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81 謁見の間ティータイム

「おつかれ、ラッキーだったな」

「そうじゃの、まさか本当に来るとはの」

「いやはやさすがはスズ様。見事です」


 戦闘が終わったのでとりあえず元クラスメイトの所に行く。


「スズ、お疲れ様です」

「うん、シアンもありがとう」


 シアンを労ってから元クラスメイトたちに目を向ける。

 意識があるのはゼンジロー、朱理、音無他数名か。

 ある程度以上に抵抗に成功していたやつらだな。

 また、煩くなっても敵わないのでちょうどいいな。


「さて、お前たちは操られていたわけだけど記憶にあるな?」


 全員がこくりと頷く。


「操る呪いを受けていたわけだけどちゃんと解呪したから安心しろ。それにもう動けるはずだ」


 神経の乱れは一定時間で元どおりになるようにしていたので元に戻っているだろう。


「さてと、イルネオーレ王」


 くるりとイルネオーレ王の方を向くとイルネオーレ王は虚ろな目で「なぜだなぜだなぜだどうしてこうなった? 異世界人を使って余がこの世の覇者になるはずだったのに。そうかこれは夢か。夢なのだな」などと言って現実逃避しようとしている。


「いやいや、夢なんかじゃないぞ」

「ひっ!!」


 俺がイルネオーレ王の前に立つとイルネオーレ王は怯えたように後ずさりする。


「き、貴様は何なのだ!?」

「最初に自己紹介したじゃないか。鬼神王だと」

「き、鬼神王…だと…」

「そう、この世の頂点、神王の一角。その新たなる神王だよ」


 俺が神王になってから数週間経っているので新たなる神王の存在は最低でも国王なら知っているだろう。


「何故神王が余の邪魔をする!?」

「さっきも言ったけど異世界召喚は俺たちにとって都合が悪いからね。それをやった国に制裁を加える事になったんだよ。その中でもこの国は最悪なんだよ。だから、これからする事は分かるよな?」


 腐っても国王。

 これから起こる事を想定する。

 そして、すべての可能性を考えても自分が助かる事はないという結論に至ったのか酷く怯える。


「た、助けて、助けてください。そ、そうだ!! 妻と子供達をあなた様の供物として差し上げます。どうか、どうか余だけはお助けください!!」


 …………。


「そうだな、とりあえず質問に答えろ。異世界召喚についてどうやって知った?」


 天使を1匹捕獲しているので問題は無いと思うがとりあえずこちらからも聞く。

 予想通りというかなんというか、やはり天使によって異世界召喚を教わったらしい。

 その時にイルネオーレ王は生贄は多いほうがより強い勇者を召喚できるのでは? と思い、大量の生贄ーー亜人30万人ーーを用意して召喚を行った。

 目論見を半分成功、質はともかく、30人もの異世界人を召喚する事に成功した。

 おそらくこれは偶々だろう。


「そうかそうか。なるほど。教えてくれてありがとう」

「おぉ、では?」

「その傷は辛いだろう? 治してやるよ」


 治療魔術で先生に殴られた傷を治す。

 それと同時に神経を乱して動けなくする。


「え?」


 床に座る事さえ出来なくなったイルネオーレ王は仰向けになって倒れる。


「俺さ、奥さんや子供を大事にしないやつ嫌いなんだよね。ましてや自分が助かるために生贄に捧げるとか論外。まあ、その奥さんも子供も俺の敵だから助ける気は無いけど。それでもねぇ? 知りたい事はちゃんと喋って貰ったしお前はもう用済み。そこで死んでおけ」


 バサリと羽織を翻して歩く。

 あいつは制裁時に死んでもらう。

 それまでそこで余計な事をした事を後悔していろ。


「ああ、爺や、先ほどそこの扉からこの場を覗いてすぐに逃げ出したやつがいる。おそらく王子だろう。城の外に出ているようなら始末しておいてくれ」

「ご心配なく。先ほど悪魔に命じて始末させておきました」

「そう。ありがとう」


 これで、主要な王族の死は確定したな。

 あとは制裁だけだ。


「ん〜、とりあえずひと段落ついたな。ユウが来るまで待つか。爺や」

「御意」


 爺やにお願いしてお茶の準備をしてもらう。

 その間にこんな死体だらけの部屋でお茶なんてしたくないので"暴食結界"の応用でこの場にある死体を捕食してこの場を綺麗にする。

 綺麗になる頃には爺やによって大きなテーブルと椅子が出現していた。

 そこに座ってお茶を淹れてもらう。

 うーん、美味しい。

 仕事の合間の休憩には丁度いいな。

 俺の両隣には既にシアンとメーシュが席に着いている。


「ほう、これは素晴らしいな」

「だろ。ウチのダンジョンで摘んだ茶葉を加工して作った紅茶だ。最高の物ではないがこのような場所で即席で飲む分には十分だ」

「これで最高の物ではないとはの。妾が飲んだ紅茶の中で最も上手く感じるのだが」


 まあ、俺は『暴食神(ベルゼブル)』の保有者だからな。

 これくらいは当然。

 ちなみに、ウチにあるダンジョンだが、半分くらい食料生産のために使っていたりする。

 自由に環境とか変えたりできるからな。

 俺のスキルと合わさって最高の食材を生産する事ができる。

 スキルが『暴食神(ベルゼブル)』に進化したので近い内にテコ入れするつもりだ。

 さらに美味しい物が食べられる。


「ところで、いつまでそこにいるつもりだ? さっさと座れよ」


 いつまで経っても椅子に座ろうとしない元クラスメイト達に座るように促す。

 爺やが俺の意図を汲んでわざわざ今起きている人数の椅子を用意したんだ。

 テーブルもそれに比例して大きな物を出しているし。

 座れと言っているようなものなのに。


「まだいろいろと混乱しているだろうけどお茶でも飲んで少し落ち着け。質問があるなら聞いてやるから」


 元クラスメイトたちはどうしようかといった風にお互いに顔を見合わせる。

 そんな中、


「わかったわ。ご馳走になります」


 音無が一番最初に席に着いた。

 音無ってこういう時の思い切りの良さがあるよな。

 音無につられてゼンジローや朱理が席に着き、それから先生や他の人たちも席に着いた。


「えーと、スズくん。私は貴方が来てから何が起こったのかよくわかってないんだけど、いろいろ聞いてもいい?」


 お茶を飲んで少し落ち着いた音無が切り出した。


「ああ、答えられることなら何でもいいぞ」

「それじゃあとりあえず、貴方の側にいる彼らは?」


 ああ、そういえば俺しか自己紹介していないな。


「そうだな、改めて俺から自己紹介をするよ。スズ・ロゼリアだ。前世はお前らも良く知っている茨木鈴だ。この世界に来て間もないからよくわからないだろうが神王の一柱、鬼神王だ」


 改めて自己紹介をする。

 先ほども鬼神王と名乗ったけれど神王の存在自体知らなさそうだから彼らにとって問題なのは俺の前世が茨木鈴という事だろう。


「ふむ、次は妾かの。お初にお目にかかる異世界人の皆々様。妾の名はメーシュ・クラリス。魔王メーシュじゃ」


 メーシュが名乗った瞬間、みんな一斉に噴き出す。

 汚いな。


「え、え? ま、魔王?」

「そうだ。お前らが倒そうとしていた魔王だよ。よかったなお前たち。仮にメーシュに挑んでいたら100%殺されていたぞ」


 メーシュの実力は神王になる前の俺と同じくらいかな?

 こいつらが束になっても傷一つ負わせられない可能性の方が高いだろうな。


「そう身構えるな。お前達がこの国の被害者だとも知っているし妾もどうこうするつもりはない。もっとも、敵対するなら別じゃがの」


 最後に少しだけ魔力を放って脅しかける。

 おそらくはそれだけで彼らとメーシュの実力差がはっきりしている事に気づいただろう。


「では、次は私が。私はスズ様の執事のゼシェルと申します。以後お見知り置きを」


 と、手短に礼をとる。


「それでは最後に私ですね」


 そして、シアンはニンマリと口角を上げて、


「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。私の名はシアン・グローリアス。グローリアス王国の第一王女でございます。そして、スズの妃です」


 シアンは嬉しそうに少し顔を赤らめながら言った。

 その瞬間、ピキリという音が聞こえてきた気がした。


「き、妃?」


 朱理が幽鬼のような顔をしながらユラリと立ち上がる。


「ね、ねぇ、鈴くん、私よく聞こえなかったのだけど。彼女はあなたの妃って言ったような気がするんだけど。どうなのかな?」


 いや、どうなのかなって。


「対外的にはシアンは俺の妃じゃない」


 そういった瞬間、朱理の顔が少し晴れた気がした。

 まあ、でも、


「シアンは俺の婚約者だ」

「え?」

「それにシアンは鬼神王妃だからな。実質的には俺の妃だ」


 だから、シアンが俺の妃と言ったのは半分以上は真実なのだ。


「え、うそ、そんな、だって私鈴くんの…が、せっかく会え……のに、なんでなんでなんで……」


 あ、これはちょっとやばいかも。


「だって鈴くん……うん、そうだよね。うんうんうんうん」


 朱理から徐々に殺気が放たれ始める。

 仕方ないな。


「そうすれば私が「すまんな」」


 トンと朱理の首に手刀を当てる。

 首トンである首トン。

 俺の首トンによって朱理の気は失った。

 このままだったらシアンに危害を加えかねなかったからな。

 見知らぬ人なら魂ごと消滅させていたけどこの子はな。

 気絶させた朱理を横に寝かせる。


「ちょっとヤバそうだったから気絶させた。すまんな」

「……こちらこそごめんなさい。朱理、最近精神が不安定だったの」


 そうなのか。

 やっぱり俺が死んだ事が原因?

 そこまで惚れられていたとか?

 ふっ、モテる男は辛いぜ。

 まあ、冗談は置いておいて、朱理については目覚めてから考えるか。

 朱理とゼンジローと音無以外なら放っておくところだけど。

 後でちゃんと話すべきだろう。


 にしても、よく精神が不安定な状態で呪術の抵抗に成功したな。

 どういうスキルを持っているのだろうか?

 まあ、今度聞けばいいか。



 その後も彼らの質問に簡単に答えて時間を潰しているとユウがやって来た。


「え、どういう状況?」


 謁見の間で倒れている人達の側でテーブルを出してお茶をしているというカオスな状況にユウは困惑しているみたいだ。


「見ての通りお茶だけど?」

「あー、うん。君が神王の一柱だという事がよくわかった」


 何か褒められている感じがしない言い方だな。

 まあいい。


「それで?」

「バッチリ!!」


 予定通りユウは天使を殲滅したみたいだ。

 なら、もうこの国には用済みだな。


「さてと、終わらせるか」


 そう呟きながらガタリと立ち上がると、ゼンジローと音無はビクリと身体を震わせた。


「お、終わらせるってやっぱり……」


 ゼンジローの言葉を受けて俺はニヤリとわらった。


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