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109 異形の天使

 これが、天使だと!?


 今日一番の驚きだ。

 全部が全部ではないものの、現れたのは普段見る天使とは違う異形の姿。

 あの研究所で見たものよりも悍ましく悲痛な姿。

 キメラである。

 天使のキメラである。

 肉塊のような天使、顔がいくつもある天使、化け物のような天使。

 全てが悍ましい姿をしており、全てが絶望したような顔をしている。

 しかし、決して他の生命体ではない。

 全てが天使そのものである。

 天使同士をむりやりくっつけてエネルギーを増幅させた存在がその異形な天使の正体であった。


 そして、満を持して現れる六柱の天使。

 熾天使。

 俺たち神王と互角だとされる存在。

 と、真の敵である簒奪天使ジブリール。


 あー、これはちょっと不味いかな。


「あなたは?」

「おや知らない? 鬼神王だけど」

「鬼神王? 知りませんね。新しい神王ですか。そうですか。ならば、あなた達。殺しなさい」


 ジブリールが命令を下すと一斉に熾天使達は襲いかかってきた。



 ー▽ー



 これはキツイ。

 実質五柱の神王を一人で対処しているようなものだ。

 これでも一対多の戦闘は得意な方だ。

 前世でも生身の状態で訓練された特殊部隊を全滅させた事がある。

 が、こいつらはヤバい。

 一柱でもヤバいのに五柱はヤバい。

 ひたすら動き回り敵を翻弄する。

 逃げるのが一番良さそうだがそれは難しい。

 周りには俺を逃さないように俺を囲んでいる異形の天使たち。

 突破するのは簡単だが、そこで隙を作ってしまう。

 もちろん転移も封じられている。

 この状況でやるべきことは少しずつでも戦力を減らしていく事。


 まるで大縄跳びのように戦闘に加わろうとしてもタイミングが合わずなかなか加わわれない宮本を笑い飛ばしたくなるが、残念ながらそんな余裕はない。


 徐々に追い詰められていく。

 さすがに多勢に無勢。

 これは……マズイ。


「ゼェ、ゼェ、ゼェ」

「トドメをさしなさい」


 動きを止めた俺にお互いを邪魔しないようにと遠距離から一斉攻撃を放つ熾天使たち。

 それは、確かに神王すら消し去る攻撃であった。

 俺じゃなければな。


「リ・バース」


 様々な因子を含む攻撃であっても全て放出系であった事が幸いした。

 その攻撃を全て飲み込み、一拍おいて吐き出す。

 半分遊びで作った技であったが、まさか役に立つとは。

 やはりというべきかその反撃にしっかりと対処する熾天使たち。


「……どうして逃げなかったのですか?」

「逃げる? 何を言っているんだ?」


 確かに今の隙に逃げる事は出来た。

 しかし、それを俺はしなかった。

 実はエネルギー的にも余裕はあるし、何よりあいつが間も無く到着するからな。


「待たせたな」


 そいつはやっと俺の隣にきた。

 その瞬間、周りの異形の天使は消え去っていた。

 この地から最も遠くにいるにもかかわらず、最も早く辿り着いた最もこの状況で頼れる存在。

 こいつの気配を感じたからこそ俺は逃げるのをやめた。

 最強の神王、魔神王ルシア。


「ここから反撃の時間だ」


 そう言って剣を抜くルシア。

 噂では聞いていたが初めて見た。

 ルシアの剣、魔剣『ノーデンス』。

 その剣一つだけで神王クラスのチカラを感じる。

 よくあんなもの振り回せるな。


「ちっ、ルシアがきてしまいましたか。ひとまずは帰りますよ」


 そしてルシアの存在を確認したジブリールは天使達に帰るように指示する。


「させると思うか?」

「ええ。そうさせてもらいます」


 その瞬間、残っていた大半の天使が自爆した。

 俺たちから見ればそれほどでもないエネルギーだが、大量の天使の連鎖爆弾は俺たちの動きを一瞬止めるのに十分であった。


「ちっ」

「どうだった?」

「ダメだ。逃げられた」

「こっちも。誰もやれていない」


 とはいえ、みすみす見逃す俺たちではなく、魔剣と妖刀を振るうが、残念ながら逃げられたようだ。


「それにしても、災難だったな」


 本当にそれな。

 まさか、こんなにも1日で事態が動くとは思わなかった。

 危うく死ぬところだったし。


「コレ、もう一度封じこめられないのか?」

「無理だ。完全に向こうの世界と繋がってしまっている。最悪こっちの世界が壊れるぞ」


 はあ、無理か。

 とうとう始まってしまうな。

 地球の神話からなぞらえて"ラグナロク"とでも名付けようかな。

 俺たちが勝利してその後も世界が続くようにと願掛けして。



 ー▽ー



「ぐぅぅ。やってくれましたね」


 天使の世界にて顔を顰めるジブリール。

 逃げる間際にルシアの攻撃が当たってしまったのだ。


「やはりあいつは危険すぎます。想定以上です。が、こちらは計画通り。この戦いは私たちが勝ちます。待っていてください大神様。ふふ、うふふふふ」


 ジブリールは恍惚の笑顔を浮かべる。

 もう直ぐ目的は達成する。

 世界は繋がった。

 後は戦いに勝つだけだ。

 その先にあるのは至福である。

 それを目指してジブリールは突き進む。

 何を犠牲にしてもそこに至ろうと。

 それが大神が望んでいる事でなかろうと。



奇跡的にスズと熾天使の戦いやルシアに巻き込まれず無傷という悪運に定評のある宮本。

そして、そんな宮本を何気に連れて帰ってあげているジブリールさん。


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