22 真・執事とメイド
「たった今、ゼシェルとセレスティアの受肉が完成した」
「本当か? どうする? ここで呼び出すのか?」
「うーん。屋敷のエントランスで呼び出そう。屋敷の中案内するのは後でいい?」
4人頷いたので俺たちはマイホームへと入っていった。
玄関を通ってすぐの広い空間、エントランスとなる空間だ。リビングも兼ねる予定だ。
家具類は一切置いていない為だだっ広い空間になっている。
「じゃあ、呼び出すね」
両手を前に突き出して『暴食』から二人を呼び出した。
呼び出された二人は受肉する前と変わらない姿、服装だ。
ただ、半透明ではなく実態を伴っている。
服装は肉体を構成する際に一緒に構成された。
そんな二人は跪いて現れた。
「「我ら、スズ様のお力によって無事に受肉を果たす事ができました! 今後とも邁進いましますので何卒よろしくお願いします!」」
二人とも同時にズレなく同じ発言をする。
「そ、そっか。こちらこそよろしく、さて、二人とも立って」
俺の言葉で二人とも立ち上がる。
「じゃあ、紹介するよ。二人がゼシェルとセレスティアだよ。」
俺が二人を紹介した事によって俺以外に人がいる事に気がつき、二人はシアンたちがいる方を向いた。
「ご紹介の預かりました、スズ様の執事のゼシェルでございます。少々お見苦しいですが何分たった今目覚めたばかりでして、あなた様方はスズ様とどういったお…か…んけ…い……へ、陛下!」
そして、自己紹介をしている途中でハルさんの存在に気がついき、再び二人とも跪いた。
「ス、スズ様! な、なぜ、陛下がここに!?」
「あ〜、それはね…」
「まて、俺から話そう。ゼシェルと、セレスティアだったな。俺はハッシュバルト・グローリアス。知っての通りこの国の国王だ。スズとの関係だが、スズの両親、スズの育ての親が俺の友人達でな、こいつが幼い頃から関係がある。そして、スズは俺の娘、シアンの婚約者だ」
「な、なんと、スズ様が王女様の婚約者!?」
ゼシェルは非常に驚いている。
セレスティアなんて口をパクパクさせて言葉も出ないみたいだ。
まあ、ハルさん達の事については教えてなかったからな。
さすがに王族との関係をホイホイと言える訳がない。
「二人とも、顔をおかげになって下さい。私がスズの婚約者のシアンです。あなた達のおかげで私はスズの婚約者になる事が出来ています。スズを救ってくださってありがとうございます」
シアンに続いてリーシアさんとジークも自己紹介とお礼を述べる。
なんだかむずがゆいな。
ゼシェルは時間と共に落ち着きを取り戻したがセレスティアなもう何がなんだかわからない状態になっている。
見ててオモロイ。
「さあ、二人とも立って。二人の紹介はまだだろう?」
「は、そうでございました。これは失礼を。では、改めてまして、私はゼシェル。スズ様の執事でございます。よろしくお願いします」
この頃には完全に落ち着きを取り戻したゼシェルが先に挨拶する。
問題なのはセレスティアだ。
「わ、わわわ私はセ、セレ、セレスティアと申します! ス、スズ様の侍女にございます。どうぞよろしくお願いいたしましゅ!」
緊張でガチガチで最後に噛んだ。
セレスティアは噛んだことで顔を真っ赤にしている。
こいつおもしろい。
「さて、紹介も終わったことだし、屋敷の案内でもしようか。ゼシェル、セレスティア、あー、そういえば二人の事がなんて呼んだらいいかな?」
なんか、ゼシェルとセレスティアって呼びにくいんだよな。
ゼシェルに至っては老人だし、呼び捨てはなかなかしにくい。
「では、私のことは爺やとお呼びください」
「わ、私セ、セレスと」
「わかった、爺やにセレス、ここは俺の屋敷だ。今から案内しよう。」
みんなに屋敷内部を案内する。
基本的に一階はエントランスと食堂、そして、大半がキッチンになっている。
そこそこ大きな獲物も解体できるほど大きなキッチンだ。
そして、二階には俺の部屋や応接室や今の所用途のない幾つかの部屋がある。
さらに三階には温泉がある。
俺がこの土地を選んだ理由の一つとしてかなり深くに温泉がある事がわかったからだ。
まだ、入ることは出来ないが既に温泉源までパイプを引いてある。
このパイプはゴーレムの一部なので、ちゃんと温泉源を引いてくれるのだ。
元日本人としては温泉は欲しいからね。
ここら辺はキッチンの次くらいにはしっかり作ったのだ。
この温泉に最も喜んだのはリーシアさんとシアンである。
まだ、入れないことにガッカリしていたが入れるようになったらすぐに来ると言ってきた。
そうなるとおそらくハルさんやジークもついて来るし、うちにはセレスもいるので男湯と女湯は分けておいた。
そんな感じでみんなに屋敷内部を案内した。
「そろそろ仕事の時間だから俺は戻る」
「ああ、僕も学園に行かないと! 入学式の準備に忙しいんだ」
「私も戻ろうかしら。スズくん、温泉が出来たら教えてね。シアンはどうするのかしら?」
「今から家具類を並べるだけだからここにいてもする事ないぞ?」
「んー、ここに残ります。私も手伝います」
「そっか、了解」
こうして、シアンを残して帰っていった。
セレスはホッとしているようだ。
たぶんあの人たちかなりの頻度でここにやって来るぞ。
「じゃあ、家具を並べるか」
俺はシアンや爺ややセレスと相談しながら家具類を並べ始めた。
家具はあらかじめ闇の領域で採取した良質な木を加工したものが中心だ。
木が中心なのはこの木は闇の領域で採れただけあってかなり良質なものであるのと、俺の趣味だ。
落ち着いた感じのいい雰囲気を出してくれるので結構好きなのだ。
足りないものは後日爺やが買ってきてくれる事になった。
もっともあまり所持金がないので、明日にでもギルドで素材の売却をする必要があるけど。
そして、二階には新たに爺やとセレスの部屋を作った。
作ったと言っても元々ある数ある部屋を利用しただけで部屋数自体を増やした訳ではない。
やろうと思ったらできるけどする必要がないしね。
そして、ちゃっかり俺の部屋の隣の部屋をシアンが自分の部屋だと宣言した。
後々色々運び込む予定だそうだ。
そんな訳ではマイホームが完成して、俺と爺やとセレスが住む事になった。
ちなみに、俺はマイホームが完成して爺やとセレスがいるので王城を出て行った。
シアンが文句言って来たが無視した。
だって、自宅があって使用人もいるようになっているのに王城に泊まるとか意味わからんもん。
そして、数日が経ち、入学式の日がやってきた。