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47 海神王の力試し

まさかのハル以来の対人型戦闘

「っっ!!」


 海神王から放たれた突きは今まで見たこともない速さと威力だった。

 それこそハルさん以上の。

 なんとか刀で防ぐがそのまま吹き飛ばされた。

 ただ、『暴食(グラ)』にて槍を通じて海神王の魔力を吸収する事には成功した。

暴食(グラ)』は防御するだけで相手のエネルギーを奪う事ができる攻防一体の能力だ。


 海神王は吹き飛ばされている俺にそのまま迫り追撃してくる。

 なんとか体勢を立て直し、これを迎撃する。

 海神王はその超一流の槍さばきで反撃の隙すら与えずに攻撃してくる。

 単純な技量ではそこまで変わらないように感じるが海神王の身体能力が俺より遥かに上だ。

 海神王が突きを放てば体を無理やり捻って回避する。

 先程の突きで正面から受ける事はできないとわかっている。

 回避不能であれば刀で受け流し、それも無理なら刀でうける。


 もちろん海神王は突きだけを放ってくるわけもなく、まるでミキサーのように激しく槍を振り回し、一方的な攻撃をしかけてくる。

 そこに隙はなく防御一辺倒になっていまう。

 それでも『暴食(グラ)』で攻撃できているだけましか。


「剣さばきも十分! おまけに私の魔力を奪っている! 素晴らしいわ!」


 海神王は嬉しそうに喋りながら攻撃してくるが俺には喋る余裕なんて無い。

 先ほど海神王は力を試したいと言っていたが少しでも油断するとそのまま殺されてしまいそうだ。

 全ての攻撃が俺に致命傷を与えるかもしれない必殺の一撃である。

 それが俺の視認速度を超えそうな速さで振るわれるのだ。

 ある程度手を抜いて時間を稼ごうと思っていたが、とんでもない。

 すでにほぼ全力を出している。

 下手に能力を見せたくなかったのだがそんな事言っていたらそのまま死んでしまいそうだ。


「はああああ!」


 海神王は蒼く輝く闘気を槍に纏わせた突きを放ってきた。


「っっっっっ!」


 なんとか防御するが凄まじく重くそのまま遠くまで吹き飛ばされてしまう。

 まるでスーパーな野菜人に吹き飛ばされている気分だ。

暴食(グラ)』で闘気を吸収してなおもこの威力。

 さすがは神王、とんでもないな。


「あら、やるわね。でもまだまだよ。もっとあなたの力を見せてちょうだい!」


 海神王は再び俺に突撃してくる。

 幸い、遠くまで吹き飛ばされたおかげで距離はある。

 俺は刀を上段に構えて集中、斬撃を放つ。


「天翔烈空斬!!」


 放たれた巨大な斬撃は超スピードで海神王に向かっていくが、


「あまい!」


 海神王は槍で俺の天翔烈空斬を切り裂いた。

 だが、本命はここからだ!

 切り裂かれて二つに割れた斬撃はまるでブーメランのように旋回して後ろから海神王を襲う。

 そうなるように『調理師』で作り変えたのだ。

 さらにもう一度、正面から天翔烈空斬を放つ。

 天翔烈空斬によるはさみ打ち。


 海神王は前方の斬撃に気を取られ、後ろからの斬撃は不意をついて海神王を襲う。

 しかし、突如下の海から海水が盛り上がり、後ろの斬撃を完全に防いでしまった。

 さらに前方の斬撃も槍を回転させて防御する。


「ふふふ、やるわね」


 海神王は笑みを俺に向けようと前方を見るがそこには俺はいない。

 俺は二度目の天翔烈空斬に紛れて海神王のすぐ後ろまで来ていたのだ。

 いくら、本気の天翔烈空斬でも海神王をどうにかできるとは思ってない。

 ならばそれを囮にして俺の最強の対人技を当てる事にした。


「爆神双掌!!」


 海神王の背中に必殺の掌底が放たれる。

 手加減のない本気の爆神掌。

 それを両手で一気に放った。

 すぐさまバックステップをとって距離をとる。

 ……どうだ?


「ふふふ、まさかここまでやるなんてね。予想以上よ」


 海神王はまるでダメージを受けた様子もなく悠然とそこにいた。


「でもまだね。それじゃまだ奴らには届かない。もっと戦えばあなたの力を引き出せるかしら?」


 奴らってなんだ?

 神王の敵?

 いや、余計なことは考えている暇はない。

 さっきの攻撃は今俺が可能な攻撃の中で最高の威力をもった攻撃だ。

 それでもダメージが無いのであれば手段は後一つしかない。

 最悪な事に海神王はまだまだ戦う気満々のようだ。

 仕方ないな。

 やりたくないんだけどな。


「コールデーモンサモン!!」


 悪魔召喚魔術を発動する。

 目の前に巨大な魔法陣が現れ、そこから大量の悪魔が現れる。

 下位悪魔(レッサーデーモン)から上位悪魔(グレーターデーモン)まで。

 そして、その中に一柱だけ凄まじい存在感を示す者がいた。


「スズ様、およびで?」


 名前はリオン。

 以前俺が名付けた悪魔だ。

 名付けた後に初めて召喚したが以前よりも遥かに高い魔力を感じる。


「随分と雰囲気変わったな」

「はっ! おかげさまで大悪魔(アークデーモン)に至る事ができました」


 なるほどあの伝説の大悪魔(アークデーモン)か。

 確かにそれほどの力を感じる。

 それでもあの海神王には届きそうにないが、今は少しでも高い力を持つ存在が必要だったし好都合だ。


「命令だ。あいつを俺に近づけるな!」

「かしこまりました」


 大量の悪魔に海神王の足止めを命ずる。

 悪魔達は一斉に海神王に向かっていく。


「これほどの悪魔召喚。しかも大悪魔(アークデーモン)までいるわね。素晴らしいわ! でも今更こんな奴らごときじゃ私の相手になんかならないわよ?」


 海神王は凄まじい勢いで悪魔達を倒していく。

 だけどそれでいい。

 俺の目的は時間稼ぎだ。


 俺はその場に留まり集中する。


「この気配。まさか神王で?」

「あら賢い悪魔ね。そうよ、私は海神王レヴィア・アトランティスよ。あなたの名は?」

「私はリオンと申します。あちらにおわすスズ様の忠実な僕でございます」

「やっぱり名前持ちね。大悪魔(アークデーモン)を従わせるなんてやっぱり凄いわね」

「ええ、スズ様は素晴らしいお方です。申し訳ごさいませんがスズ様の命令でございます。私があなたの相手をさせていただきます!」

「ええいいわ。いらっしゃい」


 そして、あっという間に最後の一柱となったリオンと海神王の戦闘が始まるがリオンはあっけなく敗れ消滅していった。


 すまないリオン。

 でも完成した。


「さて、悪魔達は全員倒したわよ」

「そうみたいだね。でもこれはどうかな?」


 俺は手を海神王に向けて、究極の奥義を放つ。


「ラストリゾート!!」


 放たれた巨大な閃光は海神王を飲み込もうとする。


「これはっ!? 水蛇転生!!」


 しかし、海神王から放たれた水の蛇と激突し、押し返され、飲み込まれ、俺は世界から跡形もなく消えていった。




「え、スズ? どうしましたの!?」


 なんて事はない。

 俺は転移でビーチに逃げていた。

 ちょうどシアンの近くに転移したようだ。

 初めから勝てないと分かっていたので海神王と戦闘になる前から転移の術式を構築していっていたのだ。

 バレないようにゆっくりと緻密に構築していたため時間がかかってしまった。

 下手に目の前で転移すると転移先の座標を割り出されて追いかけられるかも知れないのでいろいろ隠蔽するのにも時間がかかった。

 それでも正面から転移するのは危険だと思い、ラストリゾートで目眩ししてそれを囮に転移で逃げて来たのだ。


 以前、古代金剛亀竜(エンシェントアダマンタイマイ)でラストリゾートと使ったおかげで熟練度が増して転移を使う事ができるくらいには余力を残す事ができるようになった。

 逆に言えば前に使ったものよりも威力は低いものになってしまった。

 だからこそ悪魔がやられるまでの短い時間でラストリゾートを放てたのだがな。

 それでも古代金剛亀竜(エンシェントアダマンタイマイ)くらいならオーバーキルしていたほどの威力だ。

 まさか押し負けるとは思ってもいなかった。

 あと少し転移するのが遅かったらあの蛇みたいなのに飲み込まれて死んでいた。


「シアンか。ちょっと疲れた。寝る。あとよろしく」


 そう言って俺は眠りについた。

 誰かが運んでくれるだろう。


 ー▽ー


「まさか逃げられるとはね」


 失態のように聞こえるが海神王の愉悦の表情を浮かべている。


 海の中で魔王に匹敵する魔力を感じて来てみれば一人の少年がいた。

 神王たる自身を持ってしてもその総魔力量は見抜けなかった。

 明らかに強者だった。

 だから少年、スズに興味がわいた。

 力を試してみればその力に驚愕した。

 申し分ない技量、魔力、能力。

 特に最後の攻撃はまともに直撃すれば死ぬ事は無くとも甚大なダメージを負っていたかもしれない。

 魔王程度なら有無を言わさずに消滅していただろう。

 それほどの威力であった。

 さらに、それ程の攻撃を囮にして逃げるとは思いもよらなかった。

 普通に目の前で転移したならその座標を解析して追うことができるが、その痕跡すら残さずに転移していった。

 まさか神王の一柱たる自身から本当に逃げ出せるとは思いもよらなかった。


(もしかしたら私たちの領域に到達するかもしれないわね)


 数十年前、ハッシュバルトと名乗る者と出会った時と同じくらい。

 いや、それ以上の資質をレヴィアは感じていた。


(そういえば、ハッシュバルトの魔力も感じるわね。彼の事も知っているかもしれないわ。久しぶりに会いに行きましょう)


 そう思いレヴィアは行動を開始する。

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