43 海への道中
王都から2台の馬車が出て行く。
俺たちが乗っている馬車だ。
今日からグローリアス家のプライペートビーチに向かう。
片方の馬車には、父さん、母さん、ハルさん、リーシアさん、エシェントさんの大人組が乗っている。
エシェントさんは一応護衛として付いてきた。
またもう片方の馬車には、俺、シエル、シアン、ジーク、ティリア、ミラルド、クレセナ、そしてティリアの妹の子供組が乗っている。
ソラも一緒だ。
このメンバーで海へ行く事になった。
王家が揃って外へ行くにしては護衛が少ないが、このメンバーだけで一軍を相手できる戦力があるので安全に関しては心配ない。
そして、ティリアの妹だが、名前はフェルミナ、6歳だ。
シエルと同い年だ。
「ティリアに妹がいることは知っていたけどシエルと同い年とは思わなかったよ」
「あら、言っていませんでした?」
「ああ、でもよかったよ」
ちらりとシエルとフェルミナを見る。
「ねぇねぇ、フェルミナちゃん。これ、美味しいよ。お兄ちゃんが作った飴なんだ。フェルミナちゃんにもあげるね」
「わぁ、ありがとうございます。あの、この子を触ってもよろしいですか?」
フェルミナはキラキラとした目でソラを見ている。
「ソラの事? いいよ! ソラもいい?」
「ワン!」
「ありがとうございます。では……ふわぁ、モフモフです!」
フェルミナなしばらくソラをモフモフしていた。
満足したのかソラを離すと、持っていたカバンから本を取り出した。
「あの、これ、このご本持ってきたのですけどシエルちゃんも一緒に読みませんか?」
「うん! いいよ!」
シエルとフェルミナだがすっかり意気投合している。
出会って間もないのにまるで親友みたいに仲良くなっている。
シエルは今までいなかった同い年の子供と友達になれてとても嬉しそうだ。
「そうですわね。シエルちゃんはフェルミナと同い年と聞いていたので連れてきたのですが、もうすっかり仲良くなっていますわね。フェルミナにはあまり友人がいないのでよかったです」
シエルは周りに子供がいないので友達と言える人がいなかったのだが、フェルミナも公爵家の娘という高い地位を有しているのであまり友人がいなかったそうだ。
そんな二人が友人になってティリアも嬉しそうにしている。
ちなみに、この馬車は以前遠征で利用した馬車だ。
そのため行者は必要ないのだが今回はミラルドが行者をやっている。
また、大人組の馬車も俺が作った馬車である。
以前、ハルさんから頼まれて作ったのだ。
ハルさんの希望に沿うように作ったオーダーメイドだ。
たくさんお金を頂いた。
手間暇考えればありえないくらいのお金をもらったが、ハルさん曰く、ほぼ俺にしか作れないだろうし、価値が高いとのこと。
まあ、お金には困っていないけど有るにはこしたことないしね。
そして、ハルさんの馬車だが中にはワインセラーがある。
今頃飲んでそうだな。
何しろ昔のパーティーメンバーだし。
話す事も多いだろう。
カラカラカラカラと馬車は進む。
王都からだいぶ離れたかな。
海までそう遠くないのでこのスピードだと夜には着くそうだ。
これでもゆっくり走っている。
この馬車を引いているゴーレム馬なら今のスピードの5倍は軽く走れる。
ただ、大人組の方の馬はゴーレム馬ではなく普通の馬なのでそんな事は出来ない。
まあ、ただ目的地に向かうだけで早く向かってしまうのも味気ないからね。
旅をするならこれくらいがちょうどいいだろう。
そんな中、奴らがやって来たらしい。
テンプレだ。
馬車での旅の最中と言えば奴らだ。
魔物に襲われてピンチになっている他の馬車。
もっとも、直接見ていないのだが。
突然馬車が止まったので不審に思っていると、ミラルドがトラブルが発生したと報告してきた。
でも、大した事は無かったらしく、しばらくすると馬車は動き出した。
ミラルドは外での出来事を見ていたので、後に聞くとこうだ。
商人の馬車が魔物に襲われていて苦戦していた。
通り道だったので避けて通るのも面倒だったのでハルさんとエシェントさんが魔物を全滅させた。
そこまで良かったのだが、商人がハルさんの存在に気づき、しつこく話しかけてきたのだ。
ハルさんは国王であり、一介の商人が話す事などほぼ不可能だ。
しかし、そんな存在が目の前にいる。
チャンスだと思った商人は助けられた恩も忘れ、しつこくハルさんに話しかけた。
結果、ハルさんが苛立ち、睨みつけると商人は慌てて何処かへ行った。
そうミラルドは事の顛末を話した。
いやー、テンプレってあるもんだね。
俺は何もしていないけど。
その後は特に何も事件は無く、無事に海に辿り着いた。
辿り着いたと言ってもすでに夜で、海で遊ぶのは明日からだ。
今日からグローリアス家の保有する別荘に泊まる事になっている。
さすがは王家の保有する別荘と言ったところか、とても大きな屋敷である。
俺の屋敷よりも大きい。
管理も大変だろうに。
別荘の管理人に迎え入れられ、それぞれ部屋を割り当てられた。
今日はもう寝るだけだ。
明日からたくさん遊ぶぞー!
難産だったぜ。移動中の話って書きにくい。