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113 各地の戦況

 やばいやばいやばい。

 どうするどうする?

 ルシアがいなくなって一気に戦力差がひっくり返った。

 レヴィアとユウが倒されて大神の聖遺骸を確保されればジブリールはこの世界を滅ぼす。

 つまり早急に決戦の地へ援護に向かわなければならない。

 ……どうやって?

 目の前にいるウリエルは絶対に俺を足止めをするだろう。

 こいつを倒さない限りレヴィアたちの所に向かえない。

 どうするどうする?


『誰かこっちに来れる人はいないの!?』

『無理だ。熾天使がいる』

『こっちもだ』

『儂も戦っている』

『だったらベルフェストは!?』

『……』

『ベルフェスト?』

『すま……ぬ。むり……だ。智天使が自爆しようと……している。それも……エネルギーが増大した』


 そうか!!

 わかっていた事だが、今地上で熾天使が神王の相手をしている理由は足留め。

 でも、何も熾天使自らが相手をする必要はない。

 エネルギーを増大させた智天使でも十分可能だ。

 ■■に融合させた智天使のようにエネルギーを増大させる。

 それだけでは神王の相手にもならないだろう。

 自我なき存在に俺たちがやられる訳はない。

 たが、熾天使クラスにエネルギーが増大した智天使が自爆しようとしたなら?

 イルミスがいてもこの星が滅ぼすクラスの爆発が起きる。

 この世界の核であるこの星がなくなればこの世界は滅ぶ。

 それを阻止するために対処しなければならない。

 それだけで神王であっても足留めする事ができる訳か。


『アルマは!?』

『すまない。こちらも精一杯じゃ』


 どうやらアルマの所にも自爆智天使がいるようだ。

 どうする?

 無理してレヴィアの所に向かうか?

 確率は低いが出来ないこともないかもしれない。

 だが、仮に成功したとしてもこの国は滅ぶ。

 どうすればいい。


「ふふふふ。焦っているようですね。威勢がいいのはもう終わりですか?」

「貴様らぁ!!」


 ジブリールの策がなったのを感じたウリエルは落ち着いたようだ。

 先ほどまで激昂していたのに今は冷静。

 対して俺は焦っている。

 混乱している。

 どうしようもなくなっている。


「おいおい、らしくないぞスズ! こんな奴にいつまで苦戦している?」


 そんな時、現れたのは俺が最も信頼している存在。

 俺の義父にして師にして尊敬する人。

 "槍聖王"ハッシュバルト・グローリアス。

 "半人半神"という神の領域に片足突っ込んだ存在が俺の前に現れた。


「ハルさん」

「詳しくはわからんが、世界に何か起きたんだろ?」

「……知っているんだ」

「ああ、何かヤバイ感じがしてな。で、それに動揺してお前はこんなに苦戦していると」


 全く持ってその通りだ。

 世界の壁が崩壊しているだけでもヤバイのに、肝心な場所にルシアがいないのがヤバイ。

 だから、そこへ向かうためにこの天使を早く倒さなければいけないという焦りがこの苦戦を生み出している。

 万全ならこの時点でのこいつにそこまで苦戦はしないのに。


「はあ、しゃーねーな。俺が代わりに相手してやるよ。お前は行け」

「は? 何言ってんだハルさん。死ぬぞ」

「世界が崩壊したらどの道死ぬんだ。それに、誰にものを言っている? こいつ如きに俺は死なんよ」

「だけど」

「ここは俺に任せて早く行け。お前には他に守らなければならない者がいるだろ。その為にも早く行け」


 ああくそっ!

 ハルさんの言う通りだ。

 ここはハルさんに任せて俺は離脱するのが一番いい。

 ハルさんならこの熾天使の足留めは十分できる。


「行け、我が義息子よ。行って世界を救ってこい」

「死亡フラグ立てまくりやがって! そこまで言うなら任せるぞハルさん!」

「おう!」


 俺はハルさんにこの場を任せて離脱することに決めた。

 当然ウリエルがそんな事を許すはずがなく、俺の進路を防ごうとするが、


「おっと、通さんよ」


 奴の前にハルさんが立ちはだかる。


「邪魔です」

「邪魔するのが俺の役目だからな」

「どきなさい!」


 ウリエルは手に持つ剣でハルさんを攻撃する。

 熾天使の一撃だ。

 神王でもない相手に防げるわけがない。

 そう思っていたのだろう。

 いとも簡単に防がれたウリエルの目は見開いている。


「なっ!」

「残念だが、ここを通すわけにはいかない。あいつを追いたければ俺を倒す事だな。まあ、その前に俺がお前を殺すのだが」

「人間風情が!」


 こうして、ハルさんのおかげで俺は戦闘を離脱することに成功する。

 後方では、最強のヒトと熾天使の戦いが始まっているが、俺は見向きもしないで走る。




 ー▽ー



「ふふふ。あとは雑魚だけです。私直々に葬って差し上げましょう」


 ジブリールは得意の絶頂にいた。

 策はなった。

 最大の障害であるルシアの排除に成功したのだ。

 もうすぐ大神にたどり着く。

 だから、ジブリールは油断していた。


 ーー叛逆封印ーー


 上空から突如降り注ぐ上下逆の黒い十字架。


「なっ!!?」


 それはジブリールに突き刺さり動きを封じる。


 ーーすまんが、それが限界だ。あとは頼んだぞーー


 どこからともなく聞こえてくるルシアの声。


「やってくれるわね」

「そうだね。流石はルシア」


 絶体絶命のピンチの中、ルシアは最後にジブリールの動きを封じてくれたのであった。


ルシアさんマジ有能。

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