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37 正面から堂々と潜入して暴れまわる話

「おーい、じゃまするぞ」


 ハルさんが突然やってきた。

 まあいつもの事だが珍しい時間帯だ。

 今日は早く帰ってきたため俺は家にいるが普通は居ない時間だ。

 それなのにハルさんがやって来た。


「ってスズにシアンも居るのか。今日は早いな」

「ハルさんこそやって来るには早い時間だな」

「ああ、お前に用事があって帰ってくるまで待っていようかと思っていたのだがちょうどいい」

「用事って?」

「ああ、一つお前に依頼をしたい」

「お父様、私は席を外した方が良いですか?」

「いや、そろそろお前の耳にも入る頃だから一緒に聞いておけ。あまりいい話ではないがな」


 ハルさんの依頼内容はこうだ。

 最近王都で行方不明者が多くなってきている。

 特に若い娘などが多い。

 その行方不明者達は奴隷として王都のどこかで売られているそうだ。

 一度、騎士達を動かして奴隷販売をしている組織のアジトを襲撃したのだが、事前察知されもぬけの殻だったそうだ。

 その事から情報をつかむ事ができる何人かの貴族も関わっているであろうとの事。

 そして先日、新たなアジトがわかったので襲撃したいのだが、騎士を動かすとまた察知される恐れがあるので単独でも制圧できる俺に襲撃して欲しいとのことだ。


「……私、王都がそのような事になっているなんて知りませんでした」


 シアンが申し訳なさそうにしている。

 この国の王女として思うところがあるのだろう。


「気にするな。この事態を把握しているのは

 一部の上層部だけだ。お前が知らなくても無理はない。そろそろ噂は広まりそうだけどな。で、どうだスズ、引き受けてくれないか?」

「んーー、まあ、ハルさんの頼みだ。引き受けるよ」

「そうか。ありがとう」


 そこから更に詳細を詰めてハルさんはシアンと共に帰っていった。

 この俺が受ける依頼について知っているのはハルさんとシアン以外にジークとエシェントさんだけだそうだ。

 襲撃作戦が漏れる心配は無いだろう。




「さて、ここで間違いないな?」

「はいスズ様」

「それじゃ予定通りに」

「はっ! スズ様ご武運を」


 側にいた爺やが消えていった。

 時刻は深夜、今から組織のアジトを襲撃する。

 事前に爺やがアジトについて調べている。

 爺やによるとアジトの地下には大勢の人が捕らえられているらしい。

 ここがアジトで間違いないそうだ。


 そして、抜け道があるらしい。

 俺とセレスが正面から襲撃して、爺やが抜け道から抜けてくる者達を始末する事になっている。


「じゃ、セレス、そろそろいこうか」

「はいスズ様、お供いたします」



 ー▽ー


 組織の主、ゲフは笑いが止まらなかった。

 とある貴族の命令で始まった奴隷売買。

 闇の氾濫のゴタゴタでとても人を攫いやすかった。

 そして攫った者を奴隷として売り払う。

 とても金が儲かった。

 一度騎士達にアジトを襲撃されたが、事前に聞いていたため簡単に回避できた。

 こんなボロい商売を出来ている事を幸運に思った。

 もっとも幸運は今日でお終いである。


 ゲフは攫ってきた女を侍らせて酒を飲んでいると突然上から、


 ーードォーーーン!!


 轟音が鳴り響いた。


「な、なんだ?」

「大変です! 襲撃者です!」

「なっ! 騎士共か!?」

「いえ、やって来たのは二人です」

「たった二人だと? ならば即座に捕らえよ!」


 ゲフは部下に命令した。

 叶うはずのない命令を。



 ー▽ー


 アジトは地下あるみたいだ。

 アジトへの入り口は巧妙に隠されており、また入り口には二人の見張りと頑強そうな扉があった。


 俺は静かに見張りの首を切り落とす。

 見張りの二人は声を上げることなく死んだ。

 そういえばこれが今世では初めての人殺しだな。

 んー、特に何も感じないな。


「んじゃ、突入!」


 目の前の扉を蹴り飛ばす。

 扉は轟音をたてて吹き飛んだ。

 中には複数人の男達がいる。


「な、なんだお前たちは!?」

「こんばんは、死ね」


 俺は刀で中にいる男達を斬り伏せていく。

 魔術や範囲の広い技は捕らえられている被害者達に被害が及ぶといけないので止めておく。

 やろうと思えば、俺の能力で敵だけを殺すことは出来るけどちゃんと被害者と敵を認識して分けておかないといけないので、普通に刀で一人ずつ殺していった方が楽だ

 どうせこいつらは死刑とかになるし生かしておく理由はない。


 最初、この部屋にいた男達は全て殺したが奥からさらに多くの男達がやって来た。

 もちろん全員殺す。

 態々気絶させたり捕まえたりするよりよっぽど早い。

 戦いながらセレスの方を見る。

 セレスは自身の周囲に何本もの武器を浮かして操りながら暴れ回っている。


 セレスのもつユニークスキルは『一騎当千』。

 このスキルは多数の武器を周囲に浮かせて操るスキルだ。

 空中に浮いた武器の一本一本が別々の動きをしている。

 セレスは一本一本を孤立して操っているのだ。

 数が増えれば操作も大雑把になるが1000本の武器を用意すればまさに一騎当千。

 このスキルのお陰で俺の屋敷はいつもピカピカだ。

 セレスはこのスキルで主に掃除道具を操って屋敷を掃除している。


「ひっ! なんだこいつら! ば、化け物!」

「化け物呼ばわりは感心しませんね。あなた達の方がよっぽど醜いですよ」


 そう言ってセレスは男達を殺していく。


「なんだこいつら強すぎる! か、勝てねぇ!」

「なんでぇ、大人がたった二人にビビりやがって。情けない」

「せ、先生!」


 奥からコツコツと音を立てながらゆっくりと先生と呼ばれる大きな壮年の男がやって来た。


「だが、確かに強いようだな。どれ、用心棒として儂が相手をして…」


 先生と呼ばれた男はそこから喋る事は無かった。

 何故なら首と胴体が別れたのだから。

 セレスが操作している武器で先生と呼ばれた男の首を切り落としたのだ。

 多少強かったかもしれないが、セレスから見たら醜い雑魚に一人だったのだろう。


「せ、先生がやられた! 無理だ! このままだと死んでしまう!」


 男達はこのままでは殺されると思ったのか奥へと逃げていく。

 奥へと向かうには狭い一本道を通る必要がある。


「ソードレイン!」


 セレスは逃げていく男達に向かっていつの間にか現れた大量の剣を飛ばしていく。

 まさに剣の雨だ。

 剣の雨は一切の慈悲なく一箇所に集まった男達を貫き、殺していった。

 これでほとんどの者を殺した。

 あとは少しだけこの部屋に残っている者達だけだ。


「ひっ、な、なんなんだよお前達は!?」

「なんなんだよって最近有名になってきたんだけどな」


 俺は仮面を被り、鬼化する。


「ま、まさか、無貌の鬼!」

「はい正解。じゃ死ね」


 俺たちは残った者達を皆殺しにしていった。


「スズ様、お疲れ様です」


 皆殺しを終えた後セレスが側にやって来た。

 返り血一つない。

 まあ俺もだが。


「んー、移動しているのが数名。それ以外の反応は捕らえられている人達だな」

「どうしますか?」

「お前は捕らえられている人達を解放していってくれ。女性が多いみたいだし同じ女性のセレスの方がいいだろう」

「かしこまりました。ではスズ様は?」

「一応逃げていった者達を追うよ。爺やと挟み撃ちにする」

「なるほど。ではスズ様お気をつけて」


 俺はセレスと別れて抜け道から逃げようとしている者達を追うことにした。





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[気になる点] 誤記でしょうか? 醜い雑魚に一人
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