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108 繋がる世界

「さて、俺は何をすればいい?」


 さっそくとばかりに行動を開始しようとする宮本。


「神に一番近い場所に向かいます。あなたにはそこで私が調整するのでその力を存分に振るっていただきたいのです」

「その場所は?」

「あなたがいた国、鬼神王に封じられた国、イルレオーネ国です。そこにある楔を破壊し、封印を緩め、神の元に繋ぐのです。あなたが、あなたこそが神の勇者となるのです」

「俺が、神の勇者」

「ええ。早く向かいましょう」


 神を勇者という言葉に興奮を覚えた宮本はレミエルの言葉を何でもきく。

 褒められて調子にのるお調子者だ。

 その先にある行動がどんな悲劇を起こそうと宮本は問題ない。

 だって、自分は勇者だから。

 神に選ばれた勇者だから。

 神がいう言葉に正しい。

 ならばそれを成すことが勇者としての使命である。

 正義はこちらにあるのだから。

 自分しているのは人々を救う事だから。

 宮本にこれから起こる事が悲劇だと認識する事はない。


 意気揚々と向かう宮本とレミエル。

 場所は死んだはずのクラスメイトと再会した場所。

 力を得たばかりに悪に染まってしまったクラスメイトと再会した場所。

 自身が何も救えなかった場所。

 因縁の地、イルレオーネ国へ。



 ー▽ー



 クソがっ!

 転移出来ねぇ!!

 封じられているのか。

 自力で向かわなければ。

 とりあえず、他の神王やユウにも情報を伝えておく。

 場合によれば俺よりもユウの方が早いはずだ。

 だからって足は緩めない。

 全速力で向かう。


『すまないスズ!』


 その時、ユウから連絡が入る。


『どうした?』

『突然天使が徒党を組んで大量に攻めてきた!』

『なんだって!?』


 同じ連絡は他の神王達からも入ってきた。

 おそらくは宮本の天使化に成功し、何かを始めるのだろう。

 イルレオーネ国、熾天使クラスのエネルギー……まさか!?


 可能性は十分ある。

 杞憂に終わればいいが。


『ハルさん!』

『スズか!?』

『天使が攻めてきていないか?』

『おう、来ているぞ。どうなってやがる?』

『すまない。説明している暇はない。対処は出来そう?』

『なめるな。余裕だ』

『だったからそっちお願い!』

『なんだかわからんが頑張れよ!』

『わかった!』


 案の定、こちらにも天使が攻めて来ているがハルさんが対処してくれている。

 確実に神王クラスの存在の足止めにかかっているな。


 本当にやってくれやがる。

 俺も含めてみんな天使を舐めすぎていたか。


「見えた!」


 見えて来た元イルレオーネ国。

 そこにあるかつて俺が打ち込んだ巨大な楔。

 そしてその元にいる二つの存在。

 それは二つとも羽を生やしており、片方が、まさに楔に対して攻撃を仕掛けようとしているところだった。


「間に合えええええ!!」


 そう叫んだ瞬間、楔は粉々に砕け散り、その空間に穴が空いた。



 ー▽ー



「……やってくれたな宮本」


 ああ、本当にやってくれた。

 俺はお前の事を舐めていたよ。

 まさか、ここまで俺の邪魔をしてくれるとはな。

 認めよう。

 お前にはそんな無駄な才能があると。


「遅かったな茨木」


 そんな悪態をつく俺を見て宮本はそれはそれは邪悪な笑顔を浮かべた。


「神は再びこの世界に降臨する。この真の勇者である俺の手によって」

「真の勇者だと? ただの勇者ですらないお前が?」

「嘘はよくないな。知っているんだよ。お前が俺に勇者としての力をつけてもらいたくないから。勇者である俺を恐れたからそんな嘘をついて俺が勇者である事を隠していたって事はな!」


 何を言って……て、ああそうか。

 宮本の後ろでニヤリと笑みを浮かべた女の天使を見て納得した。

 そんな風に言って宮本を誑かしたのだろう。

 あの女の天使が。

 勇者について何も知らない宮本を甘い言葉で誑かした。

 その結果、自身が勇者だと思い込んだ宮本がこんなにも邪悪なドヤ顔を浮かべているのだろう。


 それにしてもこいつ。

 やっぱり選民思想の塊か。

 この時代の貴族にそれなりに見られるが、それとは少しちがう。

 普通は自分は特別な存在だ。

 だから、自分は何をしても許されるのだ。

 人を殺そうが何をしようが。

 人は自分を崇めるのが当たり前。

 そんな感じだ。


 宮本の場合はおそらくこうだ。

 自分は特別な存在である。

 そうであらなければならない。

 人を助けるのは自分が特別だから。

 だって特別な勇者なんかはそうだから。

 人と違ってみんなを助ける俺ってすげー。

 表面では知らないが、深層ではそう思っているはず。


 しかし、この世界に来て。

 もっと言えば前世から俺が現れて自身の特別性は打ち崩された。

 自身よりも遥かに優れている俺の存在によって自身の特別性を、アイデンティティを保てなくなったのだろう。

 この世界に来てから勇者だと思っていたにもかかわらず俺に否定されていろいろと打ち崩されたのだろう。

 そんな時に奴に甘い言葉をかけられて、あんな、あの程度の言葉で簡単に誑かされているのだ。


 それにしても、適正ってやつは誰にあるかわからないな。

 まさか宮本が熾天使クラスのエネルギーを得るとは。

 まあ、完全ではないようだが奴からすればすぎたる力だ。

 過ぎすぎている。

 通り過ぎている。

 今は大丈夫なようだが。

 この様子ではそのうち魂が耐えきれなくなるだろうな。

 本当に天使は残酷だ。


「さあ、茨木! 覚悟はいいな? この真の、神の勇者である俺が、悪に染まったお前を倒してやる!」

「いえ、その必要はありません」


 意気揚々と剣を構える宮本を止める天使。


「神が降臨されます」


 そう言った瞬間、空間に空いた穴から大量の異形が現れた。








宮本が超絶パワーアップしてしまった

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― 新着の感想 ―
[一言] 宮本使い過ぎ、、、、 いいかげん飽きました、、、
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