幕間 篠原善治郎の驚愕その2
「お疲れ様」
今日の訓練を終えて部屋で休んでいると沙耶がやって来た。
「何か用か?」
「用が無ければ来ちゃだめなの?」
そんな事は無いけど、女一人で男の部屋に用も無いのに来るのはどうかと思うぞ。
「冗談よ。例の件で話しに来ただけよ」
沙耶はポスンとベッドに座る。
今の沙耶は制服ではなく、ローブを着ていて魔法使いのような格好をしている。
とんがり帽子は被っていないが。
俺はシャツにズボンといった格好だが、近くには鎧と剣と盾が置いてある。
俺たちがこの世界に来て早2ヶ月が経った。
この世界に召喚された俺たちはでっぷりとした王様に合わされ、この国を、この世界を救って欲しいとお願い、いや、命令された。
何でもこの国の隣に魔王の国があるらしく、今は戦争中らしい。
そこにいる邪悪な魔王を倒すために異世界の勇者を召喚したのだと言う。
異世界人は強く、その勇者ならば邪悪な魔王を倒せるはずだと王様は偉そうに言った。
高校生にそんな事ができるはずがない。
ほとんどの者は嫌がり、帰りたいと言ったが、王様は魔王城の書庫になら帰還の方法が記された書物があるはずだと言った。
そう聞いて何人かは帰還の希望を持ち始めたが、それでもいきなりわけの分からない場所に連れてこられて魔王を倒せと言われて戸惑っている者がほとんどだ。
「皆、ここで絶望していてもだめだ。王様だってきっと、どうしようもないから俺たちを読んだんだ。俺は戦おうと思う。この世界の人達が魔王の手によって滅ぼされるかもしれないんだ。俺はそれを見過ごせない。それに、魔王を倒せば帰還の方法を知る事ができるんだ。だから、俺は戦うよ。それに、さっきから力が漲って来ている。王様の言う通り俺達は強い。きっと皆で力を合わせれば魔王にだって勝てるよ。俺達が世界を救うんだ!!」
そんな中、宮本が妙に正義感に溢れた演説をした。
最初は自分一人で戦うみたいに言っていたのに、なんで最後は全員で戦う事になっているんだ?
しかし、皆自分の力が溢れている事に気付き、宮本に賛同しだした。
そして、勇者が誰かを調べるためにこの国の国宝である聖剣を俺たちに抜かした。
聖剣の持ち主が勇者という事らしい。
まず、最初に宮本が聖剣を抜いた。
すると聖剣から光が漏れだした。
「これは、あなたが、貴方様が勇者なのですね。勇者様、貴方様のお名前は?」
「宮本、いや、ユウキ・ミヤモトです」
「ユウキ様、素敵なお名前ですね。勇者ユウキ様、どうか我らをお救いください」
「まかせてください。必ず俺が世界を救ってみせます」
宮本は同行した第一王女ににっこりと微笑んだ。
その後、俺達は魔王を倒すための訓練を始めた。
王様の言った通り、俺達はこの世界の人達よりも強いらしく、一般的な騎士は相手にならなかった。
身体能力が高いのはもちろん、魔力も高く、何より全員ユニークスキルを保有していた。
俺は『守護者』という守る事に特化したユニークスキルを保有している。
そして、城での訓練以外に、王都の近くにダンジョンと呼ばれる魔物が大量に生息する物があって、そこで実戦訓練をしたりして2ヶ月過ごした。
「やっぱり?」
「ええ、いろいろときな臭いわね。逃げる準備だけはしておかないと」
クラスメイトの中には宮本と一緒になって世界を救うんだ! としている者と戦う事を拒否している者もいる。
力を得たからと言って急に戦える者なんてほとんどいないだろう。
命がかかっているのだから。
中には物語の人物になったかのように思っているのか、自分は死なないと思っている者もいる。
確かにダンジョン内の魔物は弱いが、あれが世界的に見てどれだけの位置にいる魔物なのか分からない。
いつか、自分より強い魔物に出会った時に死ぬかもしれない。
戦っている者達の中には自分の方が強いと、自分死ぬわけないと思っている者も少なくなく見える。
その筆頭が宮本だ。
それで俺と沙耶だが、死なない様に力をつけるため必死に訓練をしている。
そして、この国が俺達を使い捨て用としているなら即座に逃げる事ができる様に準備してしている。
俺は、はなからこの国を信じていない。
この国がどの程度俺達の事を思っているのかを調べる必要があった。
そこで、魔術師の適正の強い沙耶が魔術の研究として本を漁りながらこの国について調べてもらっているのだ。
それと、もし逃げだす事になった時のためにこの世界についても調べてもらっている。
あまり、この国を疑っている事を知られたく無いので、この事に関して動いているのは俺と沙耶だけだ。
他にもそんな人達がいるのかもしれないが知らない。
できれば皆で逃げたいが宮本なんかは聞く耳持たないだろうな。
「あと、朱里の事が心配ね。あの子、こっちに来てから茨木くんみたいに強く生きるんだって言って必死に訓練したりダンジョンに行ったりしてるけど、まるで死にたがっているようにしか見えないわ」
「そうか」
「知ってる? あの子って回復系のスキルを持っているのよ? それなのに前線で剣を振るって傷ついては回復して。戦乙女って呼ばれているそうよ」
沙耶はとても心配そうに言う。
俺から見ても佐藤さんは戦って戦って戦って、いつか死ぬ事を望んでいるようにしか見えない。
「鈴が生きていればな」
「そうね。茨木くんなら無傷で魔王とか倒してくれそうね」
「確かに」
この世界に来て強くなったけど、それでも地球にいた頃の鈴に勝てるビジョンが思い浮かばない。
そんな鈴がスキルと魔力を手に入れたら誰の手にもおえなさそうだ。
それこそ魔王程度なら一蹴してしまうかもれしない。
俺と沙耶は雑談しながらこれからの事を話した。
それから数日後、俺達は再会した。
くっ、誰と再会するんだ!?(棒読み)




