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幕間 篠原善治郎の思い出その3

篠原くんの思い出のターン。今回は2話構成。

 夏休みも終わり、二学期に入った。


 今日は鈴も1時間目から出席していた。

 いつも遅刻してくるか欠席だからな。

 そんな鈴が出席して珍しくクラスみんな揃っているかと思ったが、残念ながら佐藤さんが休んでいる。



「せ、せせせせ、先生っ!?」

「どうしました急に?」

「大変です!!」


 そんな授業中、突如、小林さんが慌てて立ち上がった。


「こ、これ!! みんなもラ○ン見て!!」


 みんな音無さんに言われた通りスマホを取り出す。

 残念だが俺はガラケーだ。


「こ、これは!?」


 みんなスマホを蒼白な顔をしながら見つめている。


「鈴、どうしたんだ?」

「うーん、まあ見ろよ」


 鈴にスマホを渡されて画面を見る。

 映し出されている画面は、クラスのグループトークであった。

 問題はそこに書かれた内容と貼り付けられた写真であった。




 1ーAの皆さんおはようございまーす(^∇^)

 さて、本日は佐藤ちゃんのスマホを借りてこの場で発言させてもらいまあーす(^_^)

 現在佐藤ちゃんは僕たちと一緒にいるよ^_−☆

 これから4時間後佐藤ちゃんをヒドイ目にあわせまーす(^O^☆♪

 それまでに返して欲しかったら茨木鈴をここに連れてきなさい

 もちろん警察に言ってはだめだよ>_<

 それじゃ待ってるねー\(^o^)/




 そして、最後には倉庫のような所で佐藤さんが目隠しされて椅子に縛り付けられている写真とその場所と思われる倉庫までの地図が貼り付けられた。


「なんだこれ」


 なんでこんな事になっているんだ?

 どういう事なんだ?


「先生っ! 朱里がっ! 朱里がぁっ!!」


 佐藤さんと仲がいい音無さんが取り乱している。


「と、とりあえず警察に連絡を」

「でも、警察には連絡してするなって」

「じゃあ、どうするだよ!」


 みんなどうすれば良いのか分からず右往左往していた。


「みんな落ち着け!!」


 そんな時、宮本が前に出てきた。

 宮本はイケメンで文武両道でリーダーシップもあり、クラスの中心的な存在である。

 物語の学園モノか何かで出てきそうな人物だ。

 まあ、鈴が居なかったらの話だが。


「ここで慌てても何も始まらない。みんなで佐藤さんを救う方法を考えよう! そうすればきっと佐藤さんを救えるはずだ!」


 そんなに簡単なものか?

 相手は佐藤さんを完璧に拘束している。

 それに待ち構えてもいる。

 何人いるかも分からない。

 そんな都合よく佐藤さんを救う方法があるとは思えない。


「いや、そう都合よく救えるはずがないだろう」


 俺の気持ちを代弁するかの様に鈴が言った。


「だが、何か考えないと君が危険じゃないか!?」

「は?」


 鈴は宮本の言っている事が分からないかの様に首を傾げる。

 いや、宮本の中でどうなっているか分からないでもないけどそれは……。


「ああ、お前の中じゃ俺がその指定された場所に行く事が確定しているのか。バカじゃねぇの? 行くわけないだろう」

「なっ!?」


 鈴の言う通り、やはり宮本の中では鈴が向かう事は確定していたらしい。

 分からないでもないが、いくらなんでもそんな見え見えな危険な所に鈴が向かいたがるはずがない。

 誰だってそうだ。

 佐藤さんが捕らえられていて、その返却に鈴を要求している。

 それを拒む鈴を酷い奴だと思っているのだろうか?

 客観的に見れば鈴が拒むのは当たり前。

 宮本は鈴に自分の正義感を押し付けて、佐藤さんを助けに行こうとしないスズを酷い奴と思っているのだと思う。


「君が行かなければ佐藤さんは返してもらえないのだぞ!」

「俺が行ったところで素直に佐藤さんを返してもらえると思っているのか? そんな都合良い展開があるはずないだろう。確実に俺が捕まって佐藤さんもヒドイ目とやらに合わされるよ」

「だが、君が行かなければ確実に佐藤さんが危ないじゃないか!」

「いや、普通に警察に任せればいいじゃん」

「警察には言うなって言われているじゃないか!!」


 鈴が正論で警察に任せればいいと言うが宮本はそれでは佐藤さんが危険だと思い認めていない。

 宮本の中で向かうとされている鈴もよっぽど危険だと思うのだが。


「じゃあ、どうするの?」

「それを今から考えるんじゃないか!」

「たかが学生ごときに何時間かけたって都合よく救える方法なんて見つからないよ」


 鈴は呆れたようにしながらスマホを取り出して電話をかけ始めた。


「なっ!?」


 それを見て宮本は慌てて阻止しようとするが鈴はひょいと避ける。


「あ、もしもし、黒沼さん? あのね……」

「茨木! 止めるんだ!」


 宮本は鈴に止める様に言うが鈴は無視して話続けた。


「えー、仕方ないな。わかったよ。その代わり頼むよ?」


 鈴は電話を終えてスマホをポケットにしまう。

 警察に連絡したにしてはフレンドリーな感じだったが。

 いや、鈴は警視総監とも知り合いなんだ。

 他に警察の知り合いがいてもおかしくない。

 その人に電話したのか?


「安心しろよ、110番ではないから。それと、仕方ないから行ってあげよう」


 110番ではないか。

 鈴は先ほどまで拒でいたのに急に意見を変えた。

 電話で何かあったのだろうか?


「さて、じゃあ行ってくるよ」


 そのまま鈴は一人で教室を出ようとする。


「待て!」


 それを制止したのは先生だ。


「どうしたんだ先生。早く行かないと佐藤さんが危険じゃない?」

「だが、このままだと茨木も危険じゃないか。先生としてこのまま生徒をそんな危険は場所に行かせるわけにはいかない」

「いや、俺も行きたくは無いんだけどね」


 その後先生と鈴は小声で何か話あった。


「……本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だって」

「そうか、茨木を信じよう。だけど俺も行く。それだけは譲らない」


 先生は突如、鈴についていくと言い出した。


「俺も行くぞ! 佐藤さんを助けようとしなかった奴に任せられない! 俺が佐藤さん助けてみせる!」


 宮本もついて行くみたいだ。

 その後宮本は数が多い方がいいなどと演説して、10名ほどが指定された場所に向かうことになった。

 演説の内容は宮本の正義感丸出しといった感じだったが意外と佐藤さん救出の参加人数が多くなった。

 宮本の正義感に当てられてではないと思う。

 たぶん、佐藤さんがかなりの美人で憧れている人が多いからだ。

 その証拠に大半が男子なのだから。


 ちなみに、俺も行く事になった。


「ここまで来たらお前も来いよ。大丈夫大丈夫、お前もそこそこ強いし。それにお前の顔を見て逃げ出すかもしれないぞ?」


 などと鈴が言ってきて、周りの空気からして参加せざる得なくなった。

次回予告、鈴くん無双

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