78 元クラスメイト達
ゼンジローを筆頭に「茨木くん!?」「茨木!?』「生きていたのか!?」「なんでここに!?」などなど、元クラスメイトたちが口々している。
もちろん担任の先生も。
(スズ殿、知り合いか?)
爺やと同じく俺の近くで隠れているメーシュが質問してきた。
(ああ、前世での学校の知人だよ)
メーシュに彼らは俺が転生する前の知人で、おそらく転移時の時間のずれから俺が死んだ直後に呼ばれたのだろうと答える。
(ほう、それはまた偶然じゃの)
メーシュが驚いている。
まあそうだよね。
再会するとか信じられないほどの確率だし。
俺も驚いている。
事前に知ってはいたけどそれでも驚いている。
「このままだったら喋れないな。シアン頼む」
「わかりました。"静まりなさい"」
シアンがそう言うとピタリとみんな口を閉じた。
「さて、静かになったな。みんな久しぶりだな。そしてはじめまして。俺の名前はスズ・ロゼリアだ。よろしく」
「す、ず、ほ、ん、とお、にす、ずな、のか!?」
みんな口を閉じている中、ゼンジローだけが何とか口を開いて話しかけてきた。
「おお、ゼンジローやるじゃねえか。シアン、お前の言霊に抵抗しているぞ」
「ええ、いくら異世界人とはいえ驚きですね」
防御系のスキルでも持っているのかな?
それでもなかなかにすごいな。
「さて、自己紹介も済んだし喋れるようにしてやる。口々に喋られても困るしそうだな、俺に何か質問があるならゼンジローと朱理と音無と先生と後一人にしてくれ。それじゃ、シアン」
「ええ、もう解除しています」
「だってさ、ほら、話していいよ」
「鈴、お前、鈴なのか?」
最近にゼンジローが口を開いた。
うーん、どう答えようかな。
「一応そうかな。俺は茨木鈴が死んで転生した存在だ。そしてこの通り人間じゃない。それに今は茨木鈴じゃなくてスズ・ロゼリアだよ」
「鈴くん! 本当に鈴くんなのね!?」
今度は朱理が前に出てくる。
「俺の事を茨木鈴と思うかどうかはお前達次第だよ。まあでもさっきも言ったけどそうだね」
「よかった。ぐすっ、本当によかった。生きて、生きてまた出会えた」
朱里は座り込んで泣き始めた。
うーん、彼女は俺の事を茨木鈴と見ているってところかな。
たぶん朱里は俺の事好きだっただろうし。
死んだはずの俺も会えて嬉しいのだろう。
まあ、残念ながら俺にはシアンがいるけどな。
可哀想ではあるが、だからってシアンを捨てる気は無い。
「朱里、良かったわね。それで茨木くん」
今度は音無が発言してきた。
「スズかロゼリアって呼んでくれないかな?」
「わかったわ。それじゃあスズくん、貴方は転生してこの世界で生まれたのよね?」
「そうだ」
「そう、だったら私達よりもこの世界に詳しいと思ってもいいのね?」
「ああ、何だったらそこで跪いているイルレオーネ王よりも詳しいぞ」
「そう。だったら私達は地球に帰る方法はあるのかしら?」
たぶん、これは召喚されたみんなが一番聞きたい事だろう。
帰還するために頑張っている者もいるかもしれないし。
「あるぞ」
「本当!?」
「ああ、ただし、お前達のいた世界から17年は経っているだろうけどな」
「え?」
音無は俺の話を聞いて硬直した。
音無だけではない。
みんな硬直している。
簡単な話だ。
俺は先ほどの異世界召喚の術式を調べた時に過去に繋がっていると判明した。
その時についでにその異世界、地球の座標も調べた。
暇があれば地球に行こうかと思って。
俺なら世界の壁をどうこうしなくても地球にまで行く事ができる。
そこで、この世界と地球の時間関係を簡単にだが調べた。
結果的にはこの世界から行ける地球は俺が死んでから17年の時が経っている事が判明した。
俺が行ける地球はその時間軸だけだ。
つまり、過去の地球からこの世界に来た音無達は元の時間軸の地球に帰る事ができないって事だ。
「う、うそだ!」
いや宮本、うそだって言われてもな。
俺に嘘をつくメリットは無いぞ?
「だって、王様は帰れると言ったんだぞ!! 魔王を倒してその城の書庫には帰還の方法が記されていると」
「お前、そんな話信じたのか? バカじゃねーの?」
「な、に?」
「そもそも今、この世界に地球に行く事ができるのは俺しかいない。魔王の城なんかに地球に行く方法が記された物なんて存在しないよ」
(だよなメーシュ?)
(そうじゃのそんな物存在せん。と言うスズ殿は地球に行く事ができるのか?)
(ああ、あの召喚陣から地球の座標を調べる事に成功した)
(そうか、じゃったらユウにも知らせてやってくれ。あやつは地球に帰る事を諦めておったが心のどこかでは帰りたいと思っているからの)
(わかった。約束しよう)
ふむ、これでユウキと会う理由が増えたな。
俺も同郷の好で話がしたかったし。
「まて、どうしてお前がそんな事を知っている!?」
「そんなの決まっているだろう。おそらくお前らが倒せと命じられている魔王と知り合いだからだ」
知り合いって言っても会ったのは今日が初めてだけどな。
「なっ!?ど、どうして君は魔王なんかと知り合いなんだ!?」
「まあ、いろいろ理由があるんだが割愛しよう。どうせお前は俺が悪たる魔王と一緒にいる事に疑問を持っているんだろ? くだらない。ゼンジロー、音無」
俺は宮本を放っておいてゼンジローと音無に呼びかける。
この2人がおそらく一番冷静なので話しやすい。
特に音無。
「お前らが召喚された時に魔王に戦争を仕掛けられているこの国を救うため、邪悪な魔王を滅ぼせって感じに言われたんじゃないか?」
「ああ」
「ええそうよ」
「やっぱりな。言っておくが魔王=悪とかじゃないぞ」
「どういう事だ!? 魔王は世界を滅ぼす存在だと言っていたぞ!?」
「勇輝、貴方は少し黙っていなさい」
音無が宮本を睨みつけて黙らせる。
「ごめんなさいスズくん。話を続けて」
「魔王と言うのは簡単に言えば魔人や魔物の王様だ。つまりちゃんと国を持って王として君臨している。確かに人と敵対している魔王もいるが、それは人の国同士が戦争しているのとあまり変わらない。普通に人の国と貿易している魔王だっている。おそらく、お前達が召喚されたのは戦争で使える戦力が欲しかっただけだろう」
「なっ!? そうなのですか!?」
先生は跪いているイルレオーネ王を睨みつける。
「騙されるな勇者達よ!! その者は魔王の手先である!! 殺してしまえ!!」
シアンがイルレオーネを喋れるようにした瞬間、イルレオーネ王は喚き始めた。
「黙れ」
「ひっ」
俺は意図的に覇気を放ちながらイルレオーネ王に言い放つ。
鬼神王だし"鬼神覇気"ってところかな。
「なぜこいつらを召喚したのか正直に答えろ。さもないとお前には地獄が待っている」
俺は覇気を放ち睨みつけながらそう言うとイルレオーネ王は怯えながら答えた。
異世界人の勇者を利用して、魔王との戦争に勝って領地を支配しようとしていたこと。
さらに、その後他の国をも支配しようとしていたと話した。
「だってさ先生」
「お、お前ーー!! 俺の生徒達に!!」
イルレオーネ王の話を聞いた先生は激怒してイルレオーネ王を殴り飛ばした。
やるじゃん。
「き、貴様! 王たる余になんという事を!?」
「黙れ! 生徒達を戦争の道具にしようとしていただと!!」
「ぐっ、ぎあっ、や、やめっ」
先生はイルレオーネ王の顔をボコボコに殴る。
「先生、その辺で」
俺は玉座から立ち上がって先生の拳を止める。
「茨木……」
「だから、茨木じゃないって、まあ今はいい。こいつにはまだ少し聞きたい事があるから生かしておいてくれ」
「……わかった」
先生を止めて俺は再び玉座に座る。
「ちなみに、メーシュ…魔王が言うには戦争はいつもこちらから仕掛けているらしいぞ。他に質問はないか?」
元クラスメイト達は超展開にどうすればいいのかわからないみたいだ。
質問は山ほどあるのだろうが何を言えばいいのかわからないのだろう。
「何を質問すればいいのかわからないのかな。だったらそろそろ俺がここに来た目的を話すとしよう」
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さあ、さあ!!(迫真)