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超人さんの転生譚〜人間超えて鬼になる(旧題:超人さんがいく!異世界転生)  作者: 羽狛弓弦
第二章:よくあるかもしれない王都学園生活(仮)
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17 Aランク昇格試験

「なんだ、お前たち知り合いだったのか?」

「ええ、この子が幼い頃から何度も会っているわ」


 俺は彼、もとい彼女をおねぇと呼んでいる。

 おねぇは冒険者をしながら主に女性の貴族や富豪たち向けの服飾店を営んでいる。

 その店に何度かシアンとともに幼いころから足を運んでいるのだ。

 おねぇは見た目こそヤバイが冒険者としてもデザイナーとしても超一流なのだ。

 シアンもおねぇが作った服をたくさん持っている。

 ちなみに店を訪れた子供の95パーセントはこのおねぇのヤバイが見た目に泣いてしまう。

 そして男性の来店率は限りなく低い。


「と、こ、ろ、で、ギルマスがなんの御用かしら? やっとあたしとお付き合いしてくれるのかしら?」


 おねぇの好みはハルさんやエシェントさん、そして、目の前にいるギルマスのような筋肉のついた男らしい見た目の男が好みなのだ。

 よって、俺やジークはおねぇの魔の手からまのがれている。


「だれが、付き合うか! お前にはスズのAランクアップの試験の試験官を頼みたい」

「あたしに?」

「ああ、陛下からスズはSランク以上の実力があると聞いているからな。実際の実力は見たことないがそれならSランクのお前には試験官を頼もうと思ってな」

「なるほどねぇ。分かったわ、あたしじゃ実力不足だろうけど相手になるわ」

「なに? お前が実力不足だと?」

「そうよん。少なくともこの子が11歳の時点で100回闘っても100回負ける自信があるわ」

「…それほどなのか?」

「それほどよ。さあ、行きましょう。スズちゃん、ちゃんと手加減してね?」


 そう言っておねぇは凄まじい勢いでウインクしてくる。

 風圧でここまで風が飛んでくるほどの勢いだ。

 手加減の必要があるのかなあって思ってしまう。

 だって殺しても死ななそうなんだもん。

 


 ということで第一修練場という広い場所に向かう。

 冒険者なら無料で使うことができ、個人的な訓練やこういった試験で使われるらしい。

 現に多くは無いが訓練をしている冒険者がいる。

  「おい! あれは『桃壊姫』じゃねぇか!」とか「ギルマスもいるぞ」とか「あの一緒にいる仮面を被った男? 女? は誰だ?」とか聞こえてくる。


「ところでその仮面はなんなのかしら?」

「ん? ああこれね」


 俺は今、角を生やしている。

 俺の種族は『半人半鬼』であり、人にも鬼にもなれるのだ。

 また、何の貌も無い只々白い仮面を付けており、薄いロングコートのようなカーディガンのような白い上着を羽織っている。

 コートって定番だけど、定番なりの理由はちゃんとある。

 丈夫で破れにくいしポケットなどに物がたくさん入るので便利なのだ。

 動きも阻害されにくい。

 ちなみに、この上着はとある蜘蛛の魔物の糸から編んだもので下手な鎧よりも遥かに丈夫なお気に入りである。


「俺って黒目黒髪で結構目立つから、日常のスズと冒険者のスズは違うって対外的に示そうかと思って」


 その方が後々面倒な事が回避できると思ったのだ。

 Sランクになったり、他の要因で有名になったりしたら指名依頼が舞い込んでくる可能性がある。

 最悪俺自身に直接依頼してくる事もあるかもしれない。

 それが面倒なので対外的に日常の俺と冒険者の俺は違うっていうことを示したい。

 仮に指名依頼があったとしても日常の俺でいる限り受けなくてもいいように。

 だから冒険者でいる時は鬼化して仮面をつける事にしたのだ。

 もちろん他にも理由はあるが。


「その格好だと男の子か女の子かわからないわね。なんだか神秘的でいいじゃない」

「いやいや、お前さっきまで角なんて生えてなかったよな?」

「そうだね、今は生えているよ」

「なんでだよ! お前人間じゃねーのか!?」

「あーそうだね、今は鬼人族ってことで」

「意味わかんねーよ。登録用紙に人間って書いてあったじゃねーか」

「あ、じゃあ、鬼人族に直しておいて」

「そんなことより、そろそろ始めましょう」


 おねぇの発言によってギルマスからの俺の角についての追求が止まる。

 ギルマスは若干不満そう顔をしているがその場から少し離れていった。


「じゃ、念のため結果を張るよ」


 俺は術式を構築して結界を張った。

 今張った結界は前にハルさんと手合わせをした時に使ったただの物理結界ではなく、空間魔術も織り込んだ、結界内を半異界化する結界だ。

 結界内の空間も広くなるしある程度の闘いにも耐えられる優れた魔術だ。

 "隔離結界"と呼んでいる。


「相変わらず物凄い魔術を平気で使うわね。それじゃ、Aランク昇格試験、始めるわよ!」




 おねぇの開始の宣言とともに離れた位置にいるおねぇに向かって俺は雷の魔術を撃ち込んだ。

 レーザーのように一本の雷撃を放つ魔術だ。

 もっと強い魔術も沢山あるが、小手調べかつ下手に強い魔術だと結界を貫通したり破壊したりするので、それを避ける為にこの魔術を選択したのだ。

 雷の魔術はおねぇに向かって一直線に進むがおねぇは腕をクロスして防御する。

 続いておねぇは距離があるにも関わらず腕を大きく振りかぶった。


「ふんぬぅうううう!」


 おおよそ乙女(おとめ)とは思えない漢女(おとめ)のような野太い声を発しながら届かない筈の距離から殴り掛かってきた。

 おねぇは物質化した不可視の巨大な闘気を操つる能力を持っている。

 今殴り掛かってきているのは、おねぇの拳そのものではなく、不可視の巨大な闘気の拳だ。

 その為、距離があるにも関わらずおねぇの攻撃は俺まで届くのだ。


 目には見えないけれどある程度の感知能力があれば視ることはできる。

 俺はその不可視の巨大な闘気の拳を避けるでも無く片手を前に突き出して受け止めた。


 この拳は闘気の塊、つまりエネルギーの塊だ。

暴食(グラ)』でほぼ完璧に吸収して防ぐ事ができる。

 俺は『暴食』で闘気の拳を吸収し防ぐと一気におねぇの元へ駆け出した。

 一瞬で距離を詰め、


「"爆神掌(ばくじんしょう)"!!」


 必殺の掌底を放った。

 その掌底の名前は"爆神掌"。

 俺の得意技である。

 この技は本来とても戦闘で使えるものではないのだが、俺には『暴食』のスキルがある。

 あらかじめ手に収縮していた闘気を『暴食』で捕食して保管しておくのだ。

 そして、掌底を打ち込む瞬間に『暴食』から保管していた闘気を出して放つ。

 これによって一瞬で"爆神掌"を放つ事ができるのだ。

 もっとも、『暴食』内でもある程度の制御が必要なので数発しか保管出来ないのだが、それでも高威力であり非常に使い勝手の良い技なのだ。

 今回放った"爆神掌"はさすがに元の威力だとおねぇが危ないのであらかじめ『暴食』内である程度エネルギーに還元しておいた。


 おねぇは"爆神掌"に対して腕をクロスさせて防御する。

 その腕にはおねぇの能力で物質化した超高密度の手甲で覆われている。

 並大抵の防御力ではないだろう。

 それでも俺の"爆神掌"はおねぇの闘気の手甲を砕き、ダメージを与えた。

 結果、おねぇは膝を着いた。


「ギ、ギブアップよ」


 その言葉とともに俺は戦闘状態を解除して結界を解除した。




「おねぇごめん、少し強くしすぎたかも。大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ」


 そう言うと、おねぇは苦悶の表情も見せずにスッと立ち上がった。


「そっか、よかった。」

「うふふ、心配してくれてありがとうね」


 どうやら本当に大丈夫のようだ。

 弱めたとはいえ普通なら良くて病院送りの技なんだけどな。

 さすがおねぇ、相変わらずタフなようだ。


「…まさか、これほどまでとは」


 おねぇと話しているとギルマスが驚愕の表情を浮かべながら近づいてきた。


  「ここじゃ少し目立つ、俺の部屋に戻って話そう」


 たしかに周りから「なんだあの仮面、『桃壊姫』を倒しやがったぞ!」とか似たような声が聞こえてくる。

 どうやら注目を浴びているようだ。

 俺たちはギルマスの部屋に戻ることにした。



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