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46 海神王

「じゃあ、行ってくるよ」


 そう言って俺は船から飛び降りる。

 釣り大会は終わったが、まだ日が沈むまで時間があるので、それまでたくさんの海の幸を採ろうと思ったので漁をする事にした。

 漁と言っても船の上から網なんかで漁をするのでは無く、ある種の素潜りだ。

暴食(グラ)』を使って魚を大量に捕獲するのだ。

 魂の小さい魚なら捕食しても殺さずに『暴食(グラ)』内に生きたまま保管する事ができる。

 エネルギーを与えて生かすなど、上手いこと管理すれば日持ちもするので、この際大量に捕まえておこうと思ったのだ。

 また、『暴食(グラ)』内に大量の空気がある為、呼吸をする為にいちいち海面に上がらなくてもいいのでずっと潜っていられる。

 そんなわけで大量の海の幸を捕獲するのだ!


 海中を泳いでめぼしいものを捕食する。

 俺の方が魚よりもスピードが遥かに速いので難なく捕食することができる。

 まだ見ぬ魚や貝を求めて沖へ沖へと進む。

 俺のスピードで数時間も泳げばとんでもない距離になった。

 途中でサメの魔物が出た時はかなりビビった。

 まあ、弱かったし、すでに『暴食(グラ)』の中だ。

 でも、めっちゃ怖かった。

 必ずフカヒレにしてくれるわ!


 さて、いっぱい採れたしそろそろ帰るか。

 そう思った瞬間、ありえないほどの強大な魔力の塊がとんでもない早さでこちらに向かって来ている事に気づいた。

 慌てて刀を取り出し警戒する。


 俺でも認識するのが困難なスピードであるにも関わらず周囲に一切の影響を与えずに目の前に現れたのは人だった。

 いや、人型の何かだった。

 長い青い髪をなびかせ、水着のような薄い衣を纏った恐ろしいほどの美女がそこにいた。


「ねえ、あなた誰? 名前は?」


 しかし、彼女から感じられる魔力は途方もなく俺やハルさんなんかじゃ比べものにならないほど大きな魔力を感じる。

 読み取れただけでこれほどの魔力を感じるのだ。

 実際はどれほどの魔力を持っているのか考えることすらできない。

 何者なんだ?


「名前を聞く前に自分の名前を先に言うべきじゃないかな?」


 俺は極めて冷静であろうとする。

 確実に勝てない。

 彼女がここに来たという事は何かしら俺に用があるのだろう。

 もし戦いになった時の為に備えて会話で時間を稼ぐ。


「それもそうね。いいわ。私の名前はレヴィア・アトランティス。海神王レヴィア・アトランティスよ!」

「……海神王」


 海神王……神王。

 神王、それは世界の支配者とも守護者とも呼ばれる存在。

 六柱いると言われている神王だがそれが何なのかは知らない。

 ただ、魔王よりも上の存在であると言われている。

 世界で唯一SSSランクのあの有名な魔王も神王の一柱であると知られているが、それと同等の存在が目の前にいる。


「そうか。俺はスズ・ロゼリアだ。で、その神王の一柱が俺に何のようかな?」

「別に用は無いわよ」


 あれ、そうなの?

 てっきりこいつの領域に入ったとかって思っていたけど。


「じゃあなんでここに?」

「かなりの魔力を感じてね。興味があったから来てみたのよ。その正体があなただったわけ」


 まじかよ!

 俺は普段から魔力を抑えているし読み取られないようにしている。

 それを感知しているのか。

 ハルさんにすらできないのに。


「そうなんだ。じゃあ俺に用事はないってことだな?」

「うーん、そうね」


 レヴィアは顎に手を当てて考えるような仕草をする。


「よし、私と戦いなさい!」

「はあ? なんでだよ。俺に戦う理由なんてないぞ!」

「私はあるのよ。あなたの力に興味が湧いたわ。少し確認させてもらうわよ!」


 そう言っていつの間にか取り出した三又の槍を構えてきた。


「そっか。なら仕方ないな」


 俺も持っていた刀を構える。

 そしてすぐさま反転し、全力で海面に向かって移動する。

 勝ち目なんて無いのでさっさと逃げるに限る。

 付き合う理由なんて無いしな。


「あ、待ちなさい!」


 後ろから海神王の声が聞こえてくるけど無視だ無視。

 ザバァァァンッ!と大きな水しぶきを上げて海面に上がり、更に上空へと逃げていく。


「この! 待ちなさいよ!」


 しかし、回り込まれてしまった! 

 あ、ふざけてる場合じゃないな。

 まあ、さっき俺の目の前に来た時のスピードから考えたら単純に逃げられるとは思っていなかったけど。

 はぁ、スピードには自信があるんだけどな。


「追いかけてくんなよ! 俺は勝てない相手とは戦わない主義なんだ。戦う気はないぞ!」

「へぇ、ある程度の私の力が分かるのね。ますます戦いたくなったわ」

「なんでだよ! 弱い奴をいたぶるのが趣味なのか!?」

「そんなわけないわよ! あなたの力に興味があるだけよ」

「あんたから見たら俺の力は大したことはないだろう? 見逃して欲しいんだけど」

「ふふふ、どの口が言っているのかしら。私が読み取れるだけで上位魔王クラス。隠蔽されてもいるから更に上。あなたは十分に強者よ。だからこそあなたの力を確かめたいの」


 どうして神王直々にここまでして俺の力を確かめたいんだ?


「将来自分の敵になるかもしれないからか?」

「いいえ、将来私たちの味方になるかもしれないからよ」


 どういうことだ?

 配下に加われとかそういう話か?

 だったらお断りなんだけど。


「さて、話はここまで」


 海神王は再び槍を構える。

 今度は逃がしてくれなさそうだ。

 仕方ない覚悟を決めよう。

 相手は海神王と言うだけあって海はあちらのフィールドだろう。

 普通に逃げることができるとは思わなかったので逃げる時に上空へと向かっておいた。

 ここなら完全に相手のフィールドという事はないだろう。

 真下に海が存在するが、少なくとも海中で戦うよりはましなはずだ


 俺も刀を構える。


「ふふふ。やっとやる気になったみたいね。それじゃ、そろそろいくわよ!」


 海神王は突進して神速の突きを放ってきた。

スズさんピーンチ

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