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76 神王のお仕事

「スズ、完成したのじゃ!」


 バァン! とドアを勢いよく開けてアルマがやって来た。

 どうやら仕事に必要な道具が完成したらしい。

 その仕事についてだが、数ヶ月前、別大陸で異世界召喚が行われた。

 なんと、30人も召喚されたらしい。

 そのせいでとても厄介な事になった。


 異世界人がこちらに来るのは二つの理由がある。

 一つは、時空の歪みによって偶然やって来る。

 もう一つは、人為的な異世界召喚だ。

 この異世界召喚は俺たち神王にとっても、世界そのものによっても問題がある。


 異世界召喚は世界の壁を無理やり開けて召喚するのだ。

 その際に世界がダメージを受ける。

 一人や二人なら問題ないが、30人も一気に召喚されるのは問題だ。

 30人も召喚するほどの大きな穴を世界の壁に開けたのだから。

 聞けば一瞬世界が崩壊しかけたらしい。

 その時に神王とアルマがなんとか修復したとか。


 異世界召喚の問題はもう一つある。

 先ほど世界の壁を無理やり開けると言ったが、その時に天使どもの世界の封印にも影響が出るのだ。

 その影響によって封印が弱まるらしい。

 最近、世界各地で異世界召喚が盛んらしいのだが、ルシアがゼルエルから得た情報によれば天使どもが異世界召喚のやり方を伝えてるのだ。


 天使どもは異世界召喚をたくさんさせて封印を弱めたいのだろう。

 ゼルエル以外にも何柱かこちらにいるらしい。

 そいつらを殺す事が俺たち神王の仕事の一つとなっている。


 という事をアルマから改めて説明をしてもらった。


「そこで、スズの出番じゃ。実際に召喚された場所から世界の壁が完璧に修復されたのかを確かめるのと召喚に対するお仕置きじゃ」

「アルマも来るのか?」

「うむ。ルシアにスズをサポートするように言われての。自慢じゃないが妾はルシアとレヴィアには逆らえんのじゃ!」


 本当に自慢じゃないな。





 アルマの転移で別大陸に向かう。

 俺とアルマ以外にはシアンと爺やを連れて行く事にした。

 シエルは今、ちょうどイルミスの所に行っている。

 セレスもシエルに同行しているので、屋敷に誰もいなくなった。

 ゴーレム門番もいるし、結界も構築しているので防犯上は完璧なので問題はない。


 アルマ達と転移で向かった先は30人を召喚した国、ではなく、その国の近くのとある魔王の所だ。


 転移するとそこには二人の男女がいた。

 女の方は銀髪赤眼の16歳くらいの少女だ。

 彼女が吸血鬼の魔王、魔王メーシュ・クラリスである。


「久しいのアルマ、そして貴方様が新たなる神王、鬼神王様かの?」

「ああ、スズ・ロゼリアだ。お前が魔王メーシュだな?」

「そうじゃ、そして妾の隣にいるこの男が……」

「初めましてだね。ユウ・クラリスだよ。メーシュの夫だよ」


 メタリカの隣にいる黒髪黒目の俺と同い年くらいに見える少年はユウ。

 彼は異世界人だ。

 おそらく日本の。


「スズって呼んでもいいかな?」

「いいよ。俺もユウと呼ぶけどいいな?」

「もちろん」


 結構気さくな人みたいだ。


『ところで、ユウの出身は日本?』


 俺がユウに日本語で話すとユウキは目を開いた。


『まさか、君も?』

『ああ、俺も日本出身だよ。日本からの転生者だ』

『まじで!?』

『まじで』


 ユウはとても驚いている。

 そう言えば、ルシアにも話したがあいつにも驚かれたな。

 ルシア曰く、異世界人がこちらに渡って来る時、召喚なら確実に渡って来る事ができるが、時空の歪みは違う。

 大半の者は時空の歪みで存在する事に耐えられないで死んでしまう。

 それに耐える事に成功してこちらに渡った時、異世界人は大量の魔力とユニークスキルを手に入れるとの事だ。

 そんな時空の歪みに魂だけで乗り切った俺はかなり異常との事だ。

 とてつもなく強靭な魂だったのだろうと言われた。

 まあ、超人って言われてたくらいだからね。


「ユウは召喚だよな?」

「そうだよ」


 聞けばユウは今から約600年前に召喚されたらしい。

 異世界人の勇者として。

 そして、その召喚した国と言うのが今回30人も召喚した国だ。


「ろくでもない国だな」

「ほうとうにね。まあでもおかげでメーシュと出会えたかな」


 ユウは同時すでに魔王であったメーシュと戦わされた。

 ユウは途中、イルミスと出会い、真なる勇者としてメーシュと何度も戦った。

 何度も何度も戦い、いつの日からか二人に恋心が芽生えた。

 そして、ユウは自身を召喚した国、イルレオーネ王国を出てメーシュが魔王として治めているこの国に移ってメーシュと結婚したらしい。



「なるほどな、二人はそのイルレオーネ王国を滅ぼそうとしなかったのか? お前らの実力だったら一人でも可能だろ?」

「まあの。だが、あの国には残ってもらった方が都合が良くての。たびたび戦争を仕掛けてくるのでな」


 イルレオーネ王国はたびたびこの国に戦争を仕掛けてくるらしい。

 メーシュはそれを利用して兵達を鍛える事に利用しているのだ。

 イルレオーネ王国程度との戦争で死ぬような者は天使大戦でも死ぬので必要ないのだろうとの事だ。

 結構鬼畜だな。


「さてと、妾達もスズ殿をサポートせよとルシア様から言われていての。そろそろイルレオーネ王国に向かおうと思うのだが良いかの?」


 顔合わせも終わったので早速イルレオーネ王国に向かう事にした。

 今度はユウの手によってイルレオーネ王国に転移する。

 転移先はイルレオーネ王国の王城だ。


「警備ガバガバ過ぎない?」


 転移で王城に乗り込めるとか密偵とか送り込んでくださいって言っているような気がする。

 いや、一応転移阻止の結界とか構築されているんだけど微妙というか、グローリアス城に比べると雑過ぎる気がする。

 ユウの実力もあるのだろうけどいくら何でもこれは……。


「まあ、楽だから良いじゃないか。」

「だね。爺や案内頼む」

「お任せを」


 俺達は爺やの案内に従ってとある一室に向かう。

 警備の兵とかはって?

 ユウの魔術で俺たちの気配を消しているので見えないのだ。

 警備の感知能力が足りていないというよりユウの魔術がすごいのだろう。

 俺達は王城の中を普通に歩いた。


「ここでございます」


 さすがに案内された部屋の前には見張りがいたので爺やがパパッと消してから入ると、そこには巨大な魔法陣が描かれていた。

 これが、異世界人召喚術式かな?


「じゃあさっそく始めるか。アルマ、ユウ、サポートを頼む。シアンと爺やとメーシュは少し離れていてくれ」


 俺とアルマとユウは魔法陣に触れ、この魔法陣から逆算して世界の壁に異常がないか解析する。

 世界の壁に干渉できるのは異世界召喚を除いて俺達オーバースキル保有者だけだ。

 俺もアルマも保有しているので問題ない。

 さらにはユウもオーバースキルを保有している。

 二人のサポートを受けてじっくりと時間をかけて解析する。

 ……これは過去に繋がっていたのか?

 あーだからあいつらがいるのか。

 なるほど、それでもすごい確率だな。

 しかし、過去に繋がるとは。

 それほど大きな穴が空いたって事か。

 ……うん、ちゃんと修復されているな。

 しかし、これは酷い。

 本当に世界が崩壊しかけたじゃないか。

 きっちりお仕置きしないとな。


「ふう、ありがとう。ちゃんと修復されているみたいだ」


 俺達は顔を上げる。

 汗ひとつかいていないがけっこう疲れた。


「俺はこれからこの国の王の所に行くけどアルマはどうする?」

「妾はイルミスの所に行くのじゃ。すこしシエルの様子を見たいのでな」

「そうか、じゃあ、シエルの事少し頼んだぞ」

「うむ。任せよ!」


 アルマはフッと転移して消えていった。


「後は計画通りにしようか」

「わかった。それじゃ僕はいってくるね」


 今回の騒動を利用して、先ほどとある計画を立てた。

 上手くいけばラッキー程度だけどしないよりはマシだろう。

 その為にもユウには少し外に行ってもらった。


「じゃあ、踏ん反りかえっているであろう王の所に行きますか」

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