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超人さんの転生譚〜人間超えて鬼になる(旧題:超人さんがいく!異世界転生)  作者: 羽狛弓弦
第二章:よくあるかもしれない王都学園生活(仮)
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14 シアン・グローリアス

 ハルさんと別れた俺はシアンの部屋に向かった。

 その途中、ベロニカさんとは違う見覚えのあるメイド服を着た侍女に出会った。


「あ、こんなところにいました! もう、探しましたよ! 早く来てください。シアン様がまだかまだかとそわそわしております」


 そう言う彼女の名はソフィア。シアン専用の侍女だ。


「ああ、ソフィアさんか。ちょうどシアンの所に向かっているところだよ。さっきまでハルさんに相手をさせられていたんだよ」

「ああ、それはお疲れ様です。それでは先に行ってください。私をお茶の用意をして参ります」


 俺は彼女と別れ、シアンの部屋に向かった。



 シアンの部屋の前にたどり着いたのでドアにノックをする。


「はい、どなた様でしょうか?」

「俺だよ、スズだ」

 

 扉は勢いよく開かれた。

 

「スズ!」


 中から出てきた少女は勢いよく俺に抱きついてきた。

 少女の名前はシアン・グローリアス。

 ハルさんの娘。

 つまりこの国の王女様だ。

 普通、そんな人の部屋に訪ね、あまつさえ抱きつかれるなどあってはならない事だが、俺はいわゆる彼女の婚約者というやつだ。


 正式なものではないが。


「まったく! 遅いですよ! 城に到着したとの知らせが入ってから一向に会いにきてくれませんし!」


 彼女は俺に抱きついたまま、顔を上げ、いかにも怒ってますよ! というような顔してきた。


「ハルさんに相手させられていたんだよ。」

「もう! お父様ったら! 私のスズを取るなんて。後で文句いいませんと!」


 悲報、ハルさん、溺愛している娘に文句を言われる。


「そんな事より、良い加減こんな所で抱きついていないで離れろ」

「ダメです。後1時間はこうしています。王女権限で離しません」

「なんだよそれ、しかもなげーよ! せめて部屋に入るぞ」


 俺は抱きつかれたまま、部屋に無理やり入った。



「…あの、そろそろ離してくれませんかね」

「ダメです。あと55分あります」


 本当に1時間抱き続けるつもりかよ。

 俺は少しうんざりしていたらノックの音が聞こえてきた。


「失礼します。ソフィアです。お茶とお菓子をお持ちいたしました」


 彼女はそう言って扉を開け、紅茶やらお菓子やらを積んだ台座ごと部屋に入ってくる。


「…こんな時間からなになさっているんですか?」

「知らんよ。シアンが離してくれないんだよ」

「はぁ、シアン様、お茶にしましょう。さあ、スズ様を離しましょうね」

「むう、わかりました」


 シアンは渋々俺を離して解放する。

 シアンは昔からこの人の言う事は結構聞くから助かる。


 部屋にある机の席に着き、ソフィアさんが淹れてくれた紅茶をすする。

 さすがにおいしい。

 ふと反対側に座るシアンをと見る。


 うーん。美少女。


 親であるハルさんの色素を薄くしたような、ウェーブの少しかかった長くて綺麗な桜のような色の艶やかな髪。

 パッチリとした髪と同じ色の大きな瞳。

 ぷっくりとした唇に小さな鼻。

 最高級のビスクドールのような細くて白く、きめ細かい綺麗な肌。

 そして、この世界の平均的な身長からすれば低いが女性として理想的なスタイル。


 俺から見てもとんでもない美少女である。

 前世じゃまずお目にかかれないような。


 そんな彼女は自分で言うのもなんだが俺に惚れている。

 そして、それ故、正式ではないがハルさんの一族のある特性よりこの国の貴族ですらない俺と婚約している。


 俺自身もまあ、彼女のことが好きだと思う。

 自身の恋愛感情には疎いのでシアンが俺に対して抱いている感情については理解はしているが深くは分かっていない。

 でも、シアンとなら結婚をしてもいいと思っているのでおそらくシアンのことは好きなのだろう。

 少なくとも嫌いでもないし無関心でもない。

 俺は転生者で小さい頃から一緒だからって妹のような感情を抱いている訳でもない。


 そもそも、転生者って言っても子供の頃は結構肉体年齢に精神が引っ張られていたしな。

 精神年齢が前世の歳と足した年齢ではない。

 そもそも精神年齢ってなに? ってなるよね。

 100年以上生きていても見た目も若ければ精神も若い人達はいっぱいいるよ。

 エルフとか鬼人とか。

 村には100歳以上の人達がたくさんいたけどその人達の精神年齢が100歳以上ってことはなかった。

 だから、子供の時は前世で死んだときの年齢である17歳以上の精神ではなく、もっと幼い精神をしていた。

 もっとも、その時の年齢よりは精神が成熟していたが。

 だからか子供のころからシアンのことは同い年の子って認識だったし今もそうだ。


 閑話休題(かんわきゅうだい)


 結局、家族愛には近いがそれよりはシアンの事を恋人に見ている気がする。

 うーん、わからん。

 まあ、シアンが俺の事を好いてくれているのは理解しているし俺もシアンとの関係には満足している。

 今はこれで良いのだろう。


「スズ、そんなに見つめられると照れてしまいます」


 さっきまでベタベタしてきていたのに今度は照れて顔を背け出した。


 可愛いけど変な人だ。



 ー▽ー

(シアン視点)


 ああ、まだでしょうか。スズはまだいらっしゃらないのでしょうか。

 そわそわしていると、不意にノックの音が聞こえて来ました。


「はい、どなたでしょうか?」

「俺だ、スズだ」


 スズ! やっといらしたのですね!

 私は抑えきれない喜びのままに扉開けて勢いよくスズに抱きつく。

 ああ、至福です。ずっとこうしていたいです。

 しかし、来るのが遅かったので顔を上げて怒ります。

 私の目に映る彼の姿。


 その見た目は、中性的でこの世のものとは思えないくらい整った顔立ち。

 艶やかな漆黒の髪を長くて伸ばして1つに纏めているこの髪型が私は大好きです。

 アーシャさんが伸ばすようにおっしゃったみたいですけれど、グッジョブです。さすがに未来のお義母様。

 そして、髪と同じ漆黒の瞳。

 抱きついた時に伝わってくる細身ながら程よくついた筋肉がとても素晴らしいです。

 今は生やしていないようですがその頭から生えてくる二本の白い角も素晴らしいものです。

 男性としてはちょっと背が低いですが私も背が低めなのでちょうどいいです。


 ぶっちゃけ、スズのどの部分をとっても大好きです。


 ああ、初めて出会った時を思い出しますね。

 初めて出会った時は私は川で溺れかけていました。

 それをスズが助けてくれたのです。

 そして助けてくれたスズを見たとき、こんな天使のような少年がいるのかと思いました。


 私はあの時からスズの事が大好きです。

 そして今はもっと好きです。愛しています。

 今までは会えない日も多かったですけれど、

 これからは毎日のようにスズに会うことがでします。

 ただ、シエルはちょっと悲しんでいるでしょうね。

 あの子スズの事が本当に大好きですから。


 私はスズに来るのが遅かったと文句をいいます。

 どうやら、スズはお父様の相手をさせられていたようです。

 お怪我は無さそうですがあとでお父様に文句を言わないといけませんね。

 スズは私に離れろと言ってきますが拒否します。

 

 その後部屋に戻り、ソフィーがやってきて、お茶にするため離れる渋々離れることになりました。


 あとでまた抱きつきませんと。

 まだまだスズ成分が足りません。


 ソフィーが淹れてくれた紅茶を飲みます。

 ふとスズを見ると彼は私を見つめています。


 そ、そんなに見つめられると照れてしまいます。


 これ以上婚約者の顔を見ていられなくて顔を背けてしまいます。

 そう、婚約者です。


 彼は貴族でもましてやこの国の民でもありませんが私の婚約者です。

 残念ながら正式なものではありませんが。

 そんな人が普通王女である私の婚約者になれる訳がありません。


 しかし、それでも彼は私の婚約者になっています。


 それは私たち王家のある特性があるためです。


 それは、真に愛している者との間でないと子供ができないというものです。


 私たち王家の子供は強い力を持って生まれます。

 そうなると、沢山子供を産ませようと多くの側室があてがわれます。

 初代がそうでした。

 王が愛していたのは正妃ただ一人で、側室を拒否しましたが最終的には受け入れるしかありませんでした。

 しかし、その誰一人として子供を宿す事はありませんでした。

 そんな中ただ一人、愛した正妃にだけ子供が宿りました。

 そして、その子孫である二代目以降にも同じ特性が表れているのです。

 

 この事から私たち王家、というより初代の血が濃い者は愛した者一人としか結婚しなくなりました。

 

 当然この事を利用して妃に成り上がろうとする輩はいますが、基本的に私たち王家は人を見る目があり、また幼い頃からの婚約者を愛するのでそのような事になりません。


 そのような訳で幼い頃から私はスズと結婚すると言い続けたのでスズと婚約者になることが出来ました。


 もっとも私と結婚するのに今の身分では問題がありますのである条件が必要ですが、スズならすぐにクリアしてくれるでしょう。


 その時が楽しみです。

 



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