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64 茨木鈴とスズ・ロゼリア

 スズ・ロゼリアの前世、茨木鈴は超人である。

 地球の全人類の頂点に立っていると言っても過言ではない。

 齢16にしてその頭脳や身体能力はまさしく超人的であった。

 IQ200をオーバーしていたり、オリンピックを舐めプできたりと。

 スポーツなどでも1日も練習すれば世界的な選手をも上回る。

 それだけの茨木鈴の才能があった。

 その頭脳や身体能力や超感覚、精密性がそれらを成している。

 茨木鈴の料理はその集大成でもあった。

 しかし、最初からそれらを成していた訳ではない。

 いくら才能があろうと、下地が無ければ世界一の存在にはなれない。

 茨木鈴は力を求め、力を付けたが故に超人と呼ばれるようになったのだ。


 茨木鈴の幼い頃は悲惨であった。

 鈴は寿司屋を営む両親の元で生まれた。

 そこに愛はあったし、鈴も大切に育てられた。

 しかし、鈴の両親は彼が物心をつく前に事故で亡くなった。

 残された鈴は母方の祖父母に引き取られた。

 祖父は怪我をして引退したが、父の師匠であった。

 怪我によって寿司を握れなくなったが鈴に料理を教える事ぐらいはできた。

 それが後に鈴が料理人として活躍するきっかけの一つとなった。

 鈴はすくすくと成長した。

 両親は亡くなったが、祖父母にも大切に育てられた。

 しかし、それはすぐに崩壊した。

 祖父母がほぼ同時に病気なり、そしてほぼ同時に亡くなった。

 鈴が4歳の時である。


 鈴が次に引き取られたのは父の兄弟の叔父夫婦であった。

 それからは悲惨であった。

 叔父夫婦は幼い鈴を騙し、両親と祖父母の遺産を奪い取った。

 形見の指輪を奪い取った。

 食事も碌に与えられず、暴力も振るわれた。


 そして、ある時鈴は決意した。

 叔父夫婦に復讐すると。

 自分の力で生きていくと。

 本来守れれるはずの幼い子供はそう決意した。

 その為に鈴は力を求めた。

 まず、知恵を付けた。

 大きな図書館で童話から専門書まで全て読んだ。

 この時、鈴は1000ページもある本を1分と経たずに読む事ができる様になった。

 一字一句完璧に覚えているし、内容も把握する事ができる超速読を身につけた。

 膨大な本の量を全て読むためだ。

 それをできるだけの才能があった。

 そして、図書館の本を全て読破して次にしたのは金を得る事であった。

 鈴が目を付けたのは数学の賞金問題であった。

 鈴はそれを解いた。

 そして大学の教授に売りつけた。

 大学の教授は僅か5歳の鈴が誰も解いた事のない難解な数学の問題を解いた事に驚いた。

 しかも、解答は反論の余地も無いくらいに正しいのだ。

 大学の教授は鈴に嫉妬すると同時に鈴に興味を持った。

 大学の教授は鈴を養子にしたいと伝え、鈴も了承した。

 叔父夫婦は鈴がいなくなり、金も手に入ると喜んで鈴が大学の教授の養子になる事に了承した。

 鈴は大学の教授、茨木正孝の養子になった。

 何の因果か、正孝の名字は鈴と同じく茨木であった。

 鈴は正孝の元でさらなる知識を身に付けていった。

 正孝の専門の数学だけでなく、医学、薬学、化学、物理学、電子工学、経済学などあらゆる分野の知識を身に付けた。

 6歳になる頃にはあらゆる分野で下手な教授よりも専門的な知識を身に付ける様になった。

 そして、ある程度余裕ができた鈴が次にしたのは料理と武道であった。

 特に鈴は料理に夢中になった。

 身に付けた知識も役に立ち、才能も相まってかなりの腕を幼いながらにして誇っていた。


 そのようにして鈴は正孝の元で成長していった。

 そして、鈴が10歳になった頃、正孝は亡くなった。

 寿命だった。

 正孝が鈴を養子にした時、既に80歳を超えていた。

 85歳になり、とうとう寿命を迎えてしまったのだ。

 それでも正孝は最後に鈴に出会えた事に感謝した。

 鈴には自らの知識の全てを伝えた。

 正孝には妻も子供もいなかったが最後に何かを残せたのだ。

 唯一、鈴がこれからどう活躍するのかを見れない事を悔やんだが、それでも正孝は満足して死んだ。


 鈴は正孝の死後、海外に渡った。

 ハー○ード大学に入学し、飛び級しながら卒業した。

 大学でも様々な実績を残した。

 もちろん、世間には騒がれたし、各国も鈴に注目し始めた。

 その頭脳に目を付けられた鈴は度々各国の工作員によって拉致られそうになったが、既にこの時の鈴は様々な武道を極めており、工作員程度なら相手にもならないくらいの戦闘能力を身につけていた。

 仕方なく何人か殺した事もあった。


 鈴は海外の大学に所属していたが、日本にも度々帰って来ていた。

 店を出したり、権力者と知り合いになったりした。

 日本の権力者は鈴の料理を食べてその虜になった。

 そして彼らは再び鈴の料理を食べる為に鈴の害となる者ーー鈴を拉致ろうとする工作員などーーを全力で排除した。


 そして、鈴の知り合いの権力者の一人にとある大企業の社長がいた。

 その大企業は叔父の勤める会社の親会社だ。

 鈴と社長が知り合ってから叔父は無かったはずのミスを連発し、給料は減り、窓際部署に追いやられ、リストラ寸前となった。

 また、投資にも失敗し、あっという間に借金だらけになった。

 もちろん、鈴が裏で手を回していた。


 叔父はその事を知り、鈴を殺そうとした。

 殺し屋に鈴を殺すように依頼した。

 しかし、殺し屋は鈴に返り討ちにされ、半殺しにされた状態で叔父夫婦の家に放り出された。

 次、同じ事をしたら殺し屋と同じ目に合わすと書かれた手紙を添えて。

 叔父夫婦は恐怖した。

 叔父夫婦は極貧でありながら生かさず殺さずの状態で鈴に怯えて生きていくしかなくなったのだ。

 そして、鈴の叔父夫婦に対する復讐は完了した。

 一度、叔父夫婦と対面した時の二人の表情は鈴にとっては見ものだった。


 復讐を終えた鈴は日本と海外を行ったり来たりしながら過ごした。

 この時には超人と呼ばれる様になっていた。

 そして、15歳になった時、高校に通う事にした。

 既に大学を卒業している鈴には必要のない事だが、単なる暇つぶしだ。

 授業や授業料などは免除されている。

 鈴は高校に通い、お偉いさんのお願いを聞いたり、料理をしたりしながら高校生活を満喫した。

 しかし、その高校生活も一年もしないうちに終わった。


 ある日、自宅に帰っていると、頭上から多数の鉄骨が落ちて来たのだ。

 本来、鈴ならギリギリ避ける事ができていた。

 しかし、鈴は見てしまった。

 ちょうどすぐ隣にいた4歳くらいの女の子を。

 鈴は女の子を持ち上げ放り投げた。

 結果、女の子は助かったが鈴は鉄骨に串刺しにされて死んだ。


 こうして、愛を知らずに育った超人とまで言われた鈴はこの世を去った。

 しかし、この時奇跡が起きた。

 時空の歪みが発生したのだ。

 鈴が死んだ事によって肉体から離れた魂はその時空の歪みに飲み込まれた。


 スズ・ロゼリアのいる世界に異世界からやって来る方法の一つは時空の歪みに飲み込まれる事である。

 それによって世界の壁を超えるのだ。

 しかし、その成功率はとても低い。

 時空の歪みに肉体、精神ともに耐えられないのだ。

 そのほとんどが消滅してしまう。

 時空の歪みに耐え、世界の壁を乗り越えた時、彼らは異世界人として強大な力を得る。


 そして鈴も時空の歪みに耐えた。

 肉体を有さず魂のみの状態で世界の壁を乗り越えたのだ。

 鈴の強靭な魂を持ってして始めて成し得る事であった。

 そして、この世界に辿り着いた鈴の魂はとある胎児に宿り、時間をかけて定着した。

 その結果、茨木鈴はスズ・ロゼリアとして転生を果たした。


 スズは温かい家族に育てられた。

 実の両親では無かったが、それと変わらない、いや、それ以上の愛をもって育てられた。


 スズは愛を知った。


 愛を知らず超人とまで言われた人間は、愛深き鬼へとなった。


 家族はスズを愛した。

 スズもまた家族を愛した。

 父を愛し、母を愛し、妹を愛した。

 彼女の事も……。



 スズは幸せだった。



 しかし、それは壊された。

 人の欲望によって。


 激怒したスズはそれらを滅ぼした。

 滅ぼした結果スズは20万人もの魂を取り込んだ。


 そして、スズは……






鈴と茨木正孝は家族というよりも先生と生徒、師匠と弟子みたいな関係でした。

鈴にとっては尊敬すべき恩師です。

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