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66 VS発狂スズ 前編

 スズは、真正面からハルに向かって突進し、爪を振り下ろす。


「いっ、いっ、いっ、いっ、いやっはああああ!!」


 対してハルは槍で正面から受け止める。


(くっ、重い! しかしそれ以上に能力が厄介だな)


 ハルはスズの一撃を受け止め、受け流す。

 今のスズは狂っており、単純な攻撃しかしてこない。

 いかに、普段のスズよりも力が強かろうと理性無きスズの攻撃はハルには当たらない。

 先ほどハルがスズに腕を奪われたのはシアンを庇ったからだ。

 だが、スズの力よりも厄介な事がある。

 スズは常に『暴食(グラ)』を全開にしており、触れるだけで体力、魔力などのエネルギーが吸収されるのだ。

 つまり、戦いが長引けば長引くほど不利になる。


「スズにはできる限り触れるな! エネルギーを吸収されるぞ! 攻撃はすぐにいなすか回避しろ!」


 ハルは全員に忠告する。


「だぁー、だぁー、だぁー、だぁーれだーー? 俺の食事をじゃんますうのは? 俺は食ううんだよぉーーー!!」


 振り下ろした爪を止められたスズはハルの横を通り過ぎ、シアンに向かって走り出す。


「おおおおおいしそおっほーーほほほほ」


 ダンッと大きな音を立ててシアンに向かって跳躍したスズは爪をシアンに振り下ろそうとする。


「させません!!」


 とっさに無数の武器を展開していたセレスは、その一部のシアンの盾にするようにシアンとスズの間に飛ばす。

 それによってスズの攻撃は防がれたが、盾にした武器は全て破壊された。

 スズの爪は妖刀"空切"とほぼ同等の攻撃力を誇る。

 スズの爪とセレスの武器群では性能に違いがありすぎたのだ。

 それでも、シアンに傷一つないことは変わりない。


 攻撃を防がれたスズが地面に降り立ったと同時に、いつの間にかスズの側に来ていたジークが槍にて突きを放ち、ゼシェルが影より現れナイフで切り裂こうとする。

 しかし、今のスズは発狂状態であるにもかかわらず、体は動きを覚えている。

 つまり、本能のままにまるで獣の様に動くきながら的確な対処もしてくるのだ。

 ジークの突きは爪にて払われ、ゼシェルはナイフごと蹴られて吹き飛ばされた。

 その際にナイフでスズを切り裂く事に成功したが、やはり瞬時に再生される。


「ソードレイン!!」


 二人が距離をとった瞬間に、セレスは無数の剣を上空から雨のようにスズに降らせる。

 しかし、スズはそれらの武器を間一髪で避け、爪で払って防いだ。


 そのやり取りの間にハルはスズの正面に立ち、シアンは少し距離をとった。


 対スズの編成としては、主にハルが相手をし、セレスが物量をいかしての牽制とシアンの護衛、ジークとゼシェルが隙をついて遊撃といった形に自然となった。


「援護します!」


 そして、シアンは後方で『歌姫』の能力を使い、歌う事によってハル達の能力を引き上げる。


「あーあ、シエル、そんなによごーて、母さんにしかあれれるぞ」

「いい加減目を覚ませっ!!」


 ハルは隙だらけのスズに一撃を入れ、三本の爪の腕を根元から切り飛ばす


「ああああああっ!! ぼくぼくぼくぼく、私? 俺? 俺おれオレオレオレオレ俺のウデがぁぁああはっはっはっああああっ!!」


 切り飛ばされた爪はすぐさま再生され、より強靭な爪に生え変わった。


「スズ! 正気に戻れ! みんな悲しんでいるぞ!」


 ジークは爪を再生している最中のスズの背後に移動し、突きを放つ。


「かたっ!?」


 しかし、先ほどまでと違ってまるで金属のように硬くなったスズの皮膚に阻まれてダメージが入らなかった。

 今のスズは、キデンサーがそうであったように皮膚が変質して金属に覆われている。

 普段のスズは動きにくいからとやらないが、今のスズは狂気に陥っているので普段やらない事を平気でやる。

 総合的には戦闘能力は普段のスズと比べて落ちるが、ジークやゼシェル、セレスにとっては十分脅威である。

 しかし、ハルには関係なかった。


「自慢のスピードが落ちたな」


 好機と見て、ハルは次々と突きを放ち、斬り込む。

 スズもそれに反応して爪で防ごうとするが、今のスズは理性無き獣。

 ジーク、ゼシェル、セレスの攻撃は単純な力の差から防御する事は出来たが、同等であったハルの攻撃はいくら体が技術を覚えていようと限界がある。

 ハルはまるでミキサーの様な凄まじい槍さばきでスズにダメージを与えていく。


「ごにゃ、ぎゅぶ、が、は、ぐ、ああああああ!!」


 スズは貫かれ、切り裂かれながらも強引にハルを薙ぎ払うように攻撃して距離を取らせた後、上空に飛び立った。


「あああああ味付けえええあああああああーーーーーっっ!!」


 そして、上空から片手を地面に突き出し、力任せに超高密度の魔力弾を生成し地面に向かって撃ち込んだ。


「やばい!!」


 スズの魔力弾を危険だと認識したハルは槍で魔力弾をあらぬ方向に弾き飛ばした。

 弾き飛ばされた魔力弾は遠く離れた地面に着弾し、大きな爆発が起こった。

 幸いだったのは、ここら一帯が死の地帯と化しており、壊される物など何も無かったことだろう。


「いたらきまーす」


 一方スズは魔力弾を放つと同時に再びシアンを襲いかかる。

 ハルが魔力弾を弾いている時にはスズはシアンに目の前まで迫っていた。

 だが、息を大きく吸ってシアンは待ち構えていた。


「声大砲!!」


 シアンから収縮された大きな声が放たれ、それが衝撃波となってスズを吹き飛ばす。

 シアンの『歌姫』は歌うだけでなく、声に関する能力も持っている。

 今回の様に常軌を逸する肺活量で大きな声を出して衝撃波を放ったり、超音波を発して混乱させたり、粉砕したりと様々な事が可能である。


「ナイスだシアン」


 スズが吹き飛ばされた先にはハルが構えて待っていた。

 闘気を十全に練り、そして、


「大震閃!!」


 大きく振動する力強い突きを放った。

 これは貫くよりも振動によって全身に闘気を浸透させ、粉砕する技だ。


 吹き飛ばされた勢いのまま、体制を立て直す事なくまともにスズは受けて吹き飛ばされた。


「あああああ! イタイイタイイタイイタイ! なんで、なんで、なんで、なんで、なんでーーーー!! あっあっあっあっあーーーーーーーー!!」


 大きなダメージを受けたスズは地面でゴロゴロ転がり、やがて何本もの鉤爪の様なものが背中から生えてきた。

 その鉤爪は一本一本が自在に蠢いている。


「ちっ! 魔力が増大しやがった! 気をつけろ!」


 今までですらまともに相対できるのがハルだけだったにもかかわらず、スズはさらなる進化を遂げた。

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