15 グローリアス家との食事
しばらく、シアンとお茶をして時間を潰し夕食の時間になった。
シアンたちと夕食をとることになっているのでシアンとともに食堂にむかった。
もちろん食堂と言っても一般的なものではなく、基本的に王家が食事をする場所だ。
食堂に入るとそこには既にハルさんとその妻リーシアさん、そして息子のジークがいた。
リーシアさんは金髪碧眼の美女でシアンを大人っぽくして綺麗系にしたような人だ。
そしてジーク、ジークハルトは俺とシアンの2つ上で、リーシアさんと同じ金髪碧眼のまるで物語から出てきた王子様のようなキラキラ系の美男子だ。
まあ、王子様のようなではなくまんま王子様なんだけど。
「リーシアさん、ジーク、こんにちは。ご馳走になるよ」
「あら、スズくん。今日もかっこいいわね。遠慮なく食べていってね」
「やあ、スズ。なんだか久しぶりだね。後で色々話をしよう」
俺は二人と挨拶をすると席に着く。
しばらくすると食事が運ばれてきた。
どれも、超一流の料理人が素材を厳選して作ったものだ。
とても美味しい。
次々と大量の料理が運ばれて来るがそのほとんどが俺の胃袋の中にはいる。
全ての食事を終えるとこの料理を作ったであろう料理長が入ってきた。
「本日のお食事はいかがでしたか?」
料理長がハルさんたちではなく俺に聞いてくる。
「うん。美味かったよ」
「それでは、スズ殿から見て合格でしょうか?」
「うん。まあ、いいと思うよ。ただ…」
俺はそれぞれの料理に対して意見を述べる。
料理長は俺の言葉に必死に耳を傾けている。
「なるほど、わかりました。ご教授ありがとうございます。引き続き研鑽いたしますのでこれからもご指導よろしくお願いします」
そう言うと料理長は部屋から出て行った。
なぜ、俺が料理長に様々な意見を言うかというと、彼に料理について何度も指導したことがあるからである。
彼の名前は……まあ、料理長は若い頃から王家の料理長を務めている。
それだけあってかなりの腕前でありながら料理に対して真摯な考えを持っている。
既存の事柄に固執することなく新しいも積極的に取り入れていくスタイルだ。
そんな彼の料理の腕は超一流でこの国では一番の腕をしているだろう。
俺を除けば。
幼い頃から何度も王城に来ている俺は当然というか厨房にも行ったことがある。
そこでシアンが俺の料理を食べたいと言い出したので料理を作ったのだが、当然子供だけでは危ないと思った料理長がついてくれたのだ。
最初はこんな幼いのに料理が出来るのかと感心していたそうだが、幼い俺が料理をしているのを見て、自分より遥かに腕がいいと覚ったそうだ。
そして、幼い俺に弟子にしてくれと頼んできたのだ。
当時、50歳を超えていた料理長は幼い俺に頭を下げたのだ。
そんなこんなで、弟子という訳ではないが偶に料理の指導をしているのだ。
だから、料理長は俺に意見を求めたのだ。
「さて、スズ、以前お前に頼まれたものだが良い所が見つかったぞ」
「ほんとう?」
「スズ、お父様に何か頼みましたの?」
「うん、これから3年は王都に住む予定だから家を建てようと思っていい土地がないか聞いたんだよ」
「「え?」」
「え、スズ、ここに住むんじゃなんですか?」
「え?」
シアンは何を言っているんだ?
「いや、住まないよ。普通に家を建てようかと」
すでにある物件よりも自分で建てる方がいろいろと都合がいいのだ。
まあ、家を簡単に建てようとするのは普通じゃないけどそれは置いておく。
「あなた、どういうことよ。私もてっきりスズくんはうちに住むんだと思っていたのに」
「いや、どういうことだと言われても」
どうやら、シアンとリーシアさんの中では俺が学園に通う間俺はここに住む事になっていたらしい。
たしかに、今まで王都に来たらここに泊まっていたけど、さすがに3年もここに住もうとは思わんよ。
話し合いの結果、入学式までの10日間はここに泊まることになった。
シアンとリーシアさん、特にシアンは引き止めたがっていたけれど。
「とにかく、ベロニカに言ってあるので彼女に明日にでも聞くといい。幾つか候補を絞っている。」
「わかった」
「ところで、スズはこれから入学式までの10日間何かする事はあるのかい?」
一通り話が終わるとジークが質問してくる。
「うーん、土地を決めて、家を建てて、冒険者登録をするくらいかな」
「どうやって家を建てるかは気になるけれど置いておいて、そういえばスズはまだ冒険者に登録していないんだったね。」
「うん。冒険者に登録しないといけないんだよね?」
俺はジークにではなくハルさんに聞く。
「ああ、それがシアンと正式に婚約するために必要な条件だ」
俺とシアンが正式に婚約するには冒険者に登録、正確にはSランクの冒険者になる必要がある。
Sランクは冒険者として最高峰であり、英雄ともされる。
Sランク冒険者になると貴族や王族からこぞって見合い話が来るくらいだ。
なにしろ、その英雄が家の一員となりその血を家の家系に残す事ができるのだから。
シアンと身分差があり過ぎる俺はそれくらいにならないとシアンと結婚でいないのだ。
そして、そのSランクの冒険者はこの国でさえ3人しかいない。
一人は目の前にいるハルさん。
他の二人もこの王都にいてどちらとも面識がある。
そんな大国でさえ3人しかいないSランクの冒険者になれとハルさんは簡単に言うのだ。
もっとも、俺にその実力はある。
3人のSランク冒険者の中でハルさんがズバ抜けて強い。
そしてハルさんと渡り合える俺はSランクなれる実力はあるのだ。
「まあ、婚約だけでなくて結婚したいならこの俺を倒してからだぞ!」
シアンを溺愛しているハルさんは「俺より弱い奴に娘はやれん!」 と公言しており、俺にも適応されているみたいだ。
この人、俺とシアンを結婚させたいのかさせたくないのかよく分からん。
「はいはい、あ、あとはお墓を作ろうかと思っているよ」
「お墓?」
「うん。……父さんと母さんに拾われる前に育ててくれた人たちのお墓」




