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53 アルマの置き土産

前回のあらすじ

アルマ「またの!」

「帰っちゃいましたね」


 シアンが少し寂しそうにポツリとつぶやく。


「寂しそうだな」

「ええ少し。何だかあの子の事ほっとけないんですよね。まるで世話のかかる娘や妹みたいな感じがして」


 俺から見てもそんな感じだった。


「むー、アルマお姉ちゃんが帰っちゃってつまんないの」


 シエルも結構アルマに懐いていたしな。

 少し寂しいのだろう。


「そう言えば、スズ、最後に何かアルマ様から貰っていましたよね?」

「ああ、これだな」


 そう言って俺は持っていた白い宝石の球、宝珠をシアンに見せる。


「これは?」

「んーと、ダンジョンコアだな」

「何でダンジョンコアなんです?」

「あれ、お前知らなかったのか? この世界にあるダンジョンは全てアルマが関係しているぞ」

「な、なんですって!?」


 ハルさんから聞いていなかったのか。

 シアンにダンジョンについて説明する。

 アルマから聞いたものだけど。


「じゃ、じゃあ、そのダンジョンコアでダンジョンを作り出せるのですか?」

「そうみたいだね。まだちゃんと調べていないから何ができるのかは分からないけどな。ちょっと調べてみるか」


 ダンジョンコアを『暴食(グラ)』で捕食する。

 アルマは使い方を教えてくれなかったからな。

 手探りで使うよりはある程度『暴食(グラ)』で解析してから使った方がいいだろう。


「ダンジョンを自在に作れるなんて。とんでもない事ですよ」

「まあ、頑張ったら国くらいは作れるかもね」

「こんな事他に知られたらアルマ様狙われますよ!」

「実際に狙われた事があるんじゃないかな?」

「えっ?」


 アルマはダンジョンを作れる事を隠している様子はなかった。

 ダンジョンについて話してくれたのは俺が聞いたからだけど、隠しているのなら答えないだろう。

 だったら人でアルマがダンジョンを作れる事を知っていた者もいるはずだ。


「でも、高々人ごときにアルマを捕らえて利用できると思う?」

「無理、ですね。レヴィア様もいらっしゃいますし」

「たぶんそんな事した国だったりは滅んでいるんじゃないかな?」


 問題なのは、アルマ、ないしはレヴィアやアルマの関係者が国を滅ぼすほど激怒した事があるだろうという事だ。

 その事については知らない方がいいだろう。


「まあ、だからってアルマの能力を言いふらすなよ?」

「当然ですよ。自分には影響が無くても周りが影響を受けるって事もありますしね。アルマ様の不利益な事はしませんよ」

「だからってわけじゃないが、ダンジョンコアはハルさんにもやらんぞ?」

「ええ、いくら国の役に立つと言っても危険ですしね。そこからアルマ様の事が漏れるかもしれませんし。お父様も寄越せと言わないでしょう」

「うん。それにこれは国を運営する上では便利すぎると思う。使い方を間違えれば近い将来破綻するだろうね」

「そうなのですか?」

「そうなのです」


 という事でダンジョンコアは個人的に使いましょう。

 そう言えば、世界最大の宗教であるミルセフィア教の総本山、神聖国ミルセフィアには『神の試練』と言われるダンジョンがあると聞いた事がある。

 なんでも、このダンジョンでは死なないらしい。

 まだ解析途中であるのだが、あながち嘘でも無さそうだ。

 おそらくアルマの作ったダンジョンコアを使っているのだろう。

 案外他の神王も関わっているかもな。

 死なないダンジョンとか修行にはもってこいだし。

 ダンジョンに才ある者たちを放り込んでひたすら鍛える。

 強い人材が欲しい神王の目的に一致する。

 やっぱり、死なないダンジョンには神王が関わっているだろう。

 そのダンジョンのある神聖法王国ミルセフィア、ひいてはミルセフィア教も神王に関わりがあるんだろうな。

 確か、ミルセフィア教の教義に自らを鍛える事を美徳とする、みたいな教義あったと思うし。

 うーん、神王が人材確保の為にミルセフィア教を作った?

 うわっ、可能性あるな。

 怖いわー、やっぱり神王怖いわー。

 機会があったらアルマかレヴィアに聞いてみよう。

 ちょっと興味あるし。


 そして、この日はダンジョンコアを解析しながらシアンやシエル話したりしながら過ごした。




「おにいぢゃーん」


 深夜、寝ていると、ゆさゆさと揺さぶられて目がさめる。


「ん、どうしたシエル?」


 どうやらシエルに起こされたみたいだ。

 屋敷にはシエルの部屋も用意しているのだが、俺と一緒に寝たいと言うので寝る時は俺の部屋で寝ている。

 そして、寝ている俺を起こした張本人を見ると泣いていた。


「ぐすっ。おにいぢゃん、おうち、お家に帰りたいよー」


 あちゃー、このタイミングでか。

 小さい子って親元離れて泊まったりしていると、急にホームシックになるよな。

 シエルはなかなか帰りたいって言わないなーって思っていたけど急になってしまったな。

 おそらく帰って行ったアルマを見て、自分も家に帰りたいなって思ってしまったのだろう。

 そして、父さんにも母さんにも数日会っていなかったので寂しくなったんだろうな。


「ほら、もう夜中だから父さんも母さんも寝ているし家に入れないよ」

「でもぉ」

「シエルが寝るまで起きておいてあげるから、今日はもう寝よう、な?」

「ゔん。わがった」


 そして、シエルに寝物語を語ったりしながら何とか寝かしつけた。

 一瞬、魔術で寝かそうかと思ったが、シエルは魔法抵抗力が高いので、失敗したら抵抗した事によって余計に興奮して眠れないようになると思ったので止めた。

 シエルが眠った頃にはもうすぐ朝日が昇るといった時間帯だったので、そのまま起きている事にした。

 まあ、俺は寝なくてもいい体質なので活動には問題無いのだが。

 本当に不眠不休でも問題無いって事だ。

 昔、半人半鬼に進化した事でそうなった。

 今でも寝ているのは半分趣味だ。

 実はハルさんもそんな感じだと言っていたな。

 半精神生命体以上の者はそうなのかな?

 爺やとセレスも寝なくても問題無いって言ってたし。

 実際二人とも偶に寝ていないからな。


 何にせよ明日の朝にはシエルを村に送り届けないとな。

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