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119 切り札炸裂

 レヴィアとユウは絶望的な戦いを繰り広げていた。

 忍耐の天使ラグエルが二人の攻撃を防ぎ、救恤の天使ハニエルがラグエルを回復させる。

 絶対防御の鉄壁のコンビネーションだ。

 だが、問題なのは彼女たちに守られている存在だ。

 2人だけなら問題はなかった。

 時間をかければ倒せただろう。

 しかし、時間をかけすぎた。

 ルシアが去り際に施した封印は解かれ形勢は一気に逆転する。

 二人の攻撃は届かず、ジブリールの攻撃は2人を確実に追い詰めていった。


「ユウ、あんた大丈夫?」

「大丈夫に見えるか? こんな化け物相手によくやっている方だと思うよ」


 ユウだけでなくレヴィアもすでにボロボロだ。

 ジブリールが動き出してからたいして時間は経っていない。

 だが、2人ともすでに死にそうなほどのダメージを受けている。

 これ以上はやばい。


「ふふふふ、無駄なことです。無駄な事はやめて運命を受け入れなさい」

「それでおとなしく死ねと? 冗談じゃない」

「愚かな。運命は決まっているというのに」

「ふざけるな!!」


 ユウが突撃して一太刀浴びせようとする。

 一瞬で間合いを詰めて、切りかかる神速の斬撃。

 だが、ジブリールはまるで分っていたかのように軽やかに避けて反撃する。


「ぐはっ!!」

「ユウ!!」

「おっと、あなたも一緒に這いつくばるのですよ。それが運命なのですから」


 吹き飛ばされて倒れるユウと、いつの間にか接近を許し、防ぐ暇もなく攻撃を受けて倒れるレヴィア。

 まさに絶対絶命である。


「死になさい」


 最初はお前だとジブリールがレヴィアにトドメを刺そう剣を突き立てたその瞬間、1人の存在が乱入する。

 それは、白髪赤眼の2本の黒いツノを生やした鬼。

 鬼神王スズ・ロゼリアだ。


「待たせたな」

「やっと来たわね」


 ジブリールがスズの登場に顔を上げた瞬間の隙をついてレヴィアは脱出して槍を振るう。

 案の定防がれたが距離を離すことには成功した。


「やれやれ、一人増えたところで運命は変わらないというのに」

「いや、これで終わりだ」


 スズはジブリールたちに腕を突き立てる。

 そして、


「”ラストリゾート”!!」


 運命など関係なくすべてを虚無に至らしめる絶対的な一撃が放たれた。



 ー▽ー



 し、死ぬ。


 立つこともままならぬようになり撃つと同時にバタリと倒れこむ。

 俺が準備していて切り札は”ラストリゾート”である。

 昔と違って準備中もある程度動けるようになったが、発動後は相変わらずだ。

 反動で死にそうになる。

 しかし、その威力は以前レヴィアに放った時とは比較にならない。

 もともと保有していたエネルギーとこの大戦で得たエネルギーの量は膨大だ。

 特に■■に融合していた天使のエネルギーと、ウリエルのエネルギーが大きい。

 それらすべてのエネルギーが暴走させ、増幅させて放った一撃はたとえルシアであっても消滅してしまうだろう。

 そんな一撃は天使3名を一瞬で飲み込んで消し去った。

 おかげで俺は死にかけだし、胃袋の中も空っぽだ。

 包丁とか、朱里とか、大事なものは戦いが始まる前に外に出しておいてよかった。

 全部ふきとんだから。


「あなたが味方で心から思ったわ」


 俺の技の威力を目の当たりにしたレヴィアが驚愕の表情を浮かべている。


「これはすごいね。掠るだけでもたぶん死ぬよ」

「おかげで俺は死にそうだけどな」

「死にそうで済んでよかったじゃない。死んでいないだけましよ」

「だな」


 なんにせよ戦いは終わった。

 平和になったのだから回復する時間はいくらでもある。

 とりあえず、何か食べたい。

 おなかがすいた。


「えっ?」

「がっ!?」


 頭の中がご飯のことでいっぱいになっていたその時、レヴィアとユウが光の槍に貫かれた。


「ゆ、許さんぞ。大神様まであと一歩だったのによくも!!」


 なんで生きている!?

 手ごたえはあった。

 直撃したはずだ。

 なのになんで生きている!?


「天使は全滅し、私の支配下にある世界も失った。これでは、世界を滅ぼすのが困難になってしまいました」


 まさかこいつ!?


「だけど私さえいればいいのです。ルシアが戻ってくるまでに事を成せばいいのですから。大神様を取り戻して、回復さえできれば私一人でも問題はありません」

「お前、まさか世界を盾にしたのか!?」

「ええ。もう必要がなかった世界ですが、最後に役に立ちました。他の天使もね」


 ああそうか。

 こいつはこの場に各地の天使と、こいつがいた世界そのものを召喚して盾にしやがったのだ。


「しかしまさか一撃で世界そのものを壊すとは。私にもルシアにも不可能なことを。お前は危険です。ここで死んでいただきます」

「ああああああああ!」


 気合を入れて立ち上がる。

 動かない体に鞭を打ち、刀を杖にして。

 死にそうだがやるしかない。

 相手も瀕死の重傷だ。

 今、ここでこいつを倒さなければならない。

 ここでこいつを倒さないと後ろで意識を失っているレヴィアとユウも殺される。

 大神の聖遺骸を奪われてはならない。

 こいつに回復の機会を与えてはならない。

 今ここで動けるのは俺だけだ。

 俺がやらなければならない。


「お前も運命に抗うと言うのですか。お前はここで死ぬ定めだと決まっているのに」

「運命だと?」

「ええ運命です。この世界は滅び、大神様が復活なさるのは変えられない運命なのです」

「うるさい。俺は必ず生きてシアンの元へ帰る。そう約束したからな。俺が死ぬのが運命だというのなら、世界が滅ぶのが運命だというのなら。俺は運命を断ち切る!!」










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