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80 元クラスメイト達との戦い

 こうなる事は分かっていた。

 彼らは呪いの影響にあった。

 その精神を支配される呪いの。

 その呪いはそこそこ強烈だったが本来なら異世界人である彼らを操れるほどではない。

 しかし、彼らはその呪いを受け入れていた。

 何かの魔術を受ける際にその呪いが組み込まれていたのだろう。

 この世界に来て数ヶ月のはずなのに彼らはなかなか上手に言葉を使っていた。

 おそらくは魔術によって言葉を覚えさせられた。

 ならばその時に一緒に呪いを受けたはずだ。

 言葉を覚えるための魔術を受け入れると同時に呪いも一緒に受け入れている。

 受け入れた為にこうも簡単に操られているのだろうな。



 眼前を見据える。

 敵対者は前世でのクラスメイトたち。

 異世界人らしく膨大な魔力を感じる。

 宮本が剣を振り上げて突っ込んでくる。

 多少は剣術を習っている者みたいだが、大した技量ではない。

 その程度の技量ならこの世界には五万といる。

 刀を抜き放ち正面から受け止める。

 当然ながら膂力は俺の方が上なのであっさりとそのまま宮本を弾き飛ばす。

 しかし、宮本と入れ替わるかのようにクラスメイト達が攻撃を仕掛けてくる。

 武器で魔術でスキルで。

 俺はそれら全てを回避するなり防ぐなりする。


「ぐ、あああああっ!! 茨木避けろーーー!!」


 先生が槍を構えて突進しながら叫ぶ。

 どうやら先生には自我が残っているみたいだ。

 操られてはいるのだがかなり抵抗に成功している。

 ほとんど力を発揮していないのが丸わかりだ。

 呪いは結構深い部分にまで及んでいるので大したものである。

 他にも何人かは涙を流したり、いやいやと首を振る動作をしたり、妙な所で力が落ちたりとある程度の抵抗には成功している者もいる。


「み、みんな、止めて!!」


 そんな中、操られていない者がいる。

 ゼンジローと朱里と音無だ。

 彼らはその場に座り込み呪いに抵抗している。

 そしてその抵抗には成功している。

 完全ではないからまともに動けないみたいだけどなかなかにすごいな。

 軽く解析した結果、ゼンジローと朱里はスキルによる呪いの軽減の結果抵抗にしているようだ。

 しかし、音無にはその痕跡が見られない。

 素で呪いに抵抗しているのか。

 余程、魔力抵抗と精神が強いのだろう。

 あれだけ深く呪いを受けながらなおも抵抗できるのだから。


「世界の平和を脅かす悪め!! お前はこの俺が倒す!!」


 そして宮本、お前は呪いにかかり過ぎだ。

 まあ、そんな気はしていた。

 何でも都合よく解釈して都合の悪い事は認めない奴はこういう術にかかりやすいからな。

 宮本は剣に魔力を纏いながら全力で攻撃してきた。

 殺す気満々の攻撃である。

 あれだけ人殺しだどうの言っていたのに自分はいいのかな?

 殺されたフリをして正気に戻った時の反応見るのも面白そう。

 まあ、こんな奴にフリでも殺されるのは癪なのでやらないけど。

 宮本の攻撃を受けて弾き飛ばす。

 接近戦を仕掛けてくる奴らにはだいたいこと作業を繰り返している。


 ゼンジロー達も含めて全員で、死を賭して全力を尽くして犠牲を払いながらどうにか下位クラスの魔王に届き得るかどうかといったところ。

 勝ったとしても一人か二人くらいしか残らない。

 この世界では十分すぎる力を持つ者たち。


 弱い。


 よくこの程度で魔王を討伐する気になったものだ。

 まだ全てのスキルの解析はできていないが、どんなスキルを持っていても魔王には届かないだろう。

 ましてやルシアを除いた魔王たちの中で最上位の強さを誇る魔王メーシュにはかすり傷すら負わせる事は出来ない。

 配下の魔人にすら負けるだろうな。


 まあ、この世界に来てまだ数ヶ月だ。

 成長して単独でも魔王クラスの実力を持つ者が現れてもおかしくはないな。

 むしろ聖人にでもなってくれれば大歓迎だ。

 でも、それは未来の話。

 今の時点で魔王、ましてや神王たる俺に勝つのは不可能だ。

 シアンの言霊に屈している時点で明白だ。


 なのに俺は未だに彼らと戦い続けている。

 怪我をさせないための手加減による苦戦?

 呪いの解除に手間取っている?

 全部違う。

 答えは簡単。

 これは苦戦している演技だ。


 上空より迫る3つの存在。

 背中に純白の翼を生やした彼らは上空から奇襲を仕掛けてきた。

 予定通りに。


「やらせはせぬよ」


 奇襲による攻撃が俺に届こうかという間近、俺の影よりメーシュと爺やが飛び出して攻撃を防ぐ。


「ふっ」


 そして、俺はゼンジローらも含めて一瞬で全員を切り裂き、一箇所に吹き飛ばした。

 切り裂く際に解呪と念のため神経を乱してしばらく動けないようにしておく。


「シアン、彼らを守れ」

「わかりました」


 シアンに頼んで彼らが先頭に巻き込まれないように側で結界を構築してもらう。


「罠でしたか」


 俺に奇襲してきた存在、天使がポツリと言う。

 天使の言う通りこれは罠だ。



 俺たちはある計画を立てていた。

 この国は30名もの異世界人を召喚する事に成功させた稀有な国だ。

 それによって天使どもの世界の封印が解けるのがかなり早められたので天使はそれを調べる為にこの国にいるはずだ。

 そこで罠を仕掛けた。

 最近誕生した新たなる神王。

 強大な敵の出現は天使にとって見過ごすことはできない。

 そして、その神王がこの場に現れた。

 しかも、異世界人に苦戦している。

 ならば討ちとるチャンスなのでは?

 天使はそう思うはずだ。

 なので俺は監視&奇襲できるように城の上を無くした。

 俺以外にはシアンしかいないように見せる為に、爺やと血影を操る魔王であるメーシュを俺の影に隠した。

 俺以外にはシアンしかいないうえに、異世界人に苦戦している俺を見た天使は予想通りに俺に奇襲を仕掛けてきたというわけだ。

 天使を始末する為に計画した事だけど、来ればラッキー程度の事だったけどちゃんと来てくれてよかった。


「ま、そういう事だ。遺言は無いな? それじゃあ死んでもらう」

「下等生物が戯言を。ここで貴様を討ち取り我が神に捧げる!!」


 ちょうど、3対3なので一体ずつ相手にする。

 一体くらいは捕獲してルシアの土産にするか?

 うん、そうしよう。

 という事で俺が相手する天使の羽を捥いで、ついでに四肢も捥いで、魔力もあらかた吸収して、簡単な封印を施して、最後に『暴食神(ベルゼブル)』で捕食する。

 ある程度の相手だと生きたまま捕食できないからな。

 ちゃんと弱らせる必要があった。

 まあ、それでも雑魚ではあったのでほぼ一瞬で済んだけど。

 天使の一体を捕獲した頃には、メーシュは血影の槍で串刺しにして天使をすでに倒していた。

 さすがは魔王、かなり強い。

 そして、爺やが相手していた天使といえば、


「まさかこれほどとは。やむをえない。ここは退く」


 何がやむをえないだ。

 天使は既にボロボロだ。

 さらには仲間が殺されて予想以上に俺たちが強く、殺すのは困難だと判断したのか逃げ出した。

 これも予定通り。

 爺やが手加減して態と逃した。

 この距離からでも逃げる天使を始末する事など容易い事だ。

 それはしないけど。

 逃げ出したあの天使には監視がついている。

 最強の勇者であるユウの監視が。

 逃げる天使が逃げた先にさらに天使がいる可能性が高い。

 それらを殲滅するのがユウの役目だ。


 こうして計画通りに天使を始末する事ができた。


短編「公爵令嬢はダンジョンマスターに拾われる」を投稿したのでこちらもよろしく(^_−)−☆

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