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115 ミトラとミカエル

「おいおいおいおい、その程度か? こんなのが俺たちと同類だったなんて恥ずかしいぜ」


 大天使は見下している。

 自身の純白の翼とは逆の漆黒の翼が生えた、眼下で倒れている堕天使を。


「黙れ」


 堕天使は立ち上がり、大天使に向かって剣を振るう。


「遅ぇ!」


 それをいとも簡単に防ぎ、カウンターを放つ大天使。


「ぐっ」

「弱ぇ弱ぇ弱ぇ弱ぇ弱ぇ!! 弱すぎるぜミトラ!!」


 大天使ミカエルは堕天使ミトラに対して反撃を許さず攻撃をする。

 いや、ミトラの反撃を気にもしていないという感じだ。


「所詮は堕ちた存在か。愚かにもジブリール様に歯向かって。ジブリール様に従うのが俺たち天使の存在意義だというのに」

「堕ちているのは貴様だろう。仕えるべき主を見間違い盲信する。私が忠誠を誓っているのは今も昔も大神様だけだ。あんな偽物に従うなど堕ちた証拠だろう」

「はっ。ジブリール様は大神様の伴侶となる存在だ。ならばジブリール様に忠誠を誓うのは当然の事だろう」

「ジブリールが大神様の伴侶だと? そんな訳なかろう。大神様に伴侶などいない。それに、仮に伴侶となる存在がいるとすれば彼女以外いるはずがなかろう」

「彼女?」

「……そうか、覚えていないのか。ジブリールの嫉妬ゆえか知らないが」


 ミトラは思いをはせる。

 かつての少女の存在に。

 大神の心をはじめて揺らした少女がいた事に。

 大神は少女を愛した事をミトラは知っている。

 少女が大神を慈しんだ事をミトラは知っている。

 大神と少女の存在があまりにもかけ離れていた故に結ばれる事がなかった事を知っている。

 いや、本来はミカエルも知っているはずなのだ。

 しかし、少女の存在を疎ましく思ったジブリールが全ての天使からその記憶を抹消したのだ。


「そもそも大神様はお亡くなりになられたであろう」

「だからこそ、ジブリール様の御技によって復活なされるのだろう。俺には見えるぞミトラ! 大神様とジブリール様のお二人が寄り添う姿が! 再び世界を創造する姿が! 楽園を築く姿が!」

「そんなものは幻だ。大神様は復活などしない」

「いいや、するね。ジブリール様が大神様の聖遺骸を取り戻し、世界を消滅させれば大神様は蘇る」

「大神様がそんな事を望んでいるはずがないと何故わからない。大神様が何故アルマを遺したかわからないのか!」

「アルマ? ……ああ。大神様の娘を名乗る不届き者か。大神様に御子はいないであろう。ジブリール様に御子はいないからな」

「貴様」


 ミカエル。

 というより、ミトラを除く全天使の中ではアルマは大神の娘ではないのだ。

 大神の子はジブリールとの間にしかいるはずがないからだ。

 それは全ての天使の共通認識だ。

 大神の娘を名乗るアルマは大罪人である。


「まあ、堕ちたお前にはこれからの事は関係ないな。お前は世界が滅ぶ様も大神様が復活なさる様も見る事はできない。ここで死ぬからな」

「死ぬのは貴様だミカエル。死んで大神様に懺悔しろ」


 黒と白の天使がぶつかる。

 ミカエルの力は強大だ。

 かつて大神がいた頃、ミカエルは天使長だった。

 天使の中で最も強大な存在。

 それがミカエルだ。

 ジブリールに操られようとその力は変わらない。

 むしろ強大になっている。

 唯一、ジブリールに操られなかったミトラであったが、ミカエルにはあと一歩及ばない。

 次第に劣勢になっていくミトラ。

 そして、遂に決定的な隙ができた。


「死ね」


 その隙をミカエルが逃すはずがなく、まさに致命傷を与えんとしているその瞬間。


「"爆氷掌"!!」


 上空より吸血鬼が現れた。



 ー▽ー



「なんだ?」


 大したダメージは受けていないものの、ミトラへの攻撃を中断させられた。

 原因はミトラに並ぶ目の前の少女だ。


「ミトラ様、助太刀に来ました」

「シエルか。助かった」


 悠然とミトラの横に並ぶ真紅の刀を持った少女の名はシエル。

 その手に持つ刀は、かつての父の愛刀。

 シエルの血と混じり、変質した真紅の氷血刀『紅桜』。

 その存在は、真祖の吸血鬼にして最上位のハーフエルフ。

 鬼神王スズの妹であり、■■の様な自称ではなく、真の勇者だ。


「元とはいえ熾天使が吸血鬼などに助けられるとは情けない」

「こいつを甘く見ない方がいい。シエル、いけるな?」

「はいっ! いけます!」

「よし。では合わせろ」

「はいっ!」


 二人は同時に動く。

 互いに意識する様に合わせながら。

 しかし、ぎこちなさはなく熟練のパートナーのような動き。


「だからなんなのだ。貴様一人でも俺に敵わないというのに、貴様にすら遠く及ばない吸血鬼一匹増えた所で足手まといになるだけっっっ!!?」


 余裕を持って対処しようとするミカエルだったが、結果は吹き飛ばされた。

 いや、ガードはした。

 したにもかかわらず吹き飛ばされた。

 尋常ではないダメージを負って。


「だから甘く見るなと言っただろう。こいつは、いや、俺たちは強いぞ」

「ぐっ、馬鹿な。何故こんな奴が一匹増えたぐらいで」

「確かに私は弱いよ。あなたには敵いそうもないもん。でも、力を合わせれば勝てる。私たちはあなたなんかに負けない! 私は、世界を終わらせたりなんかしない!」


 こうして天使同士の戦いに吸血鬼が乱入し、新たな戦いが始まった。



ミカエルのイメージはワイルド系かと。

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