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62 激怒のスズ

残酷表現あります。

「「「陛下!」」」


 天幕から吹き飛ばされたパールミス王の元に周囲の騎士が向かう。


「ぬぅうっ! 誰か奴を殺せ!」


 パールミス王の命令によってスズに多数の騎士が攻撃する。

 しかし、スズの恐ろしい程の剣技によって全て防がれ、切り裂かれて塵となってしまう。

 塵となる理由は簡単だ。

 スズが『調理師』の能力で"一振りの斬撃"を"一振りで塵と化す斬撃"に作り変えているのだ。

 そんな事しなくても殺せるが、さらなる恐怖を与えるためだ。


「なんだこいつ!」

「強いぞ!」


 瞬く間に多数の騎士を塵にされ騎士達は迂闊に近寄れないでいる。


「どいつもこいつも不甲斐ない! セイヤ! 彼奴を殺せ! 勇者の力を見せてみろ!」

「はあ、仕方ないね」


 セイヤはパールミス王の意を受けて、スズの前に立つ。


「おお、勇者様なら!」

「ああ! 勇者様ならあの化け物を!」


 などと周囲の騎士達はセイヤがスズの相手をする事になり安堵する。


「……お前は異世界人か?」

「んふふ、そうだよ。君はちょっと強そうだから勇者の僕が相手してあげる。君はあの子のお兄ちゃんかい? こんな所まで助けに来て、シスコンかな?」

「シエルを攫ったのはお前?」

「無視しないでよ。まあ、そうだよ」

「なら、シエルと一緒にいた母さん、銀髪のエルフを殺したのもお前か?」

「ああ、あの綺麗な人ね。あのハーフエルフを必死に守っていたから仕方なく殺しちゃったよ。もったいなかったな、あんな美人なのに。あ、でも人妻には興味ないしいいか」


 セイヤのその言葉にスズの怒りのボルテージは跳ね上がる。

 それでもスズは冷静でいた。


「そうか、父さんと母さんを殺したのはお前か」

「おや、ご両親だったんだ。まあ、あの子のお兄ちゃんならそうだよね。君は家族思いだね。そうだ、良いものを見せてあげる!」


 セイヤは持っていた剣を手放した。

 剣は地面に落ちる事なく浮かぶ。


「凄いでしょ! 僕のユニークスキル『強奪』の力なんだ。殺した相手のスキルを奪い取る。まさに、主人公たる僕に相応しい能力だよ。」


 その様子を見てスズの怒りはさらに増える。

 それでもスズは冷静に冷静に冷静にセイヤをいかに惨たらしく殺すか考えていた。


「そして、これが!」


 セイヤは何かを発動する。

 その瞬間、辺り一面の空間に変化が起きた。


「僕のもう一つのユニークスキル『乱魔空間』だよ。この空間の中じゃ敵の魔力が乱されて、魔力低下や魔術などの魔力を使った技の妨害、スキルなども妨害するよ。それだけじゃなくて身体面でも低下する。この空間の中じゃ君は僕に絶対に勝てないよ」


 セイヤは自慢するように能力の説明をし、ニヤニヤ笑いながら余裕を見せる。


「そう、最後に、どうして異世界人のお前がこんな戦争なんかに?」

「んふふふ、そうだね。グローリアス王国の王女様を知っているかな? 写真みたいな物で見たけどすごい可愛いんだよね。この戦争で勝ったら僕の好きにして良いって言うんだ。僕のハーレムの一員に加えてあげるんだ。まあ、僕は主人公だし? 僕のハーレムにはあれ位可愛い子が必要だしね。確か名前はシア……」


 セイヤはシアンの名前を口にする事は無かった。

 何故ならスズに斬られたから。


「お前がその名前を口にするな! シアンは俺のものだ!!」


 目の前の存在に父を殺されたと知り、母を殺され、あまつさえその能力を奪われたと知り、シエルが攫われたと知ってなおも冷静であり続けようとしたスズは、セイヤのシアンに対する発言によって怒りが爆発した。


(ああなんだ、俺ちゃんとシアンの事が好きなんじゃないか)


 スズは激怒しながらも心の隅で確かにそう思った。


「くそっ! お前! 何をした!? なんでこの空間でそんなに動ける!?」

「そんなもん自分で考えろ雑魚」


 スズがセイヤの『乱魔空間』で何の影響も無く動けているのは『暴食(グラ)』でその影響を食らっているからだ。

 セイヤの『乱魔空間』は特殊な波長によって一定範囲にいる敵の能力を大幅に下げる。

 まだ、セイヤが味方と認識した者には何の影響も無いという恐ろしい能力だ。

 これがパールミス王国がグローリアス王国に侵略をする事になった理由の一つだ。

『乱魔空間』は範囲が広く、戦場で使えば簡単に勝利する事ができる。

 しかし、この『乱魔空間』を攻略する方法はいくつかある。


『乱魔空間』による魔力妨害を上回る制御をする事一つ。

 また、『乱魔空間』でセイヤやセイヤの味方が通常通り動けるのは、彼らに魔力妨害を中和する結界を体に張っているからだ。

 つまり、その結界を解析して似た様な結界を構築する事が一つ。

 そして、スズが実行した『暴食(グラ)』で『乱魔空間』の魔力妨害の波長を捕食する事が一つ。

 スズが『暴食(グラ)』での捕食を選んだのは、これが一番簡単だったからだ。



(くそっ! 僕が雑魚だと!? 主人公の僕に対して何たる暴言。でも、大丈夫。斬られたかと思ったけど外傷はない。おそらく外れた。僕は主人公だからね。こんな所で死ぬわけない。にしても何だか体が痛いな)


 スズに雑魚と言われセイヤは内心で毒づく。

 セイヤはスズは大した事無いと結論づけた。

 セイヤにとってスズはスキルを奪う対象だ。

 スズが見せた攻撃した相手を塵とするスキルーー実際は違うーーは有用だと思った。

 ぜひスズを殺して手に入れたいと思った。

 何故かこの空間で素早く動けるスズは厄介ではあるがこの空間ではスキルは使えない。

 塵にする攻撃ができない以上スズは大した事無いと本気で思っていた。

 さっさとスズを殺そうと思いスズの方を見ると、スズは消えていた。


(どこ!?)


 気づけば胴を斬られ、顔を斬られ、手足を斬られた。

 何度も何度も斬られた。

 セイヤにはスズの動きを認識する事ができずに斬られ続けた。

 ーーザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザン

 という斬撃音が切れることなく聞こえるほどに高速で斬られ続けた。

 100は斬ってからスズはセイヤの前で止まった。


「ふ、ふふふ、あははは。どうやら何度斬っても無駄みたいだよ。いつの間にか防御のスキルを手に入れたのかな。やっぱり僕は主人公だね。何でこの空間でそんなに動けるのかわからないけど、斬れない限り僕を倒せないよね」


 セイヤは何度も斬られても傷一つ無い事に歓喜する。

 自分は主人公だと。

 主人公たる自分にはスズの攻撃は効かないと。


「お前、アホか? 主人公だの何だの厨二病か? 病院行ってこい」

「なんでその言葉をっ!?」

「それに、外傷が無いのはお前のスキルが原因じゃない。俺のスキルが原因だ。そろそろだな」


 セイヤはスズが厨二病という言葉を口にした事に驚いていた。

 しかし、そんな驚きもすぐに消え失せた。


「いいいい、痛い痛い痛い、なんだこれっ!? ああああぎぃいいいい痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」


 急にセイヤの全身から激しい痛みが押し寄せてきたのだ。

 どんどん強くなっていく。

 セイヤはあまりの痛みに地面に転げ回りながら叫び声をあげる。


「お前の感じる痛みを作り変えて昇華した。皮膚が外気に触れるだけで痛いだろう。叫ぶだけで喉が痛いだろう。そこで転げ回っているだけで痛いだろう。呼吸するだけで肺が痛いだろう。瞬きするだけで目が痛いだろう。心臓が動くだけで痛いだろう。血液が流れるだけで体が痛いだろう。ただそこに存在するだけで痛いだろう。ってすでに聞こえてないか」


 スズの言う通りセイヤは叫び声をあげながら転げ回っている。

 スズは他にもいろんなものを作り変えて昇華させている。

 異常に熱く感じ、寒く感じるようにも作り変えている。

 存在しない筈の器官が幻肢痛(ファントムペイン)によって痛みを感じるように作り変えている。

 内臓を抉られる痛みを1としたら、セイヤが存在しているだけで100を超える痛みを感じている。

 それが全身や存在しない器官まで。

 人には耐えられない領域の痛み、苦しさをセイヤは感じている。

 しかし、精神は固定しており、発狂はできないし慣れることも無い。

 ショック死もできない。


 発狂できればどんなに楽か、今死ぬ事ができればどんなに楽か。

 何なら地獄にだって堕ちてもいいだろう。

 地獄の方が何百倍もマシだろう。

 まさしく、セイヤは地獄なんて生温いと感じるほどの苦痛をその身に受けていた。


 スズは転げ回っているセイヤの元に歩き、手をかざす。

 その瞬間、セイヤの感じていた苦痛は止まった。


「ひっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。助けてください。調子に乗っていただけなんです。お願いします。許してください」


 先程まで自分の事を主人公と言っていたのが何だったのか、セイヤはカタカタを震えながらスズに許しを請う。


「俺は言ったよな。お前は楽には殺さんと。まあ、でもお前はラッキーだよ。もうすぐ死ねるのだから」

「い、嫌だ! 死にたく無い! ゆ、許してください。お願いします。何でもします!」


 セイヤは惨めに泣きながら懇願する。

 先ほどの苦痛が無くなれば死にたくなくなるのものだ。

 むしろ、異常な苦痛によって死に近づいた事によって生への執着が生まれた。

 もっとも、すぐに死にたくなるだが。


「許せだと? 許すわけないだろうがぁっ!!」


 スズはセイヤの髪を掴み上げ、上空に投げた。

 そして、落ちてきたところを一閃。


「ぎゃぃぃいいいいいいいいいいいいあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 地面に落ちたセイヤは手足の先からゆっくりとじわじわと崩壊していく。


 先ほどのスズは様々な死の原因を纏った斬撃に作り変えた一閃を放ったのだ。

 ゆっくりと手足から崩壊して死ぬようにも作り変えた。

 さらに、セイヤの知覚速度を約1000倍に上昇させた。

 先ほどの異常な苦痛を感じる状態のままに。


 セイヤの手足は斬られ、潰され、千切られ、焼かれ、煮られ、腐るなどありとあらゆる死の原因によって崩壊していく。

 セイヤは本来の痛みの何百倍もの痛みを感じながら、約1000倍の知覚速度で一つ一つ丁寧にその痛みを認識しながら死んでいく。

 その細胞が全て消滅した時、セイヤはやっと死ねるのだ。

 たとえひき肉に成ろうがセイヤはその苦痛を味わい続ける。

 そのようにスズが作り変えたから。

 魂さえ崩壊する苦痛を感じながら、セイヤは永遠にも感じる間、地獄なんて生温いほどの苦痛を体験している。


 スズに慈悲は無い。

 スズが望むのは、仇であるセイヤが考えられない程の苦痛を伴いながら惨たらしく死ぬ事だった。


 そしてセイヤが望むのは、もはや早く死ぬ事だけであった。



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