当程度じゃ瞬殺できるぞ」


 あ、そうなんだ。

 いやでも、Sランクって最高ランクよね。

 それを瞬殺って……。


「そもそもSランクになる事自体目的じゃなくて手段だしな」

「手段? Sランクの冒険者になる事が?」

「ああ、シアンと正式に婚約するのにSランクになる必要があったんだ。でも、もっと凄い存在になったからな。必要無くなった」

「……シアンってあの桃色の髪の鬼の女の人?」

「そう。あいつが俺の婚約者。可愛いだろ?」

「そうね」


 スズくんはそう言いながら笑う。


 確かに可愛いわね。

 地球でもいないくらい可愛い。

 イルレオーネ王国のあの王女様よりも遥かに容姿がいい。

 でも、その笑顔を朱理にして欲しかったって思わないでもない。

 少しだけ残念に思う。


「朱理の事か?」

「気づいていたの?」

「あれで気づかないのはそこのクマみたいな奴くらいだ」

「む、失礼な奴だな」


 確かに善治郎は鈍感よね。

 鈍感すぎるわ。

 本当にね。


「いや、事実だろう。まあ、あの時は別に恋人とか欲しくなかったからな」

「そうなの。私からしたら今からでも朱理と付き合って欲しいわね」

「無理だ」


 スズくんはあっけらかんと単なる真実であるかの様に言う。


「そう。まあ、私が人の恋愛についてどうこう言うつもりは無いわ。でも、朱理の話くらいは聞いてあげてね」

「わかってるよ」


 なら、後は朱里の問題ね。


 コクッとワインを飲む。

 とても美味しい。

 こんな美味しい物を落ち着いて飲むのなんていつぶりかしら。

 イルレオーネ国にいた時は常に警戒していたから休まる時なんてなかった。


 ……。


「なあスズ」

「なんだ?」

「あの国は結局どうなったんだ?」


 しばらくワインを飲んでいると善治郎がスズくんにそう聞いた。

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