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70 神へと至る鬼

「シエルは?」

「先ほど眠りました」


 母さんを見送った俺たちは村から戻り、屋敷に帰ってきた。

 ハルさんとアーシャさんとジークは城に戻ったがシアンは屋敷に残った。

 明日はいろいろ話し合いをしなければならない。

 何しろ進軍中だったパールミス軍20万が突如消えたのだから。

 俺が原因だけど。


 俺は村の人たちを亡くし、父さんと母さんを亡くして、怒りのままにパールミス軍を全滅させた。

 軍用語の全滅では無く、文字通りの全滅である。

 城に送ったパールミス王以外すべて殺したはずである。

 そして、暴走した。

 あの時はわけが分からず、何をしているのかも分からなかった。

 でも、その時の記憶はある。


「シアン、俺はお前に言わなければならない事がある」

「なんですか?」

「俺が暴走していた時に聞いたと思うけど、俺は転生者なんだ」


 俺はシアンに話す。

 前世の事、死んでこちらで転生した事。

 シアンは口を挟まずに聞いてくれた。


「どうしても言えなかったんだ。騙していたみたいですまん」

「いいえ、そんな事ありません」


 シアンは首を横に振った。


「アーシャさんも言っていたでしょう。スズが何者でも関係ないと。アーシャさんだけではありません。シエルちゃんもお父様もお母様もお兄様もみんなそう思っています。もちろん私も。スズの前世がどうとか関係ありません。もし、スズが前世が世界を滅ぼす大魔王だろうが小さな虫だろうが私は貴方を愛しています」

「ははっ、なんだよそれ。落差あり過ぎるだろう」

「ふふ、そうですね。とにかく、私は貴方が何者であろうと愛しているという事です。それに、前世の記憶があろうとスズはスズでしょう?」


 その言葉はスッと俺の心に溶け込んでいく様に感じた。

 そう、俺は俺なのだ。

 前世がどうとか関係ない。

 俺はスズ・ロゼリアなのだ。


「そうだな、俺は俺だ。スズ・ロゼリアなんだよな」

「はい、その通りです」


 前世を話し、なお俺を俺と見てくれるシアンの存在を嬉しく感じる。

 ああ、これが人を好きだと思うことかもな。


「シアン、俺たちは実質婚約しているけどお前に言って無かった事がある」

「なんでしょう?」


 俺はシアンの目を見つめ、そして言う。


「シアン、俺と結婚してくれ」


 そう言うと、シアンは両手を口に当てて、頬を染め、驚いた様に、それ以上に嬉しそうにして泣き出した。


「はい、スズと結婚させてください」

「そう、よかった、よ」


 その瞬間、急激な眠気に襲われて倒れてしまい今にも眠りそうになる。


 ああ、よかった、うん、嬉しいな。

 父さんが死んで母さんが死んで、とても悲しい。

 でも、シエルがいて、ハルさんがいて、リーシアさんがいて、ジークがいて、爺やがいて、セレスがいて。

 何よりシアンがいる。

 俺を支えてくれる人達がいる。

 俺を助けてくれる人達がいる。

 俺を好きだと言ってくれる女の子がいる。

 俺を愛していると言ってくれる女の子がいる。

 ああ、なんて俺は幸せなんだ。


 そう思い俺は眠りについた。




 ー▽ー


 スズが急に倒れてしまいました。

 慌てましたがどうやら眠ってしまった様です。

 こんな所で寝かせられないのでベッドまで引きずって運びます。


 スズ、とても幸せそうに眠っていますね。

 かく言う私も口元が緩んで止まりません。

 とても幸せです。


 今日はとても悲しい事が起こりました。

 グレイスさんとアーシャさんが亡くなり、村の中人達も亡くなりました。

 そして、シエルちゃんが攫われ、スズが助け出すも今度はスズが正気を失ってしまいました。

 とても悲しい事です。

 でも、スズが正気を取り戻し、アーシャさんが霊として少し留まり、話す事ができました。

 そして、つい先ほど、スズにプロポーズされました。

 私たちは実質婚約していましたが、実際にスズにプロポーズされたのは初めてです。

 これほど嬉しい事はありません。

 とても幸せです。


 ……あら?

 なんだか急に眠くなってしまいました。

 ……スズの隣で寝ましょうかしら。

 い、いいですよね?

 こ、婚約者ですもの。

 ス、ススス、スズと一緒に寝ても構いませんよね?


 わたしはそっとスズのベッドに入ります。

 隣ではスズが幸せそうに眠っています。


 私のスズ。

 強くて優しいスズ。

 前世で愛を知らずに育ち、そして愛を知ったスズ。

 私は貴方が誰よりも愛を求めているのを知っています。

 愛を失うのを恐れている事を知っています。

 だから、グレイスさんとアーシャさんを亡くし、暴走しました。

 ならば、私が二人の分まで愛します。

 すべてを食らう暴食の鬼。

 食べても食べても満たされないのなら、ずっとずっと、満たされるまで愛します。

 私の優しくて強い愛しい鬼。

 どうか、ずっとお側にいさせてくださいね。


 愛しておりますスズ。




 ー▽ー


 スズは眠りについた。

 進化の眠りに。


 20万もの魂を喰らい、多くのエネルギーを喰らい、そして、精神的に成長したスズは大きな進化を遂げる。


『半人半鬼』から『半神半鬼(デミゴッド)』へと。

 それは、神の領域に片足を突っ込んだ存在。

 しかし、それすらも今回の進化の中継地点でしかない。

 スズは更に神化とも言える超進化を果たし『鬼神(キジン)』へと至る。


 神たる者の存在にスズは至った。


 それだけでは終わらない。

 ユニークスキル『暴食(グラ)』とユニークスキル『調理師』が統合進化され、オーバースキル『暴食神(ベルゼブル)』を獲得する。

 それは、この世の法則から解き放たれ、世界を超越した力を持つ超越能力(オーバースキル)

 まさに、超越神の力である。


 こうして、スズは神と呼ばれる程の存在へと至った。






スズは救われました。

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