表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/138

幕間 篠原善治郎の驚愕その1

「じゃあな」

「ああ、また明日」


 俺は鈴といつも通り一緒に帰っていた。

 別れ道で鈴と別れ、家に帰宅する。


 先月、佐藤さんが攫われるといった事件があった。

 俺たちは事情聴取をされたがその日のうちに解放された。

 鈴はしばらく学校に来なかった。

 それでも数日後には、まるで何事も無かったかの様に登校してきた。

 一応、鈴の事は他言無用と言われている。

 なので鈴が人を殺した事を知っているのは、あの時倉庫にいたメンバーだけだ。

 それでも10人くらい、クラスの3分の1は知っている。

 その10人のうち大半の人は鈴とどう接したらいいか分からないようだ。

 ほかの約20人も変な空気を感じ取ってか同様している。


 そんな中、俺の学校生活に多少の変化があった。

 鈴とはいつも通り一緒にいる事が多い。

 あんな事があろうと鈴は俺親友なのだ。

 そして、佐藤さんと音無さんが一緒にいる事が増えた。


 佐藤さんと音無さんは宮本と一緒にいる事が多かった。

 音無さんは宮本と幼馴染らしく、音無さんと仲の良い佐藤さんも一緒にいる機会が多かったらしい。

 しかし、あの事件から宮本との仲が、特に音無さんは宮本を無視するようになった。

 それで、何故か佐藤さんと音無さんは俺たちにと一緒にいる事が多くなった。


「ねぇ、ねぇ、茨木くん。鈴くんって呼んでもいい?」

「別にいいけど」

「じゃあ、私の事は朱里って呼んでね」

「わかった」


 昼休みの弁当なども一緒に食べる事が多くなり、このような会話があった。


 鈴はモテる。

 異常にモテる。

 それでも人には好みがある。

 佐藤さんと音無さんとかは、他の女子生徒みたいに鈴を見てきゃーきゃー言ったりはしていなかった。

 たまに鈴と話す時も普通に接していた。

 しかし、あの事件を経て、佐藤さんの様子はその鈴の事が好きな女子生徒のそれと同じ、いや、それ以上である。


「(なあ、佐藤さんって)」

「(バカッ! 察しなさい!)」


 音無さんに聞くとやはりそう言う事らしい。

 周りを見ると鈴のファンの女子生徒達が血の涙を流しているかの様に見える。

 ちょっと怖い。


「(わかったら朱里の事手伝ってあげなさいよ!)」

「(わかった)」

「(あら、ずいぶん物分りがいいわね)」

「(鈴のあの瞬間を見て、それでも好きなやつがいるんだ。応援してもいい)」

「(そう。わかったわ。これから一緒にいる事が多いだろうし私の事は沙耶って呼んでもいいわ。わたしは善治郎って呼ぶわね)」


 何故か、音無さんの事を沙耶と呼ぶ様になったりもした。

 そんな感じで少し変わったけど、いつもの日常だった。




 まさか、あんな事になるなんて思いもしなかった。




「今日未明、○○で鉄骨落下事故が発生。茨木鈴、16歳が下敷きになり病院に搬送されるも間もなく死亡が確認されました。この少年は……」

「は?」


 家に帰り、夕食時に何となくテレビをつけるとニュースがやっていた。

 そのニュースでは茨木鈴という16歳の少年が死亡したと報告されていた。

 まさか、別人だよな?

 画面が変わり映される顔写真。

 それは紛れもなく鈴の写真だった。


 うそ、だろ?

 銃弾をナイフで切った奴だぞ?

 あんな殺しても死ななさそうな超人みたいな奴だぞ?

 それが、簡単に、鉄骨が落ちたくらいで死ぬ様な奴じゃないだろう?

 なあ、嘘だろ?


 俺は鈴が死んだとされるニュースを信じられなかった。

 鈴は簡単に死ぬ様な奴じゃないと思っていた。

 思いたかった。




 しかし、現実は非情だ。

 鈴の葬式が行われた。

 たくさんの人が鈴の葬式にやってきた。

 クラスメイト、学校の先生はもちろん、鈴の店でバイトしていた時に出会った偉い人達もたくさん来た。

 大企業のトップだったり、総理大臣だったり。

 他国のお偉いさんも来ていた。

 そんなお偉いさん達が一高校生の葬式に来るという事でマスコミもいっぱいやって来た。

 とても腹立たしかった。


「鈴くん、そんな、鈴くん……」

「朱里……」


 佐藤さんは泣いていた。

 とてもとても悲しそうに泣いていた。

 佐藤さんだけじゃない。

 みんな泣いていた。


 そんな様子を撮ろうとするマスコミがとても腹立たしかった。

 そして、さらに腹立たし物を見た。


 鈴の叔父家族がいた。

 真顔で震えて悲しそうにしている様に見える。

 しかし、俺は知っている。

 鈴から聞いていた。

 鈴は叔父家族と陰険な関係であると。

 叔父家族は鈴の死を望んでいると。

 俺には叔父家族の顔が必死に笑いを堪えている顔にしか見えなかった。




 鈴が亡くなって数ヶ月たった。

 みんな、鈴の事を忘れたのだろうか?

 楽しそうに過ごしている。

 いや、何時までも鈴の死を悲しんでいるわけにはいかないとわかってはいる。

 彼らの様に後ろを向いて悲しみに暮れるのは間違いだと分かっている。

 俺も前を向いていると思いたい。

 だけど、佐藤さんが心配である。

 鈴が亡くなって佐藤さんの精神がとても参っている様に見える。

 学校にも来て笑っているが、無理している様にしか見えない。

 仲のいい沙耶も心配そうにしている。


 そんな中、ふと、宮本が見え映った。

 彼は笑っていた。

 女子生徒に囲まれていた。

 鈴が亡くなって、我が家の春が来たといった感じに見える。

 どうしてもそう見えてしまう。



「よし、ホームルームを始めるぞ」


 先生が教室に入ってきてホームルームが始まった。


「……今日は茨木が亡くなって4ヶ月目だ。最初に黙祷したいと思う」


 そうか、もうそんなにたったのか。

 それはそうだよな。

 もうすぐ三学期も終わりだし。


「さて、今日の予定だが……」


 黙祷が終わり、先生が今日の予定を伝えようとした時、それは起こった。

 突如、床が光始めた。

 床を見ると魔法陣の様な物が書かれており、それが強く光っている。

 危険に感じて逃げようとするが、何故か足が動かない。

 魔法陣の光はどんどん強くなり、光によって白く塗りつぶされ、目を閉じた。



 次に目を開けた時に映った光景は教室ではなく、まるで物語に出てくるような、城の一室の様な場所だった。

 辺りを見回すと、俺だけでなく、先生を含めたクラスの全員がいる。

 そして、少し離れた所に、これまた物語に出てくるような騎士とお姫様のような格好をした人達がいた。


『皆様、私の言葉がわかりますか?』


 お姫様の様な人から知らない言語、されど意味のわかる言葉が聞こえてくる。


『それでは、ようこそ、我がイルレオーネ王国へ。歓迎いたします、勇者様、そしてご同胞方。私はイルレオーネ王国第一王女ミハエルと申します。以後よろしくお願いします』


 これは?

 周りのクラスメイト達はこの状況に驚いている。

 そして中には「異世界召喚キターーー!!」と言って喜んでいる者もいる。

 異世界召喚?

 そう言えば鈴が言っていたような気がする。

 暇な時に偶に読む物に異世界召喚をテーマにした本があったと。

 まさか、それなのか?

 俺は異世界召喚されたのか!?

くっ。いったい彼らはどこの世界に召喚されたというのだ!?∑(゜Д゜)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ