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42 そうだ海へいこう!

「海へ行きませんか?」


 夏の長期休暇、シアンは朝から屋敷にやってきて開口一番にいってきた。


「海?」

「ええ、海です。この長期休暇に王家の所有するプライベートビーチに行く事になったのですがスズも一緒に行きませんか?」


 海かー。

 そういや今世で海は行ったことないな。


「うーん。どうしようかな」

「なんだったらご家族も一緒にどうです? 私の両親も会いたがっていましたし」

「そうだな。明日、村に帰るつもりだったしその時に聞いてみるよ」

「はい、ぜひそうしてください」

「それで、いつ行く気なの?」

「えーと、10日後です」

「わかった。すぐに返事をするよ」



 そして翌日、俺は転移で村に戻ってきた。

 4ヶ月くらいしか離れていなかったのに少し懐かしく感じる。

 ここは何も変わらないな。

 真っ直ぐに我が家に向かう。

 家の玄関の前に立つと、庭の方から犬の鳴き声が聞こえてきた。


「ワンワンワンワンワン!」


 そして、庭から玄関の前に立つ俺に向かって走って飛びついてきた。


「おお、元気だったかソラ」

「ワン!」


 返事をする様にソラは吠え、俺の顔を舐める。

 とても嬉しそうだ。


「ソラ? どうしたの?」


 庭の方から今度は小さな少女がやってきた。

 俺の妹のシエルだ。


「お兄ちゃん!!」


 シエルはタタタタと走ってきて俺に抱きついた。


「帰ってきたの!?」

「おう。ただいまシエル」

「おかえり!」

「ちょっと大きくなったな」

「えへへへ、そう?」


 俺はシエルの頭を撫でてやる。

 シエルは気持ちよさそうに目を細める。


「よし、シエル。家に入るか」

「うん!」


 シエルは俺の手を引っ張って玄関のドアをあける。


「お母さん! お兄ちゃんが帰ってきたよ!」

「あら、スズ帰ってきたの」

「母さん、ただいま」

「うふふ、おかえりなさい。王都はどう? ちゃんとやっていけてる?」

「うん、大丈夫だよ」

「お兄ちゃん! お兄ちゃん! いつまで家にいるの?」

「うーん、2、3日かな?」

「えーーー! もっといてよ!」

「どうかな」

「ほら、あなた達、こんな所で話していないで中に入りなさい」

「はーい」


 母さんに促され家に入る。

 こうして久しぶりに帰ってきた。



「海に行かない?」

「海?」


 夕食の時間、俺はみんなに海に行かないかと聞く。


「うん。シアンに誘われたんだ。それでみんなもどうかって」

「海か。しばらく行っていないな」

「そうよね」

「海! 行ってみたい!」


 シエルは行きたそうにしている。

 話で聞いたくらいで見たことないもんな。


「そうね。あなた、せっかくだし行きましょうよ。シエルも行きたいみたいだし」

「そうだな。行くか」

「わかった。じゃあ、シアンに伝えておくよ」

「ふふふ、楽しみね」

「海にはいつ行くんだ?」

「えーと9日後かな。だからそれより前に王都にある俺の家に来るといいよ」

「そうね。スズは2、3日ここにいるのよね?」

「うん」

「だったら、その時にみんなで王都に行きましょう」

「そうだな。スズ、お前の家にはあの人たちもいるんだろ?」

「うん、今もいるよ」

「そうか。一度会っておきたかったからちょうどいいな」


 あの人たちっていうのは爺やとセレスの事だ。

 父さんと母さんには手紙で二人のことを伝えてある。

 爺やもセレスも両親に会いたがっていたのでちょうどいい。

 こうして海へ行くことが決まった。




 さらに3日後、俺たちは王都の屋敷に転移する。


「わあ、おっきい!」

「そうだろ。頑張って作ったからな。それじゃ、入ろうか」


 みんなを引き連れて玄関の扉を開ける。


「ただいま」

「「おかえりなさいませスズ様。そして、ようこそいらっしゃいました大旦那様、大奥様、お嬢様、ソラ様」」


 俺たちは爺やとセレスによって深々と頭を下げられ迎えられる。

 大旦那様に大奥様って。


「そう。あなた達が……」

「ええ、私がスズ様の執事をしておりますゼシェルです」

「そして私が侍女のセレスティナです」

「そうか。俺がスズの父親のグレイスだ。いつも息子が世話になっている」

「私は母親のアーシャです」

「私はシエルと言います。6歳です。よろしくおねがいします!」

「ワン!」

「ほら、こんな所で挨拶していないで中に入ろう」


 玄関で挨拶していたため中に入るように促す。


「わっ! 広いお部屋!」

「本当ね」

「これはすごいな」


 リビングに向かうとそれぞれが感嘆の声をあげる。

 どうやら好評のようだ。

 まあこの屋敷は自信作だからね。

 内装は爺やとかに手伝ってもらったけど。


「さて、俺はシアンに全員海に行くことを伝えて来るよ。爺や、父さんと母さんを部屋に案内してあげて」

「かしこまりました」

「シエルは俺と一緒に王宮にいくか?」

「うん! 行く!」


 俺はシエルと一緒に王宮に向かう事にした。

 一応、両親には爺やとセレスの事を伝えているが両者とも初対面なのだ。

 どちらも話したいと言っていたしこれでいいだろう。

 ぶっちゃけ、俺が気まずいし。


「わぁ! 王都って大きいね!」

「あれ、シエル王都に来たの初めてじゃないだろ?」

「王城には行ったことあるけどそこから出たことないよ」

「そうだったっけ」


 屋敷から王城まで近いため俺はシエルと手をつないで歩いて王城に向かう。

 シエルには幻覚の魔術をかけてあり、耳の短いハーフエルフではなく、普通のエルフに見えるようにしている。

 ハーフエルフなんて普通いないからシエルを見てもハーフエルフだと思いもしないだろうが一応だ。

 また、いつもシエルの側、あるいは影の中にはソラがいるが、屋敷で待ってもらうことにした。

 ほとんど顔パスの城門を抜けてシアンの部屋に向かう。


「シアン、いる?」

「はーい、いらっしゃいませ。スズに…シエルちゃん!」

「シアンお姉ちゃん!」


 シエルはシアンを見ると俺の手を離してシアンに抱きつく。


「ふふふ、シエルちゃん大きくなりましたね」

「ほんと!?」

「ええ。それで、スズ、シエルちゃんがいるという事は?」

「ああ、みんな海に行くよ」

「それはよかったです。それでグレイスさんとアーシャさんは今は?」

「俺の屋敷にいるよ。今頃爺やとセレスと話しているんじゃないかな」

「そうですか。まあ、たくさんお話しすることがございますでしょうしね。そうだ、シエルちゃん、お菓子食べる?」

「食べる!」

「じゃあ、あちらのテーブルで一緒に食べましょう」


 シアンのいうテーブルにはすでにお菓子やら紅茶がある。

 すでに食べていたのだろう。

 俺たちがちょうど来たと。


 しばらくお菓子を食べながら話しているとハルさんがやって来た。

 普通にやって来た。

 よくシアンはハルさんを部屋に入れるな。

 普通この歳の頃の女の子って部屋に親、特に父親が入ってくるのを嫌いそうだけど。


「おお、シエルか?」

「あ、ハルさん、こんにちは!」

「おお、シエルか! 大きくなったな!」


 ハルさんは俺たちの元にやって来る。

 ていうか、シエル、会う人みんなに大きくなったなって言われているな。

 俺も言ったけど。


「ふむ、シエルがいるって事はグレイスとアーシャもいるのか?」

「うん。今は屋敷にいるよ」

「そうか。だったら後でそちらに向かおう」


 まあ、これは予想通りだ。

 父さんと母さんが来ている聞いたら家にくるだろうなと思っていた。

 おそらくリーシアさんも来るだろう。

 だったらジークも来るかな?

 夕食もうちで食べるだろうし。

 ふむ、何を作ろうかな。


「ところでお父様、何かご用で?」

「ああ、スズがこっちに来たと聞いてな。いるならこの部屋かと思って」

「じゃあ俺に用事?」

「ああ、模擬戦でもしようかと思ってな」

「お父様…」


 シアンが何とも言えない顔でハルさんを見ている。


 確かにそれはないと思うよ。



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