7 迫り来る厄災
あれから沢山の事があった。
シアンやジークと遊んだり、リーシアさんに俺がいるとシアンが勉強するので一緒に勉強してと言われたり、みんなで魔法の練習をしたり、戦う訓練をするようになってからハルさんと訓練したり。
とにかく沢山の事があっていつの間にか5年がたって10歳になった。
10歳になって何が1番変わったかというと、母さんが妊娠したのだ。
鬼人である父さんとエルフである母さんは異人種同士であるため子供が出来にくかったが遂に子供が出来たのだ。
予定ではあと一週間で生まれる。
前世じゃ兄弟がいなかったのでとても楽しみだ。
まあ物心がついた時には兄弟どころか親もいなかったけど。
「あら、また動いたわ。この子は元気ね」
母さんが嬉しそうにしている。
「そうか。楽しみだな。元気なことはいい事だ。それにしても名前をどうしようか悩むな。」
父さんはここ一月ほどずっと名前を考えている。候補はある程度しぼっているらしいが決めかねているらしい。
「きっと元気に生まれてくるわよ。スズがちゃんと栄養のあるものを食べさせてくれているからね」
「赤ちゃんの為にたくさん栄養をつけないといけないもんね。母さん今日は何か食べたいものある?」
他愛もない会話をして母さんがそうね、と悩んでいる。
俺は複数の魔力を感知した。
突然の事だ。
その内の1つはとてつもない大きさだ。
本来感知するはずのない村の結界内でだ。
「父さん!」
俺は慌てて知らせようとすると、家の外から妖精たちの大きな声が聞こえてきた。
「たいへんたいへん!結界がやぶられたよ!魔物がこっちにやってくるよ!」
ー▽ー
スズの住んでいる村の外には巨大な森が広がっている。
メルデル大森林と呼ばれている。
逆に言えばメルデル大森林の内部に村が存在している。
仮にこの地を支配できた国があればその周辺も支配できると言われている場所にメルデル大森林は存在している。
しかし何処の国も成功した事はなく、もはや支配しようともしない。
それはなぜか?
メルデル大森林の中には一般的に闇の領域と呼ばれている場所がある。
そこは異常なほど魔力密度が高くとても強力は魔物が数多く存在しているのだ。
一般的に魔物の強さはFからSまで分かれておりSランクの魔物となると一体で小国ならば滅ぼしてしまうかもしれないほどの驚異である。
そして、その闇の領域内の単体での平均的な魔物の強さはCランク。
しかしこれは単体での平均である。
弱い魔物は強い魔物より多くいるものである。
Cランクの魔物は闇の領域では単体では雑魚である。
雑魚であるゆえ大量にいる。
そして、強い魔物だとSランクに到達している魔物がいる。
そんな所を支配できる訳がないのだ。
もっとも、それらの魔物が基本的に闇の領域から出る事はない。
何故なら闇の領域から出ると魔力密度が少なくなるため体の維持が難しくなり、弱体化してしまう上に他の生物を食い続けなければ生きられないからだ。
よって闇の領域から出てくるのは住む場所を追われた魔物くらいだ。
しかし、そんな闇の領域から40匹ものオーガが出てきた。
しかも、そのオーガ達を統率しているリーダー格のオーガに至ってはSランクに到達しているであろう個体だ。
彼らは住む場所を追われたわけではない。
そんなオーガ達がスズの住む村を襲撃しようとしていた。
ある者の命にしたがって。
村の結界はその者によって破られた。
また、リーダー格には名前を与えられ闇の領域から出ても一切弱体化する事なく普通に活動が出来るようになっていた。
他のオーガ達も闇の領域から離れたとはいえ、そこまで弱体化はしていないようだ。
オーガ達にとって邪魔するものは何もない。
今日、自分はこの村を蹂躙して魔王となるのだ。
それこそがあのお方が望むことなのだから。
ー▽ー
村人達は村長の号令のもと妖精達の泉の近くの広場に集まった。
会議は早急に行われた。
すぐ近くまで敵が来ているのだ。
ゆっくりしている時間はない。
会議の結界、戦士長にして時期村長の父さんが指揮を執り、迫り来る敵と戦うようだ。
その数80名。
約100人いる村人の数から見れば異常であるが結界の外は闇の領域じゃないが驚異だらけだし、その驚異が結界を抜けてやってくる事があるのだ。
村人の中で戦えないものなどほとんどいない。
そして、残りの20名近くは敵が来る所以外から他の驚異が攻めて来ないかの見張りだ。
そして、残ったのは5人。
俺と母さんと村長である鬼人のばあちゃんと老い過ぎて戦えなくなった老人二人だ。
母さんは妊娠しているため戦えず、俺は高い感知能力を活かして村長のばあちゃんに状況を伝える役割だ。
そして村長のばあちゃんは戦況を見て、戦うか撤退するかを決める。
仮に撤退する場合、殿を残して妖精達を連れて行き村の外に脱出するようになっている。
そして、村の入り口付近で戦闘が始まった。




