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40 愚か者との決別その2

 俺はチェスター侯爵邸に二人で来ていた。

 俺と爺やだ。

 俺がチェスター侯爵達と会話している間に爺やが証拠を押さえるのだ。

 爺やは生前この家の執事であった。

 チェスター侯爵邸について詳しいので、違法証拠を管理している部屋をすぐに見つける事ができる。

 また爺やなら人に見つかる事なくそれができる。

 チェスター侯爵邸にて違法証拠を探すには打って付けの存在であった。

 チェスター侯爵邸に来る時と俺の影に隠れていたので向こうからすれば俺一人で来たように見えているだろう。

 また、セレスには少数の騎士と一緒にチェスター侯爵邸近くに待機してもらっている。

 証拠が見つかればチェスター侯爵を捕らえるため騎士達と一緒にこの屋敷にやってくる手筈だ。


(スズ様、準備が整いました)


 爺やから念話が届く。

 どうやら証拠が見つかり、準備が整ったようだ。


「うん、わかった。それじゃ出てきて」


 やれやれ、やっと会話が終わる。

 こいつらの話には辟易とさせられる。


 爺やが転移で俺の側に現れる。


「これはお久しぶりですチェスター侯爵に夫人」

「お、お前は!?」


 チェスター侯爵は突如現れた爺やを見て目を開いている。


「はい、元この家の執事のゼシェルでございます」

「なっ!? お前は死んだはず! まさか、スズ! この儂に嘘をついたのか!?」


 チェスター侯爵は俺を睨んでくる。

 確かにいくつは嘘を付いている。

 でもね、その事については嘘を言ってないんだよ。


「いえいえ、私は確かに死にました」

「だったら! 何故ここにいる!?」

「それは簡単でございます。私は死後レイスになりました。その後スズ様に再会いたしまして現在はスズ様に仕えさせていただいています」


 その時、扉が再び勢いよく開けられた。


「お館様! 大変です! 王宮の騎士がお館様を国家反逆罪の容疑で捕らえると屋敷の敷地内に入ってきています」

「なんだと! 証拠も無いのにそんなこと許される筈がないだろ!」

「それが既に証拠はあると」

「なに!? そんな馬鹿なことがあるか!」

「いやいや、実際に証拠はあるんだよ。ねえ爺や?」

「その通りでございますな」

「なんだと!?」


 慌てているチェスター侯爵に爺やは懐からチェスター侯爵の違法証拠の一部を見せる。


「な、なぜ、貴様がそれを!?」


 チェスター侯爵はあからさまに動揺している。

 なぜって言われてもそりゃあなあ。


「先ほど、影からスズ様を護衛してい時に偶々見つけまして。とても重要な物でしたので王宮の騎士に送らせたしだいです」

「なっ! スズ! 貴様がこの屋敷に来たのは!?」

「なんのことかな? 爺やが俺を影から護衛している時に偶々見つけたものだろ?」


 そう言うとチェスター侯爵と夫人は俺と爺やを罵倒してくる。

「産んでやった恩を忘れたか!」とか、「お前はこの家の執事だろ!」とか、「恩を仇で返しやがって!」とか。


「はん、お前らに恩なんてあるわけないだろ。お前達が俺を殺そうとしたみたいだしな」


 俺がそう言った瞬間、後ろの扉が吹き飛んだ。

 扉の前にいた先ほど報告に来た男も一緒に吹き飛び気絶したようだ。


「お久しぶりですチェスター侯爵、夫人」


 現れたのはセレスだ。

 セレスは証拠が見つかり次第チェスター侯爵邸に騎士達と一緒に突入する事になっている。

 その際抵抗があれば騎士達と一緒に対応しながらこちらに向かうように言ってあった。

 思ったよりも早い到着だ。


「な、お前も生きて…」

「いいえ、死んで、生まれ変わりました」

「も、門番は何をしているのだ!?」

「ああ、彼らなら既に倒しています。とても弱かったですよ」

「な、奴らはAランク相当の実力があるのだぞ!?」

「そうですね。でもその程度でした」


 セレスはチェスター侯爵にゆっくりと近づく。


「ひっ」


 チェスター侯爵はセレスから放たれる強者の気配に怖気付いているみたいだ。


「あ、あ、あ、そ、そうだ! スズ! お前はこの者達に騙されているのだ! 悪いのはこいつらのなのだ! お前は儂の息子だろう!? こいつらを殺してくれ!」


 何言っているんだこいつは。

 言っている事がめちゃくちゃだな。

 まあいい。


「俺はお前の息子か」

「おお、そうだ。だから儂を助けてくれ!」

「アホかお前は」

「な、なに!?」


 俺は鬼化をして普段抑えている魔力を解放する。

 その瞬間、周辺の空間が揺れ、辺りのガラス類が全て割れる。


「お前程度が俺の親を名乗るなよ」


 そう言ってチェスター侯爵を睨みつける。

 チェスター侯爵は俺の魔力に当てられ、酷く恐怖し怯えている。

 夫人に至っては気絶している。


「な、なんだ!? その姿は!?」

「見ての通り鬼だよ。俺は無貌の鬼と呼ばれているじゃないか。だから俺をこの屋敷に呼んだんだろ?」

「な、人間ではないのか!?」

「ああ、そうだよ。人間じゃない。でも生まれは人間だ。進化したのだよ」


 俺は一歩チェスター侯爵に向かって歩く。


「俺も不本意なんだが残念ながら俺はお前達から生まれてきたみたいなんだ」


 さらに一歩歩く。


「でも、お前達は俺の親じゃない。俺の親は、父はグレイス・ロゼリア、母はアーシャ・ロゼリアだ! お前達ごときが俺の親を名乗るな!」


 さらに一歩、大きく踏み込むように歩きチェスター侯爵の目の前に到達する。

 そこで、チェスター侯爵は慌てて懐から宝珠を取り出した。


「ま、待て! これを使えば地下にいる人質が死ぬぞ!? 人質の首輪が締まって死ぬ! 門番たちの家族がいる! 儂を助けてくれるならそやつらを解放してやってもいい」


 ああ、それで地下から子供も含めて複数名の気配を感じるのか。

 Aランクほどの者がこんな家の門番をしているのは家族を人質に捕らえられているからか。

 んー、なるほどな。

 目視でだが解析した結果、あの宝珠はスイッチ、リモコンになっているらしい。

 魔力を流すと遠隔起動して首輪が締まるのか。

 チェスター侯爵は人質がいる事を思い出したからか少しずつ余裕を取り戻しているように見える。

 アホか?


「爺や?」

「ええ、すでに解放しています」

「なっ!?」


 当然、爺やは地下の人質なんて見つけている。

 ただ、解放しただけなのでその場から動いていないのだろう。


 念のため、チェスター侯爵の持っている宝珠を奪い取り、破壊する。

 チェスター侯爵程度には防ぐ事なんてできない。


「クズだな」


 そしてチェスター侯爵の胸ぐらを持ち上げる。


「ひ、ひぃぃ! 助けてくれ! か、金ならいくらでもやる!」


 チェスター侯爵は俺に泣きながら懇願してくる。


「爺や、セレス、お前達は何か言う事はあるか?」

「ふむ、そうですな。身の程を弁えないからこういう事になるのですよ。哀れですな。ただ、スズ様をお産みになられた事だけには感謝いたします。おかげでスズ様という素晴らしい主に出会えたのですから」

「そうですね。たった一つ、それだけは感謝できますね。でも、それだけです。この後は罪を償って死ね!」

「だ、そうだよ? 良かったな感謝されて」

「た、たすけ、たすけて!」


 最後までそれか。

 本当にこんなのが実の親なんてな。


「はあ、哀れな。まあ、この後は捕まっておそらく処刑だろうな」

「しょ、処刑はいやだ!」

「お前が騒いだって誰も助けないし助からない。これでお別れだ」


 俺はチェスター侯爵をさらに高く上げる。


「い、いやだ! たすけっ…」


 そして高く上げたチェスター侯爵を床に向かって振り落とす。

 チェスター侯爵は床に打ち付けられ、気絶した。




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