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35 決闘騒ぎその2

 決闘って言われても俺にそれをするメリットは無いんだよな。

 そもそもちょっと煽っただけでこんなにキレんなよ。

 しかも仕掛けてきたのはそっちなのに。

 逆ギレじゃん。


「お断りします」

「はっ! 怖気付いたか!」

「いや、そもそも決闘して俺にメリットが…」

「あら、決闘ですか。いいですね」


 俺の言葉を遮ってシアンがこちらにゆっくり歩いてきた。

 その姿は優雅で顔はニッコリ笑っているが目が笑っていない。


「いや、だから俺にメリットが無いって言っているじゃん」


 決闘は何かしらの要求を賭けてする。

 チェスター侯爵子息の要求は知らないが俺には決闘で叶えられるような要求はない。

 つまり決闘を受けるメリットが無いのだ。


「だったら、私の要求でもいいですよね?」


 シアンは俺に耳打ちをしてそう言った。


「はあ? いいのか?」

「ええ。というわけでその決闘受けてください」


 シアン王女様より決闘を受けろとのご命令だ。

 仕方ない。


「はあ、わかったよ。その決闘受けて立つよ。そっちから言い出したんだし準備はそっちでしろよ」


 そう言ってから俺はこの場を後にした。

 突然の決闘で周囲の生徒は驚いている。

 まあ超展開だしね。

 俺もチェスター侯爵子息にはちょっとムカついてるから決闘で憂さ晴らししよう。



「決闘ですか?」

「うん。実は……」


 あの後、俺は教室に戻る事なく学園長の部屋に向かった。

 シアンも一緒だ。

 そして学園長に先ほどでの出来事を話す。


「ああ、それでシアンさんがさっきから怒っているのですね」

「当たり前ですよ! スズの事を罵倒したり、挙げ句の果てには態と魔術を放ったのですよ!」

「まあ、残念ながらその件に関しては厳重注意しかないですね」


 チェスター侯爵子息が俺に魔術を放った件だが、誰も魔術を放った瞬間を見ていなかったらしいので魔術の失敗という事になる。

 どう考えても確信犯だけど被害者の俺も魔術の失敗と認めたので厳重注意となる。


「スズに魔術が当たりそうになった瞬間ブチギレそうになりましたよ」


 魔術自体があの程度なので例え当たっていたとしても怪我とかの心配はしなかったと思ったらしい。

 薄情って言うよりも俺をあの程度でどうにかなるわけ無いと信頼しているのだろう。

 シアンはどうやらチェスター侯爵子息が俺に向かって魔術を放った事自体に怒っているみたいだ。


「それでスズくんの要求はなんなのですか?」

「あー、俺は無いので代わりにシアンの願いを叶える事になっているよ」

「そうなのですか?」

「はい。私の要求をスズの要求という事にします。私の要求はチェスター侯爵子息が私に話しかけてこない事です」

「なんですかそれは」

「今回の件で私の堪忍袋も切れました。あんなのには二度と話しかけられたくありません」


 以前からシアンはチェスター侯爵子息を嫌っているそうだがここ最近さらに嫌悪感を示すようになり、今回の件で最悪になったみたいだ。


「だから決闘を利用してスズにこの要求を叶えて貰うのです」

「確定事項みたいに言っているけどもし俺が負けたら」

「ありえませんね。スズが負ける可能性があるのはお父様くらいでしょう。どうせ向こうは代理人を出すでしょうけどスズに勝てる人を出すのは不可能です」

「そんなもんか?」

「そんなものです。スズも負ける気は無いでしょう?」

「それはそうだけど」

「なら安心です」

「まあ、確かにスズくん相手に勝てる相手はいないでしょうね」


 シアンと学園長に勝利のお墨付きをもらったので頑張るとするか。


「あ、そう言えばチェスター侯爵子息の名前知らないや」

「スズくん……あなた名前も知らない相手と決闘しようとしていたのですか?」

「いや、だって興味無かったし」


 俺は彼の事をチェスター侯爵子息と血縁上では兄であるくらいの事しか知らなかったし興味も無かったのだ。


「彼の名前はユーグ・チェスターですよ」


 ほうほう、ユーグお兄さんね。


 後日、ユーグとの決闘が正式に決まった。

 こちらの要求はシアンに、ついでに俺にも話しかけない事で向こうの要求は俺の退学である。


 ハルさんたちにこの事を話すと、


「俺がスズの代理人として決闘にでる! 俺がチェスター侯爵のせがれの顔をぶん殴ってやる!」

「いや、国王が決闘なんかするなよ。しかも代理人って。それに向こうは代理人を出すと思うよ」

「そうよあなた。さすがに止めなさい。それにスズくんで十分よ。スズくん、しっかり相手の心を折るのよ」

「スズ、絶対に勝つんだよ」


 とハルさんやリーシアさんやジークに言われた。

 ユーグに対する王家の印象は最悪のようだ。



 そして、決闘当日。


「さーーて! 本日の大イベントの始まりだーー! 一年の謎多き主席、スズ・ロゼリアと同じく一年のユーグ・チェスター侯爵子息による決闘だーー!!」


 広い会場に放送の声が響き渡る。

 コロシアムみたいな会場だ。


 もっと小規模な決闘だと思っていたが、かなり大規模である。

 生徒中心に観客もいっぱいだ。

 学園関係者以外にも一部貴族なんかもいる。

 当然ハルさんたちもいる。

 他に知り合いはエシェントさんやおねぇもいる。

 今は控え室にいるのだが何人か訪ねてきた。


「なんか、規模が大きくない?」

「チェスター侯爵子息が自身の力をアピールしたかったのでしょう」

「自身の力って代理人だよな?」

「ええ、代理人です」


 まあ、強い代理人を集めるって事はそれだけ貴族としての力が強いってアピールになる事だしいいのかな?

 控え室でシアンと話しているとスタッフがやってきた。


「ロゼリアさんそろそろ時間ですよ」

「はーい。んじゃ行ってくるよ」

「ええ、絶対に勝ってくださいね」

「まかしておけ」


 俺は控え室を出て試合場へと向かう。


「さあ! そろそろ選手入場です! まずは一年主席、スズ・ロゼリア選手!」


 放送に従って試合場に入ると歓声が巻き起こる。


「ロゼリア選手は今年の入学試験で歴代でもトップの成績を叩き出したそうです。しかし授業ではあまり見かけないためその実力は不明。また、黒目黒髪という珍しく、そしてその端正な顔立ちゆえに学園内でもファンが多いようです!」


 何それ初耳なんだけど?


「そんなロゼリア選手がたった今入場しました! この試合で彼の実力が明らかになるのか!? 期待が高まります!」


 いやいや、実力は明らかにしないよ。

 ちゃんと手加減するよ。

 そうしないと相手死んじゃうし。


「さーて! 続きまして、ユーグ・チェスター選手の入場です。チェスター選手はチェスター侯爵家の嫡男であり今回の決闘の仕掛け人です。たった今入場しました!」


 俺より簡潔な放送によってユーグが入場し、俺の前に立つ。


「あれ? 君が戦うの? 代理人がいるって聞いたのだけど」

「ふん。代理人と戦う前にお前のその面を拝みに来てやっただけだ。余裕そうにしているがいつまでその余裕が続くかな?」


 ユーグはそれだけ言うと後方に歩っていった。


「続いてチェスター選手の代理人の入場です。チェスター選手は代理人が戦うようです」


 放送がそう言うと、観客が「ずるいぞ!」とか「自分で戦え!」とか言ってユーグに非難を浴びせる。

 しかし、非難を浴びたユーグは余裕の表情だ。

 何とでも言え愚民ども、勝てば良いのだ! なんて思っていそうな顔である。

 実際思っていそうだな。

 そして放送に従って10人の男達が試合場に入ってくる。

 普通決闘は一対一でやるものなんだけど。


「こいつらが俺の相手?」

「ああそうだ。何も決闘は一対一でしかダメだなんて書いてないからな」


 まあそうだけど、いくらなんでも10人はやり過ぎだと思う。

 観客もそう思ったのかユーグにさらに大きな非難を浴びせる。


「えーー、か、彼らがチェスター選手の代理人だそうです。が、学園長、これはよろしいのでしょうか?」


 放送の人も聞いていなかったようで困惑している。


「ふむ、彼らですか。……まあいいでしょう」

「学園長!?」


 放送の人は驚いている。

 観客も同様だ。

 何せ1対10だ。

 卑怯とかの範疇を超えている。

 それを学園長が許可したのだ。

 まさか、買収されたのか?

 観客はそう思っていそうだな。

 学園長は公明正大で有名だ。

 そんな学園長がこの状況を許可したのだ。

 驚くなと言う方が無理だというのだ。


「ふっふっふ。ちなみに彼らは先の闇の氾濫でも大きな活躍をしたA、Bランクの冒険者達だ。精々頑張ってくれよ」

「へっへっへ。そういう事だ兄ちゃん、悪いな」


 なんとまあ、見事にフラグを立ててくれたな。

 それは敗北フラグだよ?


「おや? 今更怖気付いたのか?」

「いや、別にそんなことないよ。ほら、さっさと試合開始しようぜ」


「いや、しかし……えっ、そうなのですか!? わかりました」


 放送は学園長から何か聞いたのか納得したようだ。


「それではロゼリア選手対チェスター選手の決闘、開始!」


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